蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる デスクは長さ3.18m。見付40mm甲板に見付70mmの浅い引出しを付属させ、薄いノートや筆記用具を引出し内に収納できるようにした。棚下灯は光の方向が手前になるよう、通常の逆向きに設置してある。デスクライトを追加しなくても、読み書きに支障がないデスク面の照度を確保した。
窓際のOA吸気口はもともと高い位置にあり、冷えた空気が体にあたらないようになっていたが、もう一工夫した。壁内にチャンバーボックスを仕込みOAの室内取込み口の位置を2つにわけ、棚の中にまぎれて存在感を薄く見せている。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 洗面脱衣・乾燥室は複数人が同時に活動しても困らない充分な広さ。リネン・下着収納の造作家具は横幅1.6mあり、上段は棚板方式でリネン用、下段は引出しで下着類を収納できる十分な大きさとなっている。「脱いで、洗って、干して、しまって、また着る」がこの部屋だけで完結する。
洗面台はルミシス(リクシル)、甲板・シンク一体型で掃除がしやすいタイプ。住設メーカーの既製品をうまく取り入れた機能的で美しい空間を目指した。
床材はキッチンと同じボロン(ビニル織物床材)。耐久性に優れ、素足で歩いても足裏の質感が良く、見た目も美しいため、たびたび採用している。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 二段ベッドコーナーは寝るだけではなく個室的にも利用できるよう、暗い場所でごそごそと活動する雰囲気にならぬよう、壁への間接照明で明るさ感を確保した。DLと組み合わせて上部からの直接光で平面部分も明るく使えるように工夫してある。
枕元の家具は個々人の私物収納 兼 小物置台 兼 ヘッドボード。子どもたちそれぞれがパーソナルスペースを持つ喜びを得、管理の責任も育む。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVES が設計した、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」です。
既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくっています。
この住まいのクライアントは共働きのご夫婦と3人の子どもたち(小児・幼児・乳児)です。
一般的な3LDKの間取りのマンションにおける毎日の生活の中で、現状の間取りに大きな不満と疑問を感じておられました。
クライアントご夫婦は現住まいの問題点を明確にご認識されており、この「洗濯問題」に加え、キッチン/食卓をどのようにしたいか、子どもたちの教育のために必要なこと、大人が快適に生活するために必要なことなど、家族の生活スタイルに合わせた「住まいの機能改善」を最優先事項とされました。
売却、賃貸に向くような一般性は一切考えず、我が家にだけ合う空間が欲しいということ、そして、小さな子どもを育てる時期であっても美観や質感も暮らしに欠かせない大事な要素とお考えであり、その点については私に自由な提案をしてほしいとご依頼をいただきました。
こうして「いかに家事をこなすか」「いかに美しく暮らすか」の工夫を込めたリノベーションプロジェクトが始まりました。
何案かのラフプランをお見せしながら、それぞれのスペースのあり方をクライアントと一緒にじっくり考え、
●洗面脱衣・乾燥室には窓を確保して、床面積を広くとる。複数人が同時に活動しても困らない広さ。洗濯物を乾かすための気積を確保。リネンと下着はこの部屋の中に納まるように。
●キッチン、洗面台、ユニットバスには日本の住設メーカーが長年培った「かゆいところに手が届く」工夫がされた製品もしっかり取り入れたい。メーカー品と造作家具を組み合わせて美しくまとめる。
●生活スペース(L.D.K.)に子どもが3人同時に使える大きなデスクと、壁一面の本棚をつくる。生活スペースの壁がモノで埋め尽くされて息苦しく見えないように、何もない白い壁(余白)も確保する。
●子どもが明日の持ち物と服を自分で準備できる(させる)ランドセル置き場。
●置き家具は多方向の自由度を備えたものを選定する。
●二段ベッドは寝るだけの場所ではなく、昼間は遊びのスペースになり、将来的には区切って個室化できるようにしたい。
●WICは天井スラブぎりぎりまで内部空間として、天袋収納までスペースを有効利用する。
●床暖房はどうしても入れられない箇所以外は最大限ビッチリいれる。
等々の具体的な方向が定まっていきました。
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蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 玄関からリビングイン引戸を臨む。シューズクローゼットを全面鏡貼扉として空間を広く見せている。手前にあるホワイトアッシュの二段引戸は断熱用&廊下の途中に設けられた二段ベッドコーナーを居室化させるためのもの。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 生活スペース(L.D.K.)自然光の様子。覗かれる心配がない高台の立地のため、普段はバーチカルブラインドをフルオープンしている。ブラインド羽根はキッチンを避けて右側へ片寄せ。L=5mの一本レールの製作が可能な業務用商品を選定している。搬入経路と手段が確保できたため実現できた。
