SHARE 工藤浩平建築設計事務所による、神奈川の「生田の園庭」。幹線道路に面する場に保育園の園庭を造る計画。子供を守る視点を大事にしつつ成長の促進も目指して、“原木”を用いた五感を養う遊具を考案。建築施工と家具制作の視点を融合し最適な方法で作る
工藤浩平建築設計事務所が設計した、神奈川の「生田の園庭」です。
幹線道路に面する場に保育園の園庭を造る計画です。建築家は、子供を守る視点を大事にしつつ成長の促進も目指して、“原木”を用いた五感を養う遊具を考案しました。また、建築施工と家具制作の視点を融合し最適な方法で作る事も意図されました。
神奈川県川崎市にある園庭の増築計画である。
前面には街の幹線道路が走り、交通量が多い場所にある。この保育園は0~3歳児までを対象としていたが、時代の流れを受けて、4~6歳児まで預かり対象を拡張することになった。しかしこの保育園には外部保育をすることのできる場所がなかったため、既存の駐車場の一部を園庭に変えることになった。
新しい園庭は、駐車場、道路、隣地の塀といった様々な要素に囲まれていた。私たちは、一様にフェンスを回すことなく、あそびのフェンス、ひかりのフェンス、みどりのフェンスといったそれぞれの面に対して異なる応答をした構成をとった。
普段街で目にする公園にある、何気ない遊具にも、ワクワクと同時にハラハラする危険が潜んでいることに気づかされる。
守る側の視点はもちろん大事であるけれど、子供たちが本来持っている野生的な想像力や運動能力の成長を止める遊具にはしたくない。試行錯誤の末に、原木そのままを使った、五感を養うことのできる遊具を考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
まちなかの保育園
神奈川県川崎市にある園庭の増築計画である。
前面には街の幹線道路が走り、交通量が多い場所にある。
この保育園は0~3歳児までを対象としていたが、時代の流れを受けて、4~6歳児まで預かり対象を拡張することになった。しかしこの保育園には外部保育をすることのできる場所がなかったため、既存の駐車場の一部を園庭に変えることになった。
新しい園庭は、駐車場、道路、隣地の塀といった様々な要素に囲まれていた。私たちは、一様にフェンスを回すことなく、あそびのフェンス、ひかりのフェンス、みどりのフェンスといったそれぞれの面に対して異なる応答をした構成をとった。
遊具について
都市の中に、子供のための居場所をつくるということは、とても楽しいことである一方で、わたしたちが思っていたよりも難しいことであった。
普段街で目にする公園にある、何気ない遊具にも、ワクワクと同時にハラハラする危険が潜んでいることに気づかされる。
守る側の視点はもちろん大事であるけれど、子供たちが本来持っている野生的な想像力や運動能力の成長を止める遊具にはしたくない。試行錯誤の末に、原木そのままを使った、五感を養うことのできる遊具を考えた。
保育士側の視点、保護者側の視点、子供からの視点、街からの視点、どの視点にピントをあてても、子供のための居場所を完璧にすることは難しい。ただ、自然そのものを扱ったこの遊具は、安全に遊ぶために用意された一義的で人工的な遊具にはない豊かさを持っている。この遊具を使いながら、森を育てるように、みんなで育てていけるようなおおらかさをもった園庭であってくれたらと思っている。
家具か、建築か、手か、機械か、
このプロジェクトではそれぞれの要素を家具的に解くのか建築的に解くのか、ということを考えた。
例えば、原木の遊具ひとつとっても、床は建築的な要素だが、園児が頻繁に触るのでやすりで角面を取ったり、各部の接合部は建築の金物を用いず、ホゾをきってビスも使わず収めたりと、家具の文脈を援用することで収めている。また、うねる木材に対しては工場ではなく、現場で大工さんが加工する方法が圧倒的なコストメリットを生んだ。
こうした家具の設えと建築の設えの間の行き来や、ディテールの混ざり合いによって、全体の抽象度を保ちつつ、本来の木の動きも取り込んだ、建築より小さく家具よりも大きいものが立ち上がったように思う。
■建築概要
敷地:神奈川県
用途:園庭
設計:工藤浩平、川上華恵、小黒日香理(工藤浩平建築設計事務所)
構造監修:円酒構造設計
施工:住建トレーディング東京支店
木材:飛騨の森でクマは踊る(広葉樹)、シェルター(針葉樹)
延床面積:約126m2
設計:2020年10月~2021年2月
竣工:2021年3月
写真:楠瀬友将
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外構・造作家具 | 遊具[柱、床] | 広葉樹(飛騨の森でクマは踊る) |
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