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【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」
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ap編集長の建築探索R.E.A.D. & Architects住宅岡田一樹後藤連平神奈川論考
【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階、リビングから2階への螺旋階段側を見る。 photo©rem goto

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。


R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」

文章:後藤連平

 
岡田一樹さん率いるR.E.A.D. & Architectsによる神奈川の住宅「STEP / SCREEN / COURT」を拝見した。

岡田さんの経歴を少し紹介すると、谷口吉生さんの事務所で経験を積んだ建築家で、谷口建築研究所時代の担当作品には、金沢の「鈴木大拙館」などがある。

谷口吉生さんは、建築界で知らないものはいない巨匠だ。特に美術館の設計で世界的に知られており、最近、惜しまれつつの閉館で話題になっている「資生堂アートハウス」の設計や(高宮眞介と協働)、豊田市美術館、ニューヨークのMoMAの改修など、国内外で多くの名作を手掛けている。

そのような岡田さんの経歴を考えながら、この住宅を体験していたのだけれど、ぐるぐると回りながら「継承」というワードが思い浮かんだ。

以下の写真はクリックで拡大します

【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」外観、南側の道路より見る。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階、エントランス側よりリビングを見る。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階、リビングよりダイニングとキッチンを見る。 photo©rem goto

「継承」について語る前に、この住宅の構成を説明してみたいと思う。
道路や隣地の境界に、コンクリートの壁を建てることでプライベートな庭をつくり、そこに面するようにガラス張りのリビングを配置。そして、レベル差をつけて一段上がったところに、ダイニングとキッチンを設けている。2階には個室群があり、そこへは、リビングに面する螺旋階段で接続がなされている。

住宅の中をひと回りすると、リビングが家の中心に据えられていて、様々スペースが、高さや方向、角度を変えてこの空間と関係できるように作られていると感じた、、、!ダイニングから少し下ろすような視点。螺旋階段から大きく見下ろすような視点。ソファからフラットに見る視点。キッチンから少し斜めに見る視点。多様なリビングへの視点が用意されていることに気づく。

そして、この視点の多様さによって、この住宅のコアであるリビングの存在が、体験の中で立体的に脳内に立ち上がり把握できて身体に染み渡ってくるような感覚があった、、、!それは、ひとつの空間を余すことなく味わい尽くすような豊かな体験というか、、、、!

以下の写真はクリックで拡大します

【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階、リビングからダイニング側を見る。(ソファの一部から上がれるように設計されている) photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階、ダイニングからリビングを見る。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階、ダイニングからリビング越しに庭側を見る。 photo©rem goto

そして、ここで先に書いた「継承」というワードに戻ってきたいのだけれど、この様々な視点の創出という手法は、谷口吉生さんの美術館でも多用されている手法でもあるのではないかと思った。

美術館の中を歩き回り、スロープや階段で違うレベルに移動しながら、これまでにいた場所を見下ろしたり、見上げたりする。そして、同じ目線だけではなく、様々な違った目線でアート作品を鑑賞することを促す。谷口さんの美術館には、そのようなつくりになっているものが多く、実に豊かなアートとの対話ができるようになっている。

この、設計手法を、岡田さんは継承して、この住宅のリビング空間に対して応用したのではないかと思った、、、、!

この空間の中で、岡田さんとも色々話したのだけれど、谷口さんの、あまりメディアの中で語られることのなかった設計に対する言葉や姿勢についても色々と教えてくれた。それは、師に対する大きなリスペクトも感じさせるものであった、、、!

また、岡田さんが言うには、岡田さんのような若い世代で谷口事務所を経験して独立した建築家は数えるほどしかいないのだと言う。そう考えると、改めて谷口吉生さんの設計思想や手法の継承の重要性も感じた。

以下の写真はクリックで拡大します

【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階、2階への螺旋階段を見る。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」2階、1階のリビングを見下ろす。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.023 R.E.A.D. & Architects「STEP / SCREEN / COURT」1階から2階への螺旋階段からリビングを見下ろす。 photo©rem goto

「継承」という言葉をここまでに何度も使ってきたのだけれど、建築界においては、継承よりも如何に前の世代を「のり越えるか(革新)」の方が重要に語られることも多いと思う。
それは、建築という概念を未来へと更に先に押し進めるためにはもっともだと思う。

しかし、この岡田さんの住宅を経験して、改めて「継承」の重要性にも目を向けなければいけないと思った。(勿論だけど、この住宅には、岡田さんが谷口さんを乗り越えようと試みていることも多々ある)

先人が築き上げた、宝のような設計思想や設計手法を後世に繋げていくこと。これも、当たり前なのだが、革新と等しく重要なのではないだろうか。建築物が、重要文化財となり保存されていくように、その考え方や手法も引き継がれていくことで保存されていく。そんなことにも目を向けても良いのではないかと思った、、、、!

お施主さん、岡田さん、貴重な機会を有難うございました!ご竣工おめでとうございます!!!

(訪問日:2026年5月24日)


後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。


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