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2026.2.23Mon
2026.2.22Sun
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施
photo©福田駿

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architecture|feature
メグロ建築研究所佐藤秀山口紗由平井充清水構造計画福田駿建材(外装・床)建材(外装・壁)建材(外装・屋根)建材(外装・建具)建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・天井)建材(内装・照明)建材(内装・キッチン)建材(内装・造作家具)建材(内装・浴室)図面あり集合住宅リノベーション東京
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施外観、南庭より見る。 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施エントランスにつながるポーチ photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、ロビー photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、リビングから開口部越しに南庭を見る。 photo©福田駿

平井充+山口紗由 / メグロ建築研究所が設計した、東京都の「Hタウンハウス保存改修プロジェクト」です。
タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画です。建築家は、“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施しました。

保存改修プロジェクトでは、毎回何をどう残すのかが問われる。
改変があっても建築が残れば保存かといえば、デザインの変更の割合が大きければ保存とは言えなくなるし、材料の変更の割合が大きくなればレプリカと呼ばれたりする。材料の成分にも、時代背景による固有性があるため保存の対象となるからだ。

しかし、建築の時を止める凍結保存ではなく、リビング・ヘリテージとして継承していく場合、現代の生活に慣れてしまった私たちには不具合もあるし、昔と異なる設備をそのまま使うことも難しい。これからも使い続けていくためには、機能しないものや傷んだものはアップデートしなければならない。

建築家によるテキストより

今回は、F.L.ライトのタリアセンやミノル・ヤマサキ事務所で研鑽を積んだ建築家一ノ宮賢治が帰国後間もなく設計し、1969年に建てられた賃貸集合住宅の保存改修プロジェクトだ。
現在の高さ規制ができる前に建てられたため、建物を北側に寄せた配置による広い緑豊かな南庭は、地域にゆとりと潤いをもたらしている。原設計者が敷地内にあった3本の大きな松とその根を避けた平面計画としたことにより、今でも地域の風景を形成している。

また、3階にはシャルロット・ペリアン夫妻が住んでいたため、3階のインテリアデザインをペリアンが手がけていた。
今回のプロジェクトは、所有者の代替わりを契機に、原設計の魅力の再生と緑豊かな環境を継承し、再び半世紀使い続けていきたいという意志のもとに始まった。

建築家によるテキストより

設計ではまず、原設計者へのヒアリングと原設計図に基づきオリジナルと増築部、改修部を調査した。
その結果、間取りが大きく変更され、1階と屋上に増築がされていた。スチールサッシも腐食やアルミサッシへの交換がみられた。特に外壁は、浸水により分厚い外壁防水が塗装され美観を損ねていた。

内部では、エントランス共有部と造作家具の一部、ペリアンがデザインした建具が竣工時のまま残っていた。
そこで僕らは、このプロジェクトで「A.最低限のメンテナンス、B.今後50年を使用することを見据えた機能的改善、C.グレードアップを目的としたリノベ」という3つの方針を部位ごとに設定した。
例えば、室内のエントランス共有部とペリアンがデザインした建具はA、屋上と外壁は外的環境に晒されるためB、各住戸内はCに相当し、現代のニーズに合わせた間取りに変更して設備の更新をしている。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施外観、南側の道路より見る。 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施外観、南庭より見る。 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施エントランスにつながるポーチ photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、ロビー photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、リビングから開口部越しに南庭を見る。 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、リビングから開口部越しに南庭を見る。 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、リビング、サッシ廻りの詳細 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、ダイニング photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、ダイニングキッチン photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、寝室1 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、洗面脱衣室WC1 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施2階、リビングから開口部越しにバルコニーを見る。 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施2階、ダイニング photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施3階、階段ホール(建具は、シャルロット・ペリアンのデザイン) photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施3階、階段ホール(建具は、シャルロット・ペリアンのデザイン) photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施3階、リビング photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施3階、ダイニング photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施3階、主寝室 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施3階、寝室1 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施屋上 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階、南庭からテラスを見る。夕景 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施外観、南庭より見る。夕景 photo©福田駿
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施地下1階平面図 image©メグロ建築研究所
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施1階平面図 image©メグロ建築研究所
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施2階平面図 image©メグロ建築研究所
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施3階平面図 image©メグロ建築研究所
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施屋上平面図 image©メグロ建築研究所
メグロ建築研究所による、東京の「Hタウンハウス保存改修」。タリアセンで学んだ建築家“一ノ宮賢治”の集合住宅を対象とした計画。“リビング・ヘリテージ”として継承する為、部位毎に“メンテナンス・機能的改善・グレードアップ”の3方針から選択して対処する改修を実施改修前の様子 photo©メグロ建築研究所

