
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.019 GROUP「SHIBUYA PARCO 2F POP UP SPACE CRACK」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
GROUP「SHIBUYA PARCO 2F POP UP SPACE CRACK」
先日、GROUPが内装を手掛けた、渋谷PARCO2階にあるポップアップスペースを拝見した。
見たといっても、訪問した時には、実際にはポップアップスペースは設営作業中で衝立で覆われており、見ることができたのは、空間上部に設えられている「廻り縁」のみ。でも、この廻り縁を見たときに「ああ、これは建築家の仕事だなあ」と深く思わされた。
僕自身、この建築メディアを仕事にする前には、住宅の設計などにも携わっていたのだけど、「廻り縁」の扱いについて考えることはあったが、正直このようなアプローチは思いつきもしなかったし、この廻り縁を見たときに、当たり前(慣習と言っても良い)の一歩手前に立ち返って、設計されているなと強く感じた。
恐らく、多目的に使われるスペースの為、空間全体に対して大きな特徴やデザインを与えることは難しいし求められてもいないだろう。そのような与件の中で、空間の雰囲気に影響を与え、空間を定義する要素として廻り縁に目を付け、既成の廻り縁の概念の外から思考して、生み出されたのが、この金属パイプを用いた廻り縁なのだと思った。
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断面の空洞を敢えて見せるディテールも素材の種明かしをするようなチャーミングさもあり、建築家の思考を想像させられる。面白い。
また、建築家の岸和郎が設計した初期代表作のひとつである「下鴨の家」で、側面に用いられている成形セメント板が敢えてその小口の穴を見せるデザインになってることも思い出させてくれた。(参照しているかは不明だが、そういう想像力を喚起させるかどうか、ということも「建築」を世に提示するという意味では重要だと考えている)
このような感じで、実際に見られたのは廻り縁だけだったものの、大いに建築的刺激を受けたのでした。
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最初に書いた内容に戻るのだけれど、冒頭で書いた「あたり前の一歩手前に立ち返って考える」を、筆者は、建築をつくるときの非常に重要な視点だと考えている。
建物を「建築作品」として世に提示するということは、そこに何らかの新規性があり、建築の歴史を一歩先に進めているということを提示することだと思う。つまり論文のようなもの。(論文は、既往研究をまとめ、その先にある新規性を証明するものだ)
様々な建築経験を積む中で、そのような建築をつくるときにキーとなるのは「如何に、慣習の一歩手前に立ち返って考えられるか」であると考えるようになった。
本作品は、そんな自身の建築への価値観も思い出させてくれる作品でした。
お施主さん、GROUPの皆さん、ご竣工おめでとうございます!
(訪問日:2026年3月26日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。
