



日建設計が設計した、大阪・関西万博の「ガスパビリオン おばけワンダーランド」です。
“化けろ、未来”をテーマとする施設です。建築家は、未来社会に貢献する存在を求め、新たな環境素材と工法の“実証試験”的導入を実施しました。そして、放射冷却性能をもつ膜材と仮設山留用のリース鉄骨で造り上げる建築を考案しました。施設の公式サイトはこちら。
JGA(日本ガス協会)が出展するガスパビリオンの計画。「化けろ、未来」をテーマに、おばけのキャラクターが案内するXRアトラクション体験を通して、メタネーション技術をはじめとするガス業界の環境への取り組みを発信する。
このパビリオンの計画では、多様な情報発信の場をもつ現代において、エネルギー会社が万博パビリオンを出展する意味をクライアントと改めて問い直し、「ここでしか味わえない記憶に残る体験を提供する、パビリオンならではの特徴的な空間」と「建設行為そのものが、未来社会の貢献するパビリオン」の両立が、不可欠であると考えた。
この実現に向け、未来環境に貢献する2つの新たな素材・工法のパビリオンへの試験導入と、その技術の効果を活かすことで生まれる新たな非日常のパビリオン空間を目指した。
大阪ガス発のスタートアップ企業が手掛ける新規放射冷却膜材SPACECOOL(B種膜)の、実証試験を兼ねた建築外装への実装がその一つだ。
この材料は高い日射反射性能を持つとともに、膜周辺の熱エネルギーを大気の窓といわれる透過性の高い波長域(8~13μm)の光エネルギーに変化(化け)させ放出する放射冷却性能を有し、膜材表面温度を常に周辺温度以下に保つことができる。本計画での性能確認ができれば、未来の環境に大きな貢献が期待される素材である。
この膜材の性能を最大限活用すべく、このパビリオンでは三角形断面の建物形状により、内部の夏を建物上部から膜を通じて効率的に排出し、床吹出しの居住域空調方式との併用により、省材料・省エネルギーでパビリオンならではの特徴的な大空間を実現した。
そしてもう一つは、このパビリオンを形作る構造フレームへの仮設山留用リース鉄骨の採用である。
万博の会期は半年間であり、その前後の建設・解体期間を含めても約2年間の利用である。リース鉄骨を用いることで、会期後にはすぐに他の現場に転用する(化ける)ことができ、建設から解体・再利用までに排出されるCO2量の大幅に削減が可能である。
ここでは、規格寸法のリース材をボルトでつなぎ合わせることで高さの異なる柱をつくるとともに、通常仮設山留の水平火打ち材の接合に用いる回転ピースというリース材料をすべての柱の足元に設置することで、規格部材のリース材料を用いながらも、各々高さ・幅・角度の異なる三角形フレームを連続させ、揺らぎのある内部空間と山並みのような特徴的な外観を創り出した。