SHARE アタカケンタロウ建築計画事務所による”狭山ひかり幼稚園”
以下、建築家によるテキストです。
狭山ひかり幼稚園は創立40周年を迎え、老朽化した園舎を建て替える事になった。一斉に課題を与えるような集団教育は行わず、園児ひとりひとりが様々な遊びや活動に、自発的に取り組める環境づくりを重視した教育を展開している。旧園舎は一般的な園舎建築を踏襲したプランで、同じような教室が北側の廊下で結ばれ、ひとりの園児にとっては、自分の教室と遊戯室が主な活動領域になっていた。この幼稚園の教育の特徴を推し進めて考えれば、普段は集団を前提とした教室のまとまりを気にせずに、ひとりひとりの園児が園舎のすみずみまでを自分のものとして遊びまわり、様々な環境に出会うような園舎をつくるべきだ、ということになった。
各教室は園庭と裏庭の両方に面し、それぞれに空間的な特徴を持って立ち並んでいる。家型の天井をしたおうちのようだったり、小屋に囲まれた庭のようだったり、一方向にすぼまったシアターのようだったりと、その形態も仕上げも様々である。そのような教室群をぶちぬくように、2本の通り状の空間(「大通り」と「こみち」)が横断していることが、この園舎の大きな特徴となっている。それによってイベントの練習や帰りの会といった、クラス単位での活動に必要な教室の独立性も確保しながら、園舎全体がひとつの大きな遊び場としても成立する構成になっている。通り状の空間に立つと、同じ場所であっても、園庭の方を見ると教室の空間性が現れ、通りの方向を見ると小さな街並みのような空間性が現れる。ここでは、各教室は環境の差異として捉えられ、園児にとって活動の選択肢の豊富な、きっかけと発見に満ちた状況がつくりだされている。