ヤン・イェリム+片山豪 / 文生堂が設計した、東京・豊島区の住戸改修「雑司が谷の豪邸」です。
設計者の自邸です。建築家は、既存要素を活かした計画を目指し、入口からルーフバルコニーまでを土間で接続し生活の中心とする構成を考案しました。それにより、“開放的な外部”を取り込んで“量”を目的に作られた空間を“質”を孕む場に変える事を意図しました。
豊島区雑司が谷に建つ、ルーフバルコニー付き集合住宅一室の改修計画。
本計画の特徴として、ルーフバルコニーの存在があり、エントランスから「土間」で繋がれている。
下足のままでも行き来できる自由度の高い場所であり、ルーフバルコニーがあるからこその生活が展開される。また、この土間の取り巻くように様々な質量の素材を散りばめることで、陽や風といった環境の一挙手一投足により、それぞれが違う様相で空間を彩るデザインとした。
ルーフバルコニーという「開放的な外部環境」を取り込むことで、単一的であった「量」の空間は、「質」を孕んだ複合的な空間へ昇華させることができる。その可能性を、本計画で示せればと思う。
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以下、建築家によるテキストです。
豊島区雑司が谷に建つ、ルーフバルコニー付き集合住宅一室の改修計画。
広くもないし、お金もない。でも、私たちYERIMと[豪]にとって、幸せいっぱいの[邸]=[雑司が谷の豪邸]です。
本計画の特徴として、ルーフバルコニーの存在があり、エントランスから「土間」で繋がれている。
下足のままでも行き来できる自由度の高い場所であり、ルーフバルコニーがあるからこその生活が展開される。また、この土間の取り巻くように様々な質量の素材を散りばめることで、陽や風といった環境の一挙手一投足により、それぞれが違う様相で空間を彩るデザインとした。
例えば、タイルは、絶対的な変わらなさ・安心感があり、無意識に触れたくなるような、落ち着きを感じる対象である。それに対し、カーテンは風や光を纏い、環境の機微を楽しませてくれる。軽やかさが、解放感や演出性を与えてくれるのだ。その他にも、木質や鉄、植物が対比され合い、引き立てあう素材の掛け合わせを試みている。
最後に、本件のような、ルーフバルコニーのある部屋は希少である。
集合住宅の多くが「量」の獲得を命題としているからであろう。そして、それは「閉鎖的な内部環境」になりがちである。当時は「量」=「質」になりえたが、供給の飽和、また、ライフスタイルが多様化する現代では、その構図は成立しない。
しかし、そんな状況下でも事業主・設計者の努力、法規・構造上の制約の副産物として、何らかの「質」が存在しているケースがある。私たちが選んだこの部屋もそういった稀有なケースのひとつである。
ルーフバルコニーという「開放的な外部環境」を取り込むことで、単一的であった「量」の空間は、「質」を孕んだ複合的な空間へ昇華させることができる。その可能性を、本計画で示せればと思う。
■建築概要
設計・監理:Yerim Yang+片山豪 / 文生堂
テキスタイルアドバイザー:庄司はるか / Haruka Shoji Textile Atelier
施工:裕建築工房
主要用途:住宅
延床面積:59.41㎡+ルーフバルコニー50.32㎡
対象住棟:RC造、築40年、地上5階建て(うち改修住戸4階)
竣工年月:2021年10月
撮影:楠瀬友将