SHARE 五十嵐理人 / IGArchitectsによる、広島市の店舗「宇品のカフェ」
五十嵐理人 / IGArchitectsが設計した、広島市の店舗「宇品のカフェ」です。
ジャングルジムは遊具だが、山であり、展望台であり、小さな家だ。
あたかもそこに存在し続ける自然のようでもあり、
自由にカスタマイズできる建築のようでもある。
何でもかんでも用意された「いたれりつくせりな建築」はどこか息苦しい。
ジャングルジムには遊具としての強度が保たれたまま、別の用途にも変化する可能性が内包されている。そんな建築をつくれないだろうかと考えている。
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以下、建築家によるテキストです。
ジャングルジムは遊具だが、山であり、展望台であり、小さな家だ。
あたかもそこに存在し続ける自然のようでもあり、
自由にカスタマイズできる建築のようでもある。
何でもかんでも用意された「いたれりつくせりな建築」はどこか息苦しい。
ジャングルジムには遊具としての強度が保たれたまま、別の用途にも変化する可能性が内包されている。そんな建築をつくれないだろうかと考えている。
海沿いに建つカフェ。
客席から海が見える事、内部に大きな木を植える事が要望の計画で、
カフェという用途を超えて、まちの人々が集まる場所をつくる為に、
何を受け入れても変わることのない強度を持つ建築を考えた。
自然の中で食事を楽しめるようにガラスで開放感を持たせ、植栽で内外が連続する空間を実現し、小さなスケールが落ち着いた居場所をつくりだしていて、眼前に広がる海の景色を眺めながらコーヒーや即時を楽しむことができる、この場所ならではのカフェになっている。
4枚のスラブは周辺環境や客席の作り方、樹木の高さとの関係で導かれた高さとしている。
堤防の向こうの海を臨むため、人の屋根、樹木の屋根など、複数のスラブを重ねて
沢山のスケールの居場所をつくっている。
内部空間は外部に近づくほど天井が下がり、外部から遠くなるほど天井が上がる。
内外が移動とともにあべこべになり、スラブの重なりがつくる、自然と人工のあいだ、内部と外部のあいだなど、様々なスケールの「あいだ」が、グラデーショナルな環境をつくりだしている。
雨風をしのぐスラブとそれを支える柱のみのシンプルなテーブル状のストラクチャーは
それぞれが独立した構成になっていて、スラブと柱は内外の境界とは無関係につくられる。
つまり建築の機能が構造に依存せず、内外の境界の位置を自由に設定することができるのである。設備も持ち上げられたスラブ下にまとめられているので、隠ぺいされているものはなく
自由にメンテや更新ができる。
少ないマテリアルとシンプルなスケールの操作だけで豊かな空間をつくりだすことを目指した。
カフェでありながら、美術館や美容室、住宅にも転用できるような構成で、
使い手の生活の可能性を押し広げ、何を受け入れても変わることのない空間の強度を持ち、
設備や構造からも解放された、強度と自由という可能性を形にした建築である。
■建築概要
宇品のカフェ
所在地:広島県広島市南区宇品西
構造規模:RC造 平屋建
用途:飲食店
敷地面積:273.05㎡
建築面積:76.53㎡
延べ面積:55.79㎡
竣工:2020年1月
設計監理:IGArchitects 五十嵐理人
施工:橋本建設株式会社 藤林浩二
構造:EQSD一級建築士事務所 三崎洋輔
設備:ZO設計室一級建築士事務所 伊藤教子
照明:株式会社モデュレックス 長尾 懐里
厨房:株式会社マルゼン 細田廣宣
外構:SOLSO 板垣雄太
写真:矢野紀行写真事務所