ソファは背・アーム・オットマンの位置の組換えが可能で、空間を分断しない多方向タイプ。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 生活スペース(L.D.K.)間接照明の演出の様子。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 多くのモノで囲まれた空間に「何もない白い壁」(余白)を残すことを意識した。壁には鋳物シルバーの掛時計を選定し、金属の質感を空間に加えている。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる グレージュ色のパナソニック製キッチンを組み込んだキッチン全体の造作は、横の流れを意識して作りこんだ。横長のプロポーション、横に通るウォルナット手掛け・光・ステンレスパイプ。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 既存の縦配管(通気管)はキッチンの収納量を最大限確保するため/横の流れを断絶させないため、壁で囲わず露出させ、塗装仕上げとした。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる キッチン周りの床材は、水・油の汚れに備えフローリングからボロン(ビニル織物床材)に切り替えている。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 食卓まわりには8mm角の大理石モザイクや無垢のガラス球など、素材の質感に優れたパーツを配置している。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる デスクは長さ3.18m。見付40mm甲板に見付70mmの浅い引出しを付属させ、薄いノートや筆記用具を引出し内に収納できるようにした。棚下灯は光の方向が手前になるよう、通常の逆向きに設置してある。デスクライトを追加しなくても、読み書きに支障がないデスク面の照度を確保した。
窓際のOA吸気口はもともと高い位置にあり、冷えた空気が体にあたらないようになっていたが、もう一工夫した。壁内にチャンバーボックスを仕込みOAの室内取込み口の位置を2つにわけ、棚の中にまぎれて存在感を薄く見せている。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 壁一面のL型オープン棚に付属するブックエンド(エリア分け用の仕切り)。大量の本にも埋もれない存在感を与えたかったため、見付寸法を60mmに設定し、仕上げは金属板貼(真鍮古美色風/硫化いぶし風塗装)とした。上下はフェルト貼。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 壁一面のL型オープン棚に、デスク・ベンチソファ・アップライトピアノを組み込んで、
まとまった一体のコーナーに見せている。この棚には現在、子どもの図鑑、学習漫画、夫妻の専門書、趣味の本など本がびっしりと並び、個性あふれる楽しい風景となっている。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる ベンチソファは「すみっこの特等席」。光とニッチを配置して、座りたくなる演出。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 幅1200mm、奥行550mmのベンチソファは、部屋中央のソファ以外にも座れる場所があった方が良いと考え、子どもたちのピアノ練習やデスクでの勉強を親や兄弟が横から教えるなどにも使えるようにと設計したが、子どもたちがすし詰めに陣取る人気の場所となっているそうだ。仕上がり高さは500mmとやや高め、ほんのちょっと高いだけで特別感が増すことを狙った寸法設定で、下部はアルバム用の収納スペースとなっている。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 二段ベッドコーナーは寝るだけではなく個室的にも利用できるよう、暗い場所でごそごそと活動する雰囲気にならぬよう、壁への間接照明で明るさ感を確保した。DLと組み合わせて上部からの直接光で平面部分も明るく使えるように工夫してある。
