




ツバメアーキテクツが設計した、香川・豊島の「ホテル聚」です。
将来的な社員寮としての利用も想定した計画です。建築家は、“地域の暮らしの一員”になれる在り方を目指し、集落などの構成を参照した“共同体の内外に開かれた開放的な空間”を志向しました。そして、周囲と繋がる路地と中庭を備えた建築を考案しました。施設の場所はこちら(Google Map)。
瀬戸内国際芸術祭や豊島美術館の「ビルバオ効果」とも呼べる成果によって、コロナ禍以前には年間15万人以上もの旅行客が訪れたが、飲食や宿泊の施設が少なく、経由地になりがちで、観光が暮らしの領域にまでなかなか降りてこない。島の暮らしが守られているとも言えるが、関係人口や定住・移住人口の増加なくしては地域文化や資源管理の維持が困難なのは明らかである。
こうした状況の中、建主であるアミューズは、山から海へと連続する立体農業の継承、6次産業化、その体験ツアーなどの事業を展開している。ホテル聚はそのための一つの拠点施設であり、彼らからの相談は、ホテルとして開業するが、行く行くは豊島で事業を展開するための社員寮としても使っていきたいというものであった。
住む人が、この建物での暮らしを通して島の一員になれるような場所とするには、商業的なホテルよりも、島の家に近いものがふさわしい。それは旅行客にとっても地域の暮らしを追体験出来る場所になるはずだ。そう考えて、島の家や集落の構成を参照し、それを共同体の内にも外にも開かれた開放的な空間へ組み替えていくことを計画の主題とした。
敷地は、港からほど近い家浦の集落の中にある。周辺にはスギ板貼りで瓦葺きの民家、倉が建ち並び、豊島石や瓦を土と交互に積み上げた土塀が特徴的な風景をつくっている。土塀に挟まれた路地は幅1~2mほどと狭いところが多く、歩いていると島の人のプライベートな領域に足を踏み入れたようで少し気後れするが、かと思うと急に塀が途絶えて庭が露わになるなど公私の境界が曖昧で、集落全体が有機的に連続している感覚がある。
こうした集落のいち部分を形成出来るように、敷地外周に細い路地を確保しつつ、中庭を内包するように4棟の建物を配置した。部屋へは路地から、中庭には建物同士の隙間からアクセス出来るようにした。
加えて、路地-中庭を結ぶ半屋外の通り土間や、通り-中庭を結ぶ大開口のあるシェアリビングを設け、中庭の開放性を高めた。これにより、路地よりもむしろ庭の方が公共的であるような、周囲を歩いた時にも感じられた公私の反転が生まれている。







