SHARE 半海宏一建築設計事務所による、京都・宮津市の、モノレール駅舎「天橋立ビューランド・モノレール山麓駅」
半海宏一建築設計事務所による、京都・宮津市の、モノレール駅舎「天橋立ビューランド・モノレール山麓駅」です。
駅舎は敷地の山手側にあるため、土砂災害警戒区域のレッドゾーンがかかり、京都府の崖条例、景観条例(俯瞰景観重点区域)と多くの規制がかかっていた。また既存駅舎が福祉まちづくり条例もクリアしなければならない建物であった。問題は条例だけではなく、観光地ということも大きくのしかかる。国内旅行会社がツアーなどで事前予約されているため、施設の運休が困難であるという。環境による法規制や工事のために休業できないという事情は多くの観光地が問題として抱えている。今回は出来るだけ運休をせず、既存鉄骨造を増改築する方法を選び、設計段階から観光シーズンを考え工程を組み、プロジェクトを進めた。
観光地である住宅地での設計手法
既存の駅舎は駅前通りの観光地側ではなく、古い住宅地側にあるため、風景を崩さずに風景になれる建築を目指した。まず考えたことは、住宅にスケールに近づけるよう建物のボリューム分節し、周囲に馴染むように外観を整えることである。特に下屋についてはヒューマンスケールに近づけられる要素の一つであり、出来るだけ低く抑えた。
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以下、建築家によるテキストです。
観光地の風景になれる建築
観光施設が抱える問題
京都府宮津市にある天橋立は白砂青松の地としても知られた風光明媚な場所である。ここにある展望遊園地「天橋立ビューランド」は海抜130mの山頂に位置し、天地が逆さまに見える“股のぞき”や松並木である龍が天に昇るような風景から“飛龍観展望”でも有名な観光名所である。近年のアジア系観光客の増加によって前面道路まで行列する状況であり、モノレール駅舎の規模拡大が急務であった。
駅舎は敷地の山手側にあるため、土砂災害警戒区域のレッドゾーンがかかり、京都府の崖条例、景観条例(俯瞰景観重点区域)と多くの規制がかかっていた。また既存駅舎が福祉まちづくり条例もクリアしなければならない建物であった。問題は条例だけではなく、観光地ということも大きくのしかかる。国内旅行会社がツアーなどで事前予約されているため、施設の運休が困難であるという。環境による法規制や工事のために休業できないという事情は多くの観光地が問題として抱えている。今回は出来るだけ運休をせず、既存鉄骨造を増改築する方法を選び、設計段階から観光シーズンを考え工程を組み、プロジェクトを進めた。
観光地である住宅地での設計手法
既存の駅舎は駅前通りの観光地側ではなく、古い住宅地側にあるため、風景を崩さずに風景になれる建築を目指した。まず考えたことは、住宅にスケールに近づけるよう建物のボリューム分節し、周囲に馴染むように外観を整えることである。特に下屋についてはヒューマンスケールに近づけられる要素の一つであり、出来るだけ低く抑えた。下屋でもあるピロティの空間にゆとりを持たせることで、風雨や雪などの日本海側の急な気候変動にも対応できるようになっている。観光客は1Fのピロティで切符を購入し、2Fの待合所でモノレールを待つという単純な構成ではあるが、既存プラットホームの高さが変更できないため、鉄骨の増改築の難しさ痛感した。敷地では厳しい法規制、建物は既存の鉄骨と八方塞がりであったが、ひとつひとつ根気強く解いていった。主要構造部材は鉄骨、垂木などの二次的な構造部材に木を用いることで、大空間でも素朴な雰囲気を創り出している。また、ケラバを片持ち梁で4m出すことで、屋根の下にモノレールを格納できるようにした。
一体構造と施工方法
既存鉄骨造を増改築するために、まずは専門業者による鉄骨の既存建物調査を行った。この調査のおかげで、鉄骨の接合部や基礎の状態を確認して補強方法を検討した。現行法に満たされていない既存不適格建築物であるが、エキスパンションジョイントを設けず、一体建築物として計画した。条件が揃わないと難しいが、完了検査済があったことで今回のような手法が可能となった。
施工方法については、観光シーズンのピークが大きな工事と重ならないようにした。工事期間中の観光客の利用は既存プラットホームにつながる通路のみ仮使用申請で使用し、工事終盤は完成した建物内から一部を仮使用する方法をとり、2段階での仮使用申請を行うことで最低限の運休で工事を進めた。
■建築概要
名称:天橋立ビューランド・モノレール山麓駅
所在地:京都府宮津市
用途:モノレール駅舎
規模:鉄骨造2階建
延床面積:299㎡
施工:山寅組
構造:S3Associates
造園:造景房吉(岩村陽一郎)
サイン:KAMOGUMI DESIGN(松本圭介)
写真:笹の倉舎(笹倉洋平) http://www.sasanokurasha.com
竣工:2018.4