


伯耆原洋太 / HAMS and, Studioと風間健が設計した、東京の住戸改修「切断の諸相05『A Round and Around』」です。
改修済みの空間を部分的に再改修する計画です。建築家は、愛着のある“物に囲まれた生活”の要望に、外壁のR形状から着想した“円環の本棚”でリビングを包み込む構成を考案しました。また、既存仕上げを“地形”と捉えて様々な“様相”を積極的に受容することも意図されました。
本を開くと、頭の中をぐるぐると言葉が巡り、窓を開くと、街と街をぐるぐると鉄道や車が駆けている。内と外は一体に繋がって活動を続けている。非所有が推し進む世の流れの中で、過去の自分を引き摺りながら蓄積した愛着のあるものに囲まれた設計者自邸を計画した。
敷地はスカイツリーふもとの密集住宅地にあり、マンション一室の部分改修プロジェクトである。
マンションの一室でありながら、目の前を幹線道路が通り、部屋と同じレベルを鉄道が走るなど、都市交通の動きをダイレクトに感得できる位置にある。既存はすでに買取再販不動産会社によって改修がなされており、規格化された仕様は築20年超の一室を手際よく整えてはいたが、独特な平面形状がもつポテンシャルを抑え込んでいるような印象も与えた。
今回の改修では、すでにリノベーションされた仕上げ面までをある一つの地形・コンテクストとして捉え、その中で寄生するように最低限の操作で空間全体に最大限影響を及ぼしながら、都市活動全体の一部として拡がっていく私的な居住空間の在り様を模索した。
住み手の現住居には多くの書籍が蓄積し、その物量に手をこまねきながらも、思い入れのある様々な物に囲まれた暮らしを要望していた。そこで、間取りの中央に円環の本棚を計画し、文字通りぐるりと360度包み込まれた空間の中心部をリビングとすることで、物と住み手が臨場感のある暮らしを展開できると考えた。