枕元の家具は個々人の私物収納 兼 小物置台 兼 ヘッドボード。子どもたちそれぞれがパーソナルスペースを持つ喜びを得、管理の責任も育む。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 下段の様子。セミダブルのマットレスが置ける幅をとってある。下段の片側はまだ空いているので、現在は床遊びスペースとして活用されている。ベッド下は大型の引き出し収納。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 上段の様子。天井面に筋トレ用の吊り輪やロープを設置できるフックを取付けた。ロープのぼりや吊り輪ブランコ等、格好の遊び場となっている。リビングインの引込み戸をオープンすると、子どもが明日の持ち物や服を準備して置いておける(させる)ランドセル収納がある。フックは長男が自分でランドセルをかけられる高さに合わせた。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 引込み戸をオープンするとベッドコーナーと生活スペース(L.D.K.)が連続し、自然光も届く。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 個室の様子。静謐な寝室空間となるよう、ふかし壁で梁型を隠し、天井面がきれいな形になるよう補正している。スペースが限られているため、造作で天吊り式のナイトテーブルを設置し、床面があいて掃除やベッドメイキングがやりやすくなるようにした。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる WIC 取り合い側の壁上部には横断する梁の位置との兼ね合いでデッドスペースができたため、天袋収納とした。躯体がつくる気積を余すところなく利用している。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 四方棚風の天吊り式のナイトテーブルのディテール。お手持ちのベッドのヘッドボードは収納や台が無いデザインのものなので、枕元に携帯電話や飲み物が置ける場所を用意した。縦材は19角、横材は16角とし、武骨に見せない寸法設定としている。ブックエンド同様の真鍮古美色風/硫化いぶし風塗装仕上は大阪の吉田着色による。壁に埋まったような複雑な外形をインロー方式で組み立て、取付ができたのは造作家具屋さんの細かい検討と製作精度のたまもの。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる モノがひと目で視認・把握できるWIC。通路の上にも枕棚を設置し、天井はスラブいっぱいまで、最大限の気積を確保した。天井ふところを最小限にするため、WICの換気扇は壁付けタイプを選定。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 洗面脱衣・乾燥室は複数人が同時に活動しても困らない充分な広さ。リネン・下着収納の造作家具は横幅1.6mあり、上段は棚板方式でリネン用、下段は引出しで下着類を収納できる十分な大きさとなっている。「脱いで、洗って、干して、しまって、また着る」がこの部屋だけで完結する。
洗面台はルミシス(リクシル)、甲板・シンク一体型で掃除がしやすいタイプ。住設メーカーの既製品をうまく取り入れた機能的で美しい空間を目指した。
床材はキッチンと同じボロン(ビニル織物床材)。耐久性に優れ、素足で歩いても足裏の質感が良く、見た目も美しいため、たびたび採用している。 photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる photo©中村絵
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 洗濯物を干せる乾燥室として機能するよう、天吊りのハンガーパイプを用意した。床暖房を全面に、換気扇(設置可能な最大能力)、壁掛けエアコン、天付きの扇風機を設置し、床置きの除湿器も置くことも想定してあったが、実際の運用では8kgタイプのガス乾燥機の働きによって、洗濯物で埋め尽くされた部屋にはならなかった。長いハンガーパイプはシーツやバスタオル用に活用くださっているとのこと。 photo©蔵楽友美 / FIVES
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 改修後平面。 image©蔵楽友美 / FIVES
蔵楽友美 / FIVESによる、近畿地方の住戸改修「A-HOUSE」。既存の一般住戸に不満と疑問をもつ施主の為に計画、様々な“住まいの機能改善”の要望に綿密なやり取りを重ねて問題を整理、機能と美観を両立した小さなデザインの集積で空間をつくる 改修前平面。 image©蔵楽友美 / FIVES
以下、建築家によるテキストです。
生活のオペレーションに即した住まいの工夫、小さなデザインの集積による美しくて快適な住まい
この住まいのクライアントは共働きのご夫婦と3人の子どもたち(小児・幼児・乳児)です。
一般的な3LDKの間取りのマンションにおける毎日の生活の中で、現状の間取りに大きな不満と疑問を感じておられました。
「間取りの常識を捨ててもらって、私たちの新しい家を考えてほしい。例えば、まず、収納スペースはこんなに分散させる必要があるだろうか?」というのがクライアントの最初の言葉です。
もっとも大きなトピックは家族5人分の衣類の管理で、「脱いで、洗って、干して、しまって、また着る」この毎日必要な行為が暮らしの負荷となっていました。
元の住まいに設定されていた洗面脱衣室は、子どもの世話と洗濯をやりくりするにはスペースが足らず、ユニットバスにも和室にもいつも洗濯物が干してありました。衣類やリネン類が乾いたら早く畳んで片付けるようにしたくても、和室の押入れ、主寝室のクローゼット、子ども部屋のクローゼット、洗面脱衣室のわずかなリネン収納…などに配置が分散しているうえに、それぞれの収納スペースとモノの量が一致せず、「整理」と「収納」の両立に苦労されていました。また、子どもの成長にともない、そろそろ学習机も整えなくてはならない時期でもありました。
