SHARE 洲崎洋輔建築設計事務所による、埼玉の「北本 旧中山道の家」。街道沿いの二世帯住宅。世代を超え継承可能で用途変化にも柔軟な家の要望に、住環境の確保と共に街とも繋がる“開かれた中庭”を中心とする構成を考案。外部要素の操作で都市規模の周辺と内部空間の連続性も作る
洲崎洋輔建築設計事務所が設計した、埼玉・北本市の「北本 旧中山道の家」です。
街道沿いの二世帯住宅の計画です。建築家は、世代を超え継承可能で用途変化にも柔軟な家の要望に、住環境の確保と共に街とも繋がる“開かれた中庭”を中心とする構成を考案しました。また、外部要素の操作で都市規模の周辺と内部空間の連続性も作る事も意図されました。
旧中山道に面した「開かれた中庭」を持つ、三人家族と祖母の二世帯住宅である。
建主の要望は、将来的な長いスパンで、子世代、孫世代へと世代を超えて住み継ぐことのできる家。家族構成の変化によっては、住宅+事務所、教室としても利用できる、互いの住宅が自立した柔軟な家を望んでいた。
敷地は旧中山道に面する場所で、並走するJR高崎線、北本駅と鴻巣駅の中間に位置する。旧中山道に沿って、古くは農村風景が広がり、その後、大きな店舗・事務所が栄え、近年、宅地化が進んでいる。街の発展や人々の生活の軸として、街道は地域に根付いている。敷地奥には竹林が広がり、南側は飲食店の駐車場、西側は住宅、正面は交通量の多い街道と、周囲に晒された視線の多い雑多な雰囲気を持つ。
都市的な要素のこの場所で世代を超えて住み継ぐ家として、二戸の住宅と、街に面した開放的なピロティで庭を囲う「開かれた中庭」を持つ平屋の住宅を考えた。中庭を共有し、快適な住環境を確保しつつ、周辺環境の変化を受け入れ、変わらない風景を作ることにした。
全体構成は共用エントランスとしてのピロティから、中庭を中心に各部屋を数珠つなぎに配置している。諸室が雁行しながら中庭を囲うことで、中庭には大きな庭と小さな庭のような特性が生まれ、住戸同士は直接見合わず、部屋に応答した小さな庭を望むことで、なんとなく互いの気配を感じ、「間接的に見守り合う住まい方」が生まれることを目指した。
外観は全体として一つの家に見えるように、街道に向けて軒下を作る古くからの中山道沿いの建物形式を踏襲した水平な立面とした。都市的なスケールの周辺環境に対して、大屋根の外観、軒先、軒下、ピロティ、内部空間へと、空間が緩やかに連続し、徐々にスケールが住環境へと近づく建物アプローチを心がけた。屋根とピロティが、 周辺環境からフィルターの様に要素を絞り、住環境を守りつつ室内と中庭が連続する開放的な住まい方が可能となるように、屋根勾配、形状、高さ等のスタディを繰り返した。
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以下、建築家によるテキストです。
旧中山道に面した「開かれた中庭」を持つ、三人家族と祖母の二世帯住宅である。
建主の要望は、将来的な長いスパンで、子世代、孫世代へと世代を超えて住み継ぐことのできる家。家族構成の変化によっては、住宅+事務所、教室としても利用できる、互いの住宅が自立した柔軟な家を望んでいた。
敷地は旧中山道に面する場所で、並走するJR高崎線、北本駅と鴻巣駅の中間に位置する。旧中山道に沿って、古くは農村風景が広がり、その後、大きな店舗・事務所が栄え、近年、宅地化が進んでいる。街の発展や人々の生活の軸として、街道は地域に根付いている。敷地奥には竹林が広がり、南側は飲食店の駐車場、西側は住宅、正面は交通量の多い街道と、周囲に晒された視線の多い雑多な雰囲気を持つ。
都市的な要素のこの場所で世代を超えて住み継ぐ家として、二戸の住宅と、街に面した開放的なピロティで庭を囲う「開かれた中庭」を持つ平屋の住宅を考えた。中庭を共有し、快適な住環境を確保しつつ、周辺環境の変化を受け入れ、変わらない風景を作ることにした。
全体構成は共用エントランスとしてのピロティから、中庭を中心に各部屋を数珠つなぎに配置している。諸室が雁行しながら中庭を囲うことで、中庭には大きな庭と小さな庭のような特性が生まれ、住戸同士は直接見合わず、部屋に応答した小さな庭を望むことで、なんとなく互いの気配を感じ、「間接的に見守り合う住まい方」が生まれることを目指した。
外観は全体として一つの家に見えるように、街道に向けて軒下を作る古くからの中山道沿いの建物形式を踏襲した水平な立面とした。都市的なスケールの周辺環境に対して、大屋根の外観、軒先、軒下、ピロティ、内部空間へと、空間が緩やかに連続し、徐々にスケールが住環境へと近づく建物アプローチを心がけた。屋根とピロティが、周辺環境からフィルターの様に要素を絞り、住環境を守りつつ室内と中庭が連続する開放的な住まい方が可能となるように、屋根勾配、形状、高さ等のスタディを繰り返した。
インテリアの延長として、中庭に対しても細かな調整を行うことで、ヒューマンスケールに近づく住環境が広がり、生活空間は中庭へ、中庭の環境は室内へと浸透していく。中庭に面する天井は木を貼り、反射光が内部まで柔らかく広がる明るい空間となった。
「開かれた中庭」によって少し公共的な装いを持つ住宅が、変わりゆく社会や将来的な家族構成・用途の変化を受け入れ、街の風景とともに未来へと住み継いでもらえる家となることを期待している。
■建築概要
題名:北本 旧中山道の家
所在地:埼玉県北本市
主用途:専用住宅(二世帯住宅)
設計監理:洲崎洋輔建築設計事務所
担当:洲崎洋輔
施工:岡野工務店
担当:岡野浩一
構造設計:工藤構造設計
担当:工藤智之
構造:木造
階数:地上1階
敷地面積:638.17m2
建築面積:243.94m2
延床面積:211.52m2
設計:2022年11月~2022年7月
工事:2022年8月~2022年4月
竣工:2022年4月
写真:中山保寛
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外構・床 | 床 | モルタル金ゴテ仕上 |
外装・壁 | 外壁 | 窯業系サイディング[エクセレージ・親水16](ケイミュー) |
外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き[セリオスプライム] |
外装・屋根 | 軒裏 | ラワンベニヤ 木材保護塗料キシラデコールやすらぎ(キシラデコール) |
外装・建具 | 開口部 | |
内装・床 | リビング1・2床 | オーク複合フローリング(IOC) |
内装・壁 | リビング1・2壁 | |
内装・天井 | リビング1・2天井 | ラワンベニヤ貼りクリア塗装 |
内装・床 | 和室床 | |
内装・床 | 玄関1・2床 | タイル[グレイソウル](サンワカンパニー) |
内装・床 | 洗面・トイレ1・2床 | ビニル床タイル[フロアタイル](サンゲツ) |
