SHARE noizの豊田啓介が、デザイン評論家の藤崎圭一郎のツイートを契機に語った、二項対立の注意点と学生が経験と実践すべきこと
noizの豊田啓介が、デザイン評論家で東京藝術大学美術学部デザイン科教授の藤崎圭一郎のツイートを契機にtwitterで語った、二項対立の注意点と学生が経験と実践すべきことをまとめました。
二項対立は非常に有効な思考の枠組みだが、次元の違うものをまるでシンメトリカルに見せてしまうという欠陥がある。「左と右」と「有と無」は根本的に違う。「成功と失敗」と「プロセスと成果」も違う。有と無に中庸は存在しない。プロセスと成果は因果関係でシンメトリカルな関係ではない。
— 藤崎圭一郎 (@fujisaki_k) May 7, 2020
ある概念を引き立てるために、恣意的に利用される二項対立には注意する必要がある。
たとえば正義と悪。正義を浮き立たせるために、今まで人間と共存してきた悪までを社会から排除する。
人工と自然。人工の特異性を語るために、ヒトが自然の一部であることを忘れさせてしまう。— 藤崎圭一郎 (@fujisaki_k) May 7, 2020
↓ ほんとその通り。議論が大きくなって理解の共有が難しくなればなるほど、一瞬いろいろ整理されてわかりやすい二項対立の図式に落とし込んで気持ちよくしてくれる系の話には注意しないといけない。単純化して考えられることは大事だけれど、軸は他にいくらでもあるし多様な混ざり具合こそが価値。
— 豊田啓介(ゆるふわ系)総研 (@toyoda_noiz) May 7, 2020
特に学生のうちは、二項対立で魔法のように整理する系の議論にあまり惑わされないように。それも必要な技術であり視点なんだけど、あくまでより多様な考察への入り口でしかないし、その図式だけにすげえと恐れ入ってしまうのはカルトに引っかかるのと同じ。きっと大事な視点たくさん漏れ落ちてる。
— 豊田啓介(ゆるふわ系)総研 (@toyoda_noiz) May 7, 2020
そういう恣意的に単純化された議論を参照しつつ、それ以外の評価軸や二項対立の間にあるビビッドな事象を拾い出す能力を身につけるために、論文で一次情報を集めて分析して論理的にまとめる経験を最後までしっかりやること、リサーチベースで論を組み立てて設計で最後まで形に落とし込む経験が重要。
— 豊田啓介(ゆるふわ系)総研 (@toyoda_noiz) May 7, 2020
結論としての大きな図式とか対立項を本とかから引いてくるだけではそういう能力身につかない。自分で手を動かせと皆が言うのはそこ。自分の手と目と頭で調べて分析して形に落とし込んで伝えるパッケージまでを実装する、これを繰り返すことでしか人の論や設計を間や背景まで読める能力身につかない。
— 豊田啓介(ゆるふわ系)総研 (@toyoda_noiz) May 7, 2020
借り物の議論で分かった風になると、プライドばかり大きくなって手が動かなくなる。それでごまかせるのは周囲もまだ幼稚なうち、すぐに伸び悩む。自分の眼力、脳力、手力を育ててその間のコーディネーションの感覚を育てることが大事。
— 豊田啓介(ゆるふわ系)総研 (@toyoda_noiz) May 7, 2020
そうして出てきた感覚を、先達の経路や議論と比較するために本がある。本が本当に生きるのは、自分の中に新しい筋力や解像度、それらのコーディネーションの感覚が育った時に、それを比較評価する必要が生まれた時。そのためには何かをとにかく掘り下げてみること。
— 豊田啓介(ゆるふわ系)総研 (@toyoda_noiz) May 7, 2020