塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONが設計した、埼玉・さいたま市の住戸改修「PATCH」です。
30代の施主家族の為に計画されました。建築家は、間仕切の撤去で回遊動線を作り、部分的解体で木と鉄のフレームを挿入して“空間の彩り”と“生活の骨格”を創出しました。“最小限の補修”の前提の下に“新旧に捉われない自由さ”を生み出しています。
この計画は30代の夫婦と子供一人が住むための築18年中古マンション一室の改修。
いわゆる中廊下式の間取りで玄関からリビングへ続く廊下の脇に個室や水廻りの機能が並んでいた。この間取りでも生活は成立するが、施主はリビングからの眺望を生かしながら、既存の部屋に生活が規定されない開放的なプランを求めた。私たちは既存の中廊下が作る暗く直線的な動線と、不揃いな間仕切壁によって中途半端なスケールの領域が作られていることに、違和感と可能性の両方を感じた。
不揃いな間仕切壁は天井を残して最小限に解体し、解体痕は傷を癒す絆創膏のように木フレームにて箱状に覆う。このフレームは既存の痕跡をトレースし色を与えて存在を誇張させることで、補修する行為自体が空間を彩り、縦横無尽に駆け巡るラインとなって現れる。
木フレームで揃えた壁に沿わせて部屋を横断する鉄フレームを挿入する。このフレームは中廊下の出入り口を作りながら新たな間取りを整理するとともに、建具や収納や飾り棚といった機能が兼ねられ、生活の骨格を作る。
さらに元和室と寝室の収納を解体し行き来ができるようになると、中廊下→リビング→寝室→中廊下…という、個室と中廊下を包括した変形の回遊プランとなる。
木フレーム、鉄フレーム、回遊プランは最小限の補修という前提の元、別の論理で生まれた要素であるが、新しい間取りとインテリアを成立させるためにそれぞれが補完しあう関係にある。既存の多くを残しながら、補修することに重心を置き、少ない手数の解体と挿入で、新旧に捉われない自由さを手に入れた部屋である。