SHARE 藤田雄介 / CAMP DESIGN INC.による”翠ヶ丘の住宅”
photo by HATTA
以下、建築家によるテキストです。
躯体の中の「建築」と「隙間」
築25年、約80㎡のマンションの改装計画である。
新築の場合には、建築基準法上の規制のために敷地内に隙間が生まれる。その隙間は庭やガレージとして使われたり、名前のつけようの無い場所として存在し、建築や外部環境との関係性を生み出す。このような建築と外部の関係を考えながら設計することを、躯体の中で行うことで、既存のフレームを超えて外部環境との更なるつながりをこの部屋の中にもたらすことが可能ではないかと考えた。そこでまず既存の躯体=敷地に対して、「隙間」をつくりながら大きなワンルームを建てた。ここでは隙間が生まれるための規制は無いが、部屋の量、構造・設備や開口部の位置、眺望、間取りなどのコンテクストを編集した結果として立ち現れている。
隙間には、生活に寄り添う様々な要素が散りばめられている。大きな特徴として、ルームテラスと呼ぶテラスの延長のような空間が2つある。1つは玄関横のスペースを取り込み、土間ともサンルームとも形容しがたい空間で、植物や洗濯物を干したり施主がカスタマイズできる自由な場所である。もう1つは、バルコニーから連続したダイニングのあるスペースである。既存の雁行した間取りを用いて、外との一体感のある空間になっている。その他に小屋のような風呂・洗面所があり、神戸特有の北から南に抜ける風を取り入れるために、大きな窓が開けられている。この小屋の存在は、躯体内のウチとソトの構成の中に、さらにウチをつくりだし単純な相関関係を崩す効果を生んでいる。壁沿いの梁下のスペース等は、収納や設備や造付けの家具などを配置して、大きくスッキリとしたワンルームを作るためのサーバントスペースになっている。主寝室の突き出た隙間には造作机を用意し、六甲山を眺めながら作業できるワーキングスペースをつくった。
このように個性豊かな「隙間」たちと、躯体=敷地の中に建てられた家が幸福な関係を生み出す設計を、コンクリートのランドスケープの中で展開している。