
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.020 廣瀬隆志建築設計事務所「DORM INOKASHIRA」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
GROUP廣瀬隆志建築設計事務所「DORM INOKASHIRA」
廣瀬隆志さんが設計したカフェ「DORM INOKASHIRA」と、そこで行われている廣瀬隆志建築設計事務所の展示「関係をつむぐ」を拝見した。(会期は終了しています)
井の頭公園の南側のエリアにある、小さな商店街にあるカフェ。また、このカフェの並びに廣瀬さんの事務所(ご自身で設計)もある。ご近所かつ自身の設計した空間で展示ができるということは、幸せなことだろうと思う。
廣瀬さんは、日本設計に長く勤務した後に独立した建築家だ。展示を拝見していると、住宅も手掛けておられるが、中規模の幼稚園などの保育系の施設も多数設計されている。
カフェの店主さんとお話ししていたところ、廣瀬さんに電話をしてくださり、ちょうど事務所で仕事をされていた廣瀬さんがお店まで来てくれて、展示を解説してくれたり、お話ができて、非常に楽しい時間を過ごした、、、!
廣瀬さんの建築作品は、ご自身もおっしゃっていたのだけれど、建築家的なアイデアと事業性や合理性を適切なバランスが特徴的。僕自身も、分譲マンションや店舗などの建築の設計に従事していたこともあり、事業性と意匠性をどのように融合させていくのか、ということは非常に興味のあるトピックだ。
僕自身が、大小の設計事務所に勤務して様々な用途に関わった経験から、建築家のスタンスには様々なものがあり、歴史の先端を切り開く空間性を実現することも重要であるし、意匠性と事業性を融合して様々な価値のバランスを取りながら建築をつくることも等しく重要な仕事であると考えている。
廣瀬さんと話しながら、改めてそのようなことを思った。
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また、久々に自身の出自や経歴を話していて、ハウスメーカーや地方の工務店さんの下請け的な仕事を泥臭く行っていた時代のエピソードや記憶が蘇った。(メディアの仕事もある意味で、泥臭い側面が多々ありますが)
メディアに従事する時間が長くなり、現場から遠ざかってしまっているけれど、自身の経験や経歴はことあるごとに語っていくことで、アーキテクチャーフォトというメディアが、そのような設計の現場と地続きであるメディアであることも伝えていきたいと改めて思った。
廣瀬さんとお話しできたことで、逆にカフェの空間についてじっくり体感したり、考察する時間が取れなかったので、ここでは詳細な感想を書くのは控えようと思うのだけれど、少しだけ。
勾配屋根の下にいるかのような空間が非常に心地よい、、、!
入口付近には、店主さんとも会話ができる小テーブルのあるベンチの様な客席が用意されている。そして細長い空間の先にテーブル席のスペースが設けられており、こちらはより親密な雰囲気を備えた場所。ひとつながりの空間でありながら、両方の性格の客席が用意されていることも印象的であった、、、!
また、より注目してみていくと素材の使い方も印象的である。ペットボトルのキャップをリサイクルした素材を、テーブルや天板に大きく使用している。この素材の多彩な色が、シンプルで抑制が効いた空間の中に適切な華やかさを付与していて心地が良い。廣瀬さんに教えていただいたのだが、この建材はREMAREという愛知のメーカーさんによるものだそう。
また、限られた面積の中での、合理性のある空間の使い方も印象的だった。
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そして、廣瀬さんによるこのお店と事務所が近接している状況を見て、「東京におけるローカル」というものも想像した。
静岡県に住んでいた時は、東京は大きな総体のように思えていて、何というか実態の都市というより、概念のように感じていたような気がする。
実際に廣瀬さんのように、東京のなかで特定の地域に根を張って活動している人たちに会うと、東京という都市もローカルの総体なのだなと思えてくる。
店主さん、廣瀬さん、貴重な時間と体験を有難うございました!
(訪問日:2026年3月28日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。




