栫井寛子+徳永孝平 / atelier SALADが設計した、鹿児島市の「薬師温泉」です。
公園の隣の歴史ある銭湯の改修計画です。建築家は、愛され続ける為の“現代的な価値”の拡大を目指し、周辺と繋がる“大きく開かれた”空間を志向しました。そして、土の塊から窓部分をくり抜いた様なファサードで内外を接続すると共に交流も促しました。施設の公式サイトはこちら。
大正8年創業の永く愛されてきた公衆浴場、薬師温泉。
今や風呂なしの家はほとんどないだろう。かつて必要に迫られた場所は、現代では価値を拡大する必要があった。
「愛され続ける公衆浴場をつくりたい」というお施主様の想いに反し、既存建築は外部への開口がほとんどなく、大きく開くことが必要だと考えた。
我々は、隣地公園との連続性を意図して「公園の土でできたような塊」を挿入し、周辺に向けて開くジェスチャーとして「塊を大胆にくり抜いたような造形」とした。その中央に「番台」という公衆浴場の象徴的なアイコンを浴場を思わせる「タイル」で覆い内部と外部を横断するように据えた。
飲み物を買う人、散歩途中に休憩する人、お風呂に入る人、ベンチで雑談する人。老若男女が分け隔てなく交流する舞台になった。
早くも生活の一部として愛され始めている。入浴のために“行く必要があった場所”から、“わざわざ訪れたくなる場所”へ。民間でありながら公共性にも寄与する「まちに開かれた新しい公衆浴場」を実現することができた。
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以下、建築家によるテキストです。
地域に開かれた公衆浴場
大正8年創業の永く愛されてきた公衆浴場、薬師温泉。
今や風呂なしの家はほとんどないだろう。かつて必要に迫られた場所は、現代では価値を拡大する必要があった。
「愛され続ける公衆浴場をつくりたい」というお施主様の想いに反し、既存建築は外部への開口がほとんどなく、大きく開くことが必要だと考えた。
我々は、隣地公園との連続性を意図して「公園の土でできたような塊」を挿入し、周辺に向けて開くジェスチャーとして「塊を大胆にくり抜いたような造形」とした。その中央に「番台」という公衆浴場の象徴的なアイコンを浴場を思わせる「タイル」で覆い内部と外部を横断するように据えた。
結果として
①外部→②低く抑えられた軒下→③内部土間→④一段上がった休憩スペース→⑤暖簾→⑥更に一段上がった脱衣所→⑦浴室
と限られたスペースの中に多様なシークエンスが生まれた。
空間がつながっていても、靴を脱ぎ一段上がることで、空間の性質が変化するのは元来日本建築に染み付いた身体的感覚である。
「靴を脱ぎ、服を脱ぎ、お湯に浸かる」という開放感の展開を、空間によって意図的に設定した。飲み物を買う人、散歩途中に休憩する人、お風呂に入る人、ベンチで雑談する人。老若男女が分け隔てなく交流する舞台になった。
早くも生活の一部として愛され始めている。入浴のために“行く必要があった場所”から、“わざわざ訪れたくなる場所”へ。民間でありながら公共性にも寄与する「まちに開かれた新しい公衆浴場」を実現することができた。
(栫井寛子+徳永孝平 / atelier SALAD)
■建築概要
題名:薬師温泉
所在地:鹿児島市薬師1丁目22-36
主用途:公衆浴場・飲食店
設計:栫井寛子+徳永孝平/ atelier SALAD
施工:Design Office SHIROYAMA+中央建設株式会社
植栽:Weru landscape
照明:Filaments Inc.
グラフィック:PRISMIC DESIGN
カフェディレクション:福永寛尚
床面積:214.22㎡
竣工:2023年4月
写真:長谷川健太、磯畑弘樹