ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる鳥瞰、北西側より見下ろす。 photo©畑拓
ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる外観、東側の道路より見る。 photo©畑拓
ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるデッキテラス(雪の風景) photo©佐々木信也
ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるエントランス側のホールからフードコートを見る。 photo©畑拓
山田貴宏 / ビオフォルム環境デザイン室が設計した、岩手・陸前高田市の「陸前高田 発酵パーク CAMOCY」です。
震災被害を受けた街に計画された7つの店舗等が入る施設です。建築家は、“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案しました。そして、建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げました。店舗の場所はこちら(Google Map)。
2020年12月に岩手県陸前高田市にオープンした、発酵をテーマにした商業施設「発酵パーク CAMOCY」。
東日本大震災により街全体の99%がなくなった陸前高田市を、「発酵」をテーマに再生し賑わいを取り戻そうという「CAMOCYプロジェクト」の一環です。味噌、醤油、チョコレート工房、発酵食堂、クラフトビール、パン屋など七つの店舗や、フードコートやキッチンスタジオが配置されています。
「復興の象徴として、人も暮らしも徐々に発酵していく」をテーマに、地域が元気になる施設づくりを目指しました。
震災前は街道沿いに蔵が連なっていたという、かつての街並みをファサードデザインに反映しました。
蔵の屋根のスカイラインが連続するような意匠が、街並みのよきアイコンになり、かつての風情を取り戻す一助になればと思います。また、震災前の記憶を継ぐため津波の後から救われた石畳を外構で再利用しています。
かつて気仙大工として活躍した歴史を持つこの地で大工技術を生かしながらこうした規模の施設を作るには木造が最も適していると考え、構造は木造とし、地元の素材と地元の職人さんたちと作ることを第一に考えました。
内外装、家具にとふんだんに地元の杉や松を使用しています。木材を山から切り出し地元の製材所にて製材し、地元の大工や職人が腕をふるいました。これからの時代をみすえ、地域に根差した産業と技術を改めて育んでいくことを大切にしたいと考えます。
店舗什器は、地域の木材屋さん、鉄工所さん、職人さんと協働して開発しました。主材は赤身のきれいな気仙杉、スツールの背になる材は山林に自生している広葉樹の小径木丸太。丸太の皮むきは手作業で一つ一つ丁寧に剥いていただきました。
多くの作り手同士の対話を通して実現した“発酵家具”は、地域の材料と人の手をつなぐ役割を担いました。また、かつての商家には必ずあった“暖簾”を、地域の作り手さんと染物屋さんに担っていただき、建物の入口や各店舗の表面に配しました。
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ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる鳥瞰、北西側より見下ろす。 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる俯瞰、東側より見下ろす。 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる俯瞰、屋根の詳細 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる外観、壁面のサイン photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる外観、東側の道路より見る。 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる外観、東側の道路より見る。 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるエントランスへのスロープ photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるエントランス photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるエントランス側のホールからフードコートを見る。 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコート photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコート photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコート photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコート photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコート、天井を見上げる。 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコートからアトリエ。 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコートから物販店舗5と物販店舗4を見る。 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる物販店舗4 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコートから飲食店舗2と物販店舗3を見る。 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる物販店舗2 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる照明と架構 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる照明と架構 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコート、什器 photo©畑拓

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる什器の詳細 photo©角田麻夫

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる什器の詳細 photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるデッキテラス photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるデッキテラス、薪 photo©角田麻夫

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる外観、東側より見る。(雪の風景) photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる外観、東側より見る。(雪の風景) photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるフードコート(雪の風景) photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるデッキテラス(雪の風景) photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げるデッキテラス(雪の風景) photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる外観、南東側より見る(雪の風景、夜景) photo©佐々木信也