クライアントご夫婦は現住まいの問題点を明確にご認識されており、この「洗濯問題」に加え、キッチン/食卓をどのようにしたいか、子どもたちの教育のために必要なこと、大人が快適に生活するために必要なことなど、家族の生活スタイルに合わせた「住まいの機能改善」を最優先事項とされました。
売却、賃貸に向くような一般性は一切考えず、我が家にだけ合う空間が欲しいということ、そして、小さな子どもを育てる時期であっても美観や質感も暮らしに欠かせない大事な要素とお考えであり、その点については私に自由な提案をしてほしいとご依頼をいただきました。
こうして「いかに家事をこなすか」「いかに美しく暮らすか」の工夫を込めたリノベーションプロジェクトが始まりました。
何案かのラフプランをお見せしながら、それぞれのスペースのあり方をクライアントと一緒にじっくり考え、
●洗面脱衣・乾燥室には窓を確保して、床面積を広くとる。複数人が同時に活動しても困らない広さ。洗濯物を乾かすための気積を確保。リネンと下着はこの部屋の中に納まるように。
●キッチン、洗面台、ユニットバスには日本の住設メーカーが長年培った「かゆいところに手が届く」工夫がされた製品もしっかり取り入れたい。メーカー品と造作家具を組み合わせて美しくまとめる。
●生活スペース(L.D.K.)に子どもが3人同時に使える大きなデスクと、壁一面の本棚をつくる。生活スペースの壁がモノで埋め尽くされて息苦しく見えないように、何もない白い壁(余白)も確保する。
●子どもが明日の持ち物と服を自分で準備できる(させる)ランドセル置き場。
●置き家具は多方向の自由度を備えたものを選定する。
●二段ベッドは寝るだけの場所ではなく、昼間は遊びのスペースになり、将来的には区切って個室化できるようにしたい。
●WICは天井スラブぎりぎりまで内部空間として、天袋収納までスペースを有効利用する。
●床暖房はどうしても入れられない箇所以外は最大限ビッチリいれる。
等々の具体的な方向が定まっていきました。
仕上げ材は吟味してご提案しました。
まず床は、子育て世帯に似合う明るくて清潔感のあるホワイトアッシュ材で、水回りは焦げ茶色のボロン(ビニル織物床材:素足で歩いても足裏の質感が良く、ペタペタしない)。
材料の選定には全て理由があります。
造作家具はホワイトアッシュとウォルナット突板を組み合わせていますが、これは組み合わせて楽しい雰囲気を出したいためと、ウォルナットのこげ茶色を空間の締め色に使いたいため。
キッチンは視覚的に扉の面積が大きいので、重たく見える突板ではなくホワイトを選択。ただし殺風景にならぬよう、8mmのモザイク大理石、微量のウォルナット無垢材、そして間接照明でしっかりと演出をする。洗面脱衣室にはクール系の清潔感がほしいので、焦げ茶色のボロン床にライトグレーの壁を組み合わせ、ホワイトの設備機器類が映えるように。個室(寝室)には大人っぽい落ち着きをもたせたいので、ベージュの質感を加える…等々。
照明計画も細かくやり、サンプル器具をお見せしながら照度と色温度をひとつひとつ決定していきました。
住宅の照明の基本は2700Kだと思いますが、デスクやキッチンの手元照明は3000K、個室(寝室)の間接照明は2700~2000Kまで調整できる温調タイプ、洗面脱衣室は3500Kとしています。二段ベッドコーナーは寝るだけではなく個室的に利用できるようにしたかったため、暗い場所でごそごそと活動する雰囲気にならぬよう、壁への間接照明(2700K)と上からのDL(3000K)を組み合わせて、個々人が枕元で調光できるようにし、廊下の三路スイッチで2種4か所をいっぺんにON/OFFコントロール可能にしてあります。
お引渡後1年半となり、先日、遅めの1年点検に伺いました。クライアントより「家は快調」とのこと。一切の無駄なく空間を使い、クライアントが狙った通りの暮らしが実現しているようです。
「外見は一般車のまま、tune-upしてスポーツカーより速くなった感じです」とご感想をくださり、「住宅は機械である」というル・コルビュジエの有名な言葉が心に浮かびました。「住宅は精密機械のように綿密に作られるべきものである」と私は解釈しています。
75.23㎡に造作家具番号が17番まである、ここまで細かく作りこんだ住まいを手掛けることができたのは、設計者としてとても幸せなことです。そして、クライアントが求める機能を満たしたこの美しい住まいは、造作家具や照明のおさまりはどうしたら解けるか、設備配管のルート、水圧改善までもあれこれと相談にのってくださった施工者チームの協力が無くては実現できませんでした。
家は作って終わりではなく、メンテナンスをし続けるものです。一年点検に伺い、一緒にデスクの落書きを見て愛おしい思いを共有し、将来的にも信頼関係を継続してくださる施工者さんとクライアントをお引き合わせできたという点でも、良い家づくりのお手伝いができたと感じています。
(蔵楽友美/FIVES)
■建築概要
所在地:近畿地方
設計監理:FIVES 蔵楽友美
施工:株式会社MIC 三谷篤 小野千賀子
床面積:75.23㎡(22.75坪)専有部分壁芯
構造:RC造地上3階建ての3階部分
竣工:2020年7月
撮影:中村絵