徳本賢洛 / TOK205が設計した、新潟・北蒲原郡の住宅「聖籠35」です。農村に建つ平屋の建替で集落文化に興味を持ち計画、過去から続く平面や配置を観察分析して設計に反映、地域住居の特徴の張り出す玄関を残し転用する事でも集落の固有性を継承する事が意図されました。
新潟県聖籠町・農村集落にたつ平屋の建替である。
古くから築いた農の文化。集落の心底に潜む記憶のネットワークに興味を抱き、観察、分析、イノベーションというフローを実践している。
一つは集落の母屋の平面構成であり、住戸はお互いの距離を保ちつつ平屋であり太陽に反応して東西に細長の空間を構える傾向にある。興味深い事で、各住戸には玄関を南へ凸に張り出したミセ空間があり、建替に際し、集落内の連鎖空間でもあるミセ=社交空間を解体せず、アプローチへ転用し、挨拶を交わしこうべを垂れる空間は継続される事とした。
農村は、身近な「社会と住まい手によって造られている」。日常的なその豊かさを踏襲し、集落住居という固有性に虫眼鏡を当て、ごくごく身近に存在する理にかなった「魅力的な事柄」を継承し整えた住まいである。
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以下、建築家によるテキストです。
集落の魅力的な事柄
新潟県聖籠町・農村集落にたつ平屋の建替である。
古くから築いた農の文化。集落の心底に潜む記憶のネットワークに興味を抱き、観察、分析、イノベーションというフローを実践している。
一つは集落の母屋の平面構成であり、住戸はお互いの距離を保ちつつ平屋であり太陽に反応して東西に細長の空間を構える傾向にある。興味深い事で、各住戸には玄関を南へ凸に張り出したミセ空間があり、建替に際し、集落内の連鎖空間でもあるミセ=社交空間を解体せず、アプローチへ転用し、挨拶を交わしこうべを垂れる空間は継続される事とした。
さらには南側からの空間構成が興味深く、南から、日除けの樹木→ニワ→縁側などのオモテ空間→プライベートなウラ空間という集落の個性的な平面構成となっており、ありのままに踏襲し集落の関係性に適した配置としている。
もう一つは、既存母屋の真壁の柱を好んだ施主の意向を汲み、新潟県山北地方の杉材を活用し、コストを考慮したシンプルな構造フレームを提案している。且つ、構造材に限らず、羽柄材と外壁材の全てに県産杉を活用し、身近なファブリケーションにより価値のある場を形成している。
軸組は、一般流通材の中で最弱な3.5寸角の県産材だけで組み立てており、小屋組みは頬杖トラスを形成している。設計積雪量120cmの多雪区域でありながら1間半(2730mm)スパンに対して方杖を使いながら屋根を支持している。均等スパンの方杖を両側に配置することで柱に大きな応力が生じない様に配慮している。
屋根の構造計算からトラス組は桁方向に1365mm間隔となり、表しとなった小屋組が空間に対して程良いリズムとアクセントを創り出している。有り触れた近場の杉材の活用性を探ると共に、調達性と施工性を有効に利用し、新潟県内の林業の潜在能力を引き出すことにも繋がる。
農村は、身近な「社会と住まい手によって造られている」。日常的なその豊かさを踏襲し、集落住居という固有性に虫眼鏡を当て、ごくごく身近に存在する理にかなった「魅力的な事柄」を継承し整えた住まいである。
■建築概要
建物名称:聖籠35
用途:1戸建ての住戸
所在地:新潟県北蒲原郡聖籠町
構造規模:木造 在来軸組工法 地上1階
意匠設計:徳本賢洛 / TOK205
構造設計:田中哲也 / 田中哲也建築構造計画
施工管理:仲村建設
建築面積:83.69㎡
延床面積:82.88㎡
竣工年月:2020年6月
撮影:松崎典樹 / NON SUCH photography