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる平面図 image©ビオフォルム環境デザイン室

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる断面図 image©ビオフォルム環境デザイン室

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる断面図 image©ビオフォルム環境デザイン室

ビオフォルム環境デザイン室による、岩手の「陸前高田 / CAMOCY」。震災被害を受けた街の7つの店舗等が入る施設。“地域が元気になる”存在を目指し、かつての街並みを参照した“蔵の屋根”が連続する様な意匠の外観を考案。建築に加えて什器も地元の職人と地元の素材で作り上げる構造図 image©ビオフォルム環境デザイン室
以下、建築家によるテキストです。
様々な人やもの、ことが繋がり発酵し続ける建築と場づくり
2020年12月に岩手県陸前高田市にオープンした、発酵をテーマにした商業施設「発酵パーク CAMOCY」。
東日本大震災により街全体の99%がなくなった陸前高田市を、「発酵」をテーマに再生し賑わいを取り戻そうという「CAMOCYプロジェクト」の一環です。味噌、醤油、チョコレート工房、発酵食堂、クラフトビール、パン屋など七つの店舗や、フードコートやキッチンスタジオが配置されています。
「復興の象徴として、人も暮らしも徐々に発酵していく」をテーマに、地域が元気になる施設づくりを目指しました。
蔵の並ぶかつての風景を再生
震災前は街道沿いに蔵が連なっていたという、かつての街並みをファサードデザインに反映しました。
蔵の屋根のスカイラインが連続するような意匠が、街並みのよきアイコンになり、かつての風情を取り戻す一助になればと思います。また、震災前の記憶を継ぐため津波の後から救われた石畳を外構で再利用しています。
地元の木材と作り手による地産地消の建築
かつて気仙大工として活躍した歴史を持つこの地で大工技術を生かしながらこうした規模の施設を作るには木造が最も適していると考え、構造は木造とし、地元の素材と地元の職人さんたちと作ることを第一に考えました。
内外装、家具にとふんだんに地元の杉や松を使用しています。木材を山から切り出し地元の製材所にて製材し、地元の大工や職人が腕をふるいました。これからの時代をみすえ、地域に根差した産業と技術を改めて育んでいくことを大切にしたいと考えます。
発酵する家具で広がった地域とのつながり
店舗什器は、地域の木材屋さん、鉄工所さん、職人さんと協働して開発しました。主材は赤身のきれいな気仙杉、スツールの背になる材は山林に自生している広葉樹の小径木丸太。丸太の皮むきは手作業で一つ一つ丁寧に剥いていただきました。
多くの作り手同士の対話を通して実現した“発酵家具”は、地域の材料と人の手をつなぐ役割を担いました。また、かつての商家には必ずあった“暖簾”を、地域の作り手さんと染物屋さんに担っていただき、建物の入口や各店舗の表面に配しました。
伝統素材と現在の技術の融合
発酵は時間をかけてゆっくり進むものです。この施設も地域に根ざし時間性を内包するようなものにしたいと考え、素材類は瓦や杉の板張りとして伝統的な建物の風情を醸しつつ、架構形式はトラス構造とし、天窓やガラスなどの現代技術を活用し、次の時代へつないでいくようなデザインとしました。
環境に配慮した建築、エネルギーの地産地消へ
建物全体の断熱性能を高く確保し、冷暖房の省エネ性を確保しています。客席ホールの天井には天窓を連ね、昼間の採光を十分確保することで照明の負荷を低減しています。天窓は自然通風を促し、電動による機械的な換気に頼らなくてもいい仕掛けとしています。
暖房には、地域の木質資源を活用しようと、薪ストーブを導入しました。地域電力会社である「陸前高田しみんエネルギー」が電力とともに薪も供給します。また場内駐車場の上に太陽光発電装置を設置し、エネルギーも地産地消で賄っています。
■建築概要
題名:陸前高田 発酵パーク CAMOCY
所在地:岩手県陸前高田市気仙沼町
主用途:飲食店、物販店舗
設計:ビオフォルム環境デザイン室 担当/山田貴宏、スタジオカムナ 担当/角田麻夫
施工:吉田建設
什器デザイン:スタジオカムナ 担当/角田麻夫
構造:木造平屋建て
敷地面積:1419.95㎡(429.53坪)
建築面積:696.88㎡(181.72坪)
延床面積:713.32㎡(215.77坪)
工事:2020年7月~ 2020年12月
竣工:2020年12月
写真:畑拓、佐々木信也