川本達也建築設計事務所が設計した、愛知・名古屋市の店舗「Caprice」です。
公園の向かいに建つ美容室とヨガスタジオの計画です。建築家は、誰もが気軽に来られる場所の要望に対し、公園の在り方を参照して各々が自身の“距離感”で関われる建築を志向しました。また、其々が独立して建つ様な構成は地域との繋がりの促進も意図されました。
「公園」みたいな場所をつくるのはどうだろうか。
これは美容室とヨガスタジオを営む夫婦のための店舗。
「公園」には限定された用途よりも人や動物がそれぞれ自由に価値観を持つことのできるおおらかさがある。「お店」という構え方でなくそれぞれが自由に価値観を持ち、各々の関わり方ができる、そんな「人と公園」のような距離感がこの場所にできたら良いと思った。
計画地は宅地開発が行われ近年にかけて少しずつ開発され新興住宅地として栄え始めている場所である。
前面道路をはさみ対面側には地域住民の集まる公園があり、お年寄りのゲートボールや遊具で遊ぶ小さな子ども、昼食を食べる家族などそれぞれが自由に「公園」を生活の一部として暮らしている。
山や田畑も広がるこのおおらかな計画地に4席の美容室とヨガスタジオを同時に営むことのできる空間が求められ、誰もが気軽に来る場所となることを希望していた。美容室とヨガスタジオを敷地内で向かい合わせることで準防火地域ながらクリアで大きな開口部を可能とし「ブリッジ」と呼ぶ緩衝帯を間に設けることでそれぞれの店舗が四周ぐるりと地域と接する状況をつくった。
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以下、建築家によるテキストです。
「公園」みたいな場所をつくるのはどうだろうか。
これは美容室とヨガスタジオを営む夫婦のための店舗。
「公園」には限定された用途よりも人や動物がそれぞれ自由に価値観を持つことのできるおおらかさがある。「お店」という構え方でなくそれぞれが自由に価値観を持ち、各々の関わり方ができる、そんな「人と公園」のような距離感がこの場所にできたら良いと思った。
公園を拡張する
計画地は宅地開発が行われ近年にかけて少しずつ開発され新興住宅地として栄え始めている場所である。
前面道路をはさみ対面側には地域住民の集まる公園があり、お年寄りのゲートボールや遊具で遊ぶ小さな子ども、昼食を食べる家族などそれぞれが自由に「公園」を生活の一部として暮らしている。
山や田畑も広がるこのおおらかな計画地に4席の美容室とヨガスタジオを同時に営むことのできる空間が求められ、誰もが気軽に来る場所となることを希望していた。美容室とヨガスタジオを敷地内で向かい合わせることで準防火地域ながらクリアで大きな開口部を可能とし「ブリッジ」と呼ぶ緩衝帯を間に設けることでそれぞれの店舗が四周ぐるりと地域と接する状況をつくった。
ブリッジは大きなテーブルとしての役割を担い、それぞれの店舗がブリッジを介して機能することで無意識のうちに互いが影響し合う関係性を目指した。この「ブリッジ」が外部空間として人や動物が気軽に来て過ごす場所ともなれば、拡張された公園の一部として町に還元するようなこの地域らしい新たな公共性をつくれると考えた。
木造スラブで繋がる
限られた規模の中で最大限の空間を獲得するために耐力壁は最低限の配置とし、ブリッジは成240mmの梁をグリッド状に組み構造合板により面化することで床スラブをつくり、2つの店舗がブリッジにより1棟の構造体として繋がることで互いに力を伝え合い足りない力を補うような夫婦のような在り方となった。
美容室のミラーはブリッジに設けたスリットに差し込むだけのシンプルなデザインとし、固定されない可変的な状態とすることで将来的なレイアウトの変更や規模拡大を可能としている。またヨガスタジオ側も同様の納まりとすることで用途の変化やテナントとして貸す場合でもフレキシブルに追従できる環境を整えた。
ブリッジが美容室で髪を切るための席となり、ヨガやテナントが大きなテーブルとして使いその下では植物が自生し動物が気ままに暮らすことのできる場ができる。そんな多様な公のあり方がこの建築で生まれたならとても嬉しく思う。
■建築概要
建築敷地:愛知県名古屋市
主要用途:店舗(美容室、ヨガスタジオ)
工事種別:新築
構造設計:坂田建築士事務所
建築施工:澤崎建設株式会社
建物構造:木造
延床面積:91.51㎡
竣工年月:2023年1月
写真撮影:植村崇史