鹿内健+渡辺裕貴 / Sデザインファームが設計した、東京の「アウトドアルームのある家」です。
住宅街にある奥側の環境が良好な敷地での計画です。建築家は、高気密高断熱と共に“自然の変化”の享受も求め、性能担保した内部空間と庭の間に“アウトドアルーム”を設ける構成を考案しました。そして、“生き物としての感覚”を繋ぎ止める建築を作ることも意識されました。
半地下にオフィスを併設した住宅です。
敷地は南北に細長く道路からも 1mの高低差がありました。両側に住宅が建て込んでいますが、各々の隣家は南側には大きな庭を有しており採光・通風ともに良好な環境でした。
建物構成は隣家と同じように南側に庭を配置し地下1階・地上2階としています。日常生活の拠点となる室内空間はUA値0.5W/㎡・K(断熱等級5)の高断熱・高気密仕様となっており、環境にも配慮した消費エネルギーの少ない建物となっています。
しかし高断熱・高気密住宅を設計していると、西日など一部の外的要因が忌み嫌う物であったり、窓を閉め切る事がエネルギー効率に繋がるなど正しい事ではありながらも、本当に良いのか……と矛盾も感じる事もあります。もちろん室内は快適にした上でですが、気温の変化や陽光の移ろいなど自然の変化も暮らしには重要な要素であると考え、ならば「暑い、寒いなど自然環境も楽しむ部屋」を作ろうと考えました。
そこで住戸の南側には「アウトドアルーム」と呼ばれる屋外の部屋を作っています。この空間は屋外ではありますが、室内的要素を随所に散りばめた内部のような空間となっています。 構造で必要な横倒しの梁は室内から連続し、長押のような雰囲気を生み出しています。庭側上部には防火設備を兼ねたサッシがありますが、下部はサッシを設置せず開放的な構成としています。天井にはペンダント照明を吊り下げるなど、屋外と屋内が混じったような中途半端な状態にしています。
これらの構成要素がある事で「室内にいる」という無意識の感覚が生み出され、屋外ではありますがホッとするような気持ちになります。このホッとする気持ちがアウトドアルームでの滞在時間の長さに繋がると考えています。長く滞在すればするほど、普段生活していた時には気が付かなかった自然が見せる「瞬間」に出会えると思います。
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以下、建築家によるテキストです。
半地下にオフィスを併設した住宅です。
敷地は南北に細長く道路からも 1mの高低差がありました。両側に住宅が建て込んでいますが、各々の隣家は南側には大きな庭を有しており採光・通風ともに良好な環境でした。
建物構成は隣家と同じように南側に庭を配置し地下1階・地上2階としています。日常生活の拠点となる室内空間はUA値0.5W/㎡・K(断熱等級5)の高断熱・高気密仕様となっており、環境にも配慮した消費エネルギーの少ない建物となっています。
しかし高断熱・高気密住宅を設計していると、西日など一部の外的要因が忌み嫌う物であったり、窓を閉め切る事がエネルギー効率に繋がるなど正しい事ではありながらも、本当に良いのか……と矛盾も感じる事もあります。もちろん室内は快適にした上でですが、気温の変化や陽光の移ろいなど自然の変化も暮らしには重要な要素であると考え、ならば「暑い、寒いなど自然環境も楽しむ部屋」を作ろうと考えました。
そこで住戸の南側には「アウトドアルーム」と呼ばれる屋外の部屋を作っています。この空間は屋外ではありますが、室内的要素を随所に散りばめた内部のような空間となっています。 構造で必要な横倒しの梁は室内から連続し、長押のような雰囲気を生み出しています。庭側上部には防火設備を兼ねたサッシがありますが、下部はサッシを設置せず開放的な構成としています。天井にはペンダント照明を吊り下げるなど、屋外と屋内が混じったような中途半端な状態にしています。
これらの構成要素がある事で「室内にいる」という無意識の感覚が生み出され、屋外ではありますがホッとするような気持ちになります。このホッとする気持ちがアウトドアルームでの滞在時間の長さに繋がると考えています。長く滞在すればするほど、普段生活していた時には気が付かなかった自然が見せる「瞬間」に出会えると思います。
ますますスピードアップする時代、ちょっと立ち止まって目を凝らせば、実は目の前にあった素晴らしい何かを発見するかもしれません。それを家族の誰かに話す、そんな感動を共有する場所になると思っています。それは数値を追い求める高断熱・高気密とは異なる視点で自然の尊さ、環境の持続性などを住み手が考える事につながるとも考えています。
「寒さはギフトである」 先住民族であるインディアンの言葉だと本で読んだことがあります。AIや自動化など猛烈な勢いで進む中、何かと忘れがちな「人としての感覚、生き物としての感覚」を繋ぎ止める……そんな場所になると考えています。
■建築概要
題名:アウトドアルームのある家
計画地:東京都
主要用途:事務所兼用住宅
工事種別:新築工事
設計:Sデザインファーム株式会社 鹿内健、渡辺裕貴(元所員:WAQデザイン主宰)
施工:江中建設株式会社 池田栄一、中野勝
構造設計:田中哲也建築構造計画 田中哲也、片岡陽花
断熱施工・性能計算:Kizuki 小泉木材株式会社 小泉武彦、由地悟、小関雄基
建築コーディネート:OZONE 家 design
家具製作:sync-furniture 平田進太郎、市川翔太
UA値:0.5W/㎡・K
断熱等級:5(地域区分6)
相当隙間係数(中間時測定):0.3㎠/㎡
相当隙間係数(完了時測定):0.8㎠/㎡
構造・規模:混構造(木造+RC)地下1階地上2階
敷地面積:196.69㎡
建築面積:97.84㎡
延床面積:194.69㎡
設計:2021年10月~2022年6月
工事:2022年7月~2023年5月
竣工:2023年5月
写真:小島康敬