内装・床 | 多目的室床 | モルタル金ゴテ仕上 |
内装・壁 | 多目的室壁 | フレキシブルボード |
内装・キッチン | キッチン | |
内装・浴室 | 浴室1・2 | ユニットバス[アライズ](LIXIL) |
内装・照明 | 照明 | ダウンライト(大光) |
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A two-family house for a family of three and a grandmother with an “open courtyard” facing the old Nakasendo.
The owner’s request is a house that can be handed down to their children and grandchildren for a long time, and they want a flexible house that can be used independently as a residence, office, or studio according to changes in the family structure.
The site faces the old Nakasendo, and is located between Kitamoto Sta and Konosu Sta on the JR Takasaki Line.The old Nakasendo has taken root in the region as the axis for the development of the city and for people’s lives. The site has a bamboo grove in the back, a restaurant parking lot to the south, a residential area to the west, and the old Nakasendo with heavy traffic in front, giving it a miscellaneous atmosphere.
In this urban location, as an inherited house, I proposed a one-story house with an “open courtyard” surrounding the garden with a piloti and two houses. In addition to ensuring a comfortable environment by sharing the courtyard, we aimed to create an unchanging landscape by accepting changes in the surrounding environment.
The floor plan was designed with the piloti as the common entrance, and the rooms arranged in a row around the courtyard. By enclosing the courtyard while shifting the rooms, a large garden and a small garden are created in the courtyard. Rather than face each other directly, the dwelling units look out over a small garden corresponding to each room, and somehow feel each other’s presence, aiming for a “living of indirectly watching over each other.”
The exterior design of the house follows the characteristics of the buildings along the old Nakasendo, and has a highly horizontal elevation design with the eaves facing the road so that the whole house looks like a single house. We designed a building approach in which the exterior of the large roof, eaves, under the eaves, piloti, and interior space are gradually connected in accordance with the surroundings of the urban scale, and the scale gradually approaches the living environment.
In order to protect the living environment and enable an open life where the interior and the courtyard are continuous, we repeatedly studied the shape of the roof so that the roof and piloti would narrow down the elements from the surroundings like a filter. The ceiling facing the courtyard is covered with wood, creating a bright space where reflected light softly spreads to the interior.
We hope that the “open courtyard” will make the house a little more public, and that it will be a house that will be passed on to the future along with the townscape, accepting changes in society and future changes in family composition and usage.