以下、建築家によるテキストです。


継承していくための手入れ

保存改修プロジェクトでは、毎回何をどう残すのかが問われる。
改変があっても建築が残れば保存かといえば、デザインの変更の割合が大きければ保存とは言えなくなるし、材料の変更の割合が大きくなればレプリカと呼ばれたりする。材料の成分にも、時代背景による固有性があるため保存の対象となるからだ。

しかし、建築の時を止める凍結保存ではなく、リビング・ヘリテージとして継承していく場合、現代の生活に慣れてしまった私たちには不具合もあるし、昔と異なる設備をそのまま使うことも難しい。これからも使い続けていくためには、機能しないものや傷んだものはアップデートしなければならない。

今回は、F.L.ライトのタリアセンやミノル・ヤマサキ事務所で研鑽を積んだ建築家一ノ宮賢治が帰国後間もなく設計し、1969年に建てられた賃貸集合住宅の保存改修プロジェクトだ。
現在の高さ規制ができる前に建てられたため、建物を北側に寄せた配置による広い緑豊かな南庭は、地域にゆとりと潤いをもたらしている。原設計者が敷地内にあった3本の大きな松とその根を避けた平面計画としたことにより、今でも地域の風景を形成している。

また、3階にはシャルロット・ペリアン夫妻が住んでいたため、3階のインテリアデザインをペリアンが手がけていた。
今回のプロジェクトは、所有者の代替わりを契機に、原設計の魅力の再生と緑豊かな環境を継承し、再び半世紀使い続けていきたいという意志のもとに始まった。

設計ではまず、原設計者へのヒアリングと原設計図に基づきオリジナルと増築部、改修部を調査した。
その結果、間取りが大きく変更され、1階と屋上に増築がされていた。スチールサッシも腐食やアルミサッシへの交換がみられた。特に外壁は、浸水により分厚い外壁防水が塗装され美観を損ねていた。

内部では、エントランス共有部と造作家具の一部、ペリアンがデザインした建具が竣工時のまま残っていた。
そこで僕らは、このプロジェクトで「A.最低限のメンテナンス、B.今後50年を使用することを見据えた機能的改善、C.グレードアップを目的としたリノベ」という3つの方針を部位ごとに設定した。
例えば、室内のエントランス共有部とペリアンがデザインした建具はA、屋上と外壁は外的環境に晒されるためB、各住戸内はCに相当し、現代のニーズに合わせた間取りに変更して設備の更新をしている。

この改修で分かりやすい箇所は、外観の印象を左右していた屋上の増築部の撤去と、架空電線の地中化、耐震補強壁だろう。しかし、特に重要なのは外部環境で躯体を水の侵入から守ることだ。外壁のタイル面とボーダー部の左官では、漏水があったため、後から分厚い防水塗膜が施されていたが、その塗膜も劣化して浮きが目立っていた。ここは機能的改善が必要な部分であるため、タイル面の防水塗膜を剥離して新たな壁面防水を施した。

ただし、左官部では、防水層を剥離すると左官ごと剥がれてしまうことがわかった。この左官は、メサライト混合モルタルを小叩した赤みのあるものだったが、パラペットの笠木部分も同じ仕上げのため、浸水を防げないと判断した。そこで剥離の激しい箇所以外は撤去せず、骨材入りのアクリル樹脂系の石調仕上げを上塗りすることでオリジナルの素材を残置した。ここは似て非なるものを避けるため同じ色調を避け、煙突や駐車場のコンクリート仕上げに合わせてグレー色として全体的な連続性をつくった。

また1階のスチールサッシ廻りでは、CT鋼の腐食部をカットして新たに同断面部材を溶接補修し、水捌けの悪さの原因となっていたテラスを作り替えて水の逃げ道を作っている。さらにスチールサッシと木製フローリングの間を黒御影石のボーダーで見切り、結露対策としている。サッシは、アルミとスチールが混在しており、スチールが黒色に塗られていたためシルバー色に再塗装して、サッシ全体をアルミに合わせて統一した。断熱性能に課題を残したが、これは今後に改善していきたい。

建築保存の対象は、建築家が設計したものから古民家のようなアノニマスな価値を持つものまである。都市ストックの対象となるビルや倉庫などは、継承には違いないが「保存」というより「活用」の部類に入る。

保存には、何かしらの文化的価値を継承していく行為が含まれている。保存改修においては、その価値をどこに見出し、どのように残すかが問われる。文化財であれば、時を巻き戻す「復原」も選択肢となるが、そうでない場合に復原が求められることはほぼない。

とはいえ、文化財に指定されてなければ文化的価値がないわけでない。むしろ、文化財に指定されていない文化的価値を持つ多くの建築たちが、日々の暮らしにおける建築文化を構成しているといってよい。

また、文化財指定をゴールだと思っていても、増え続ける文化財の修繕に回す予算もいずれ厳しくなるだろう。
そうした建築を自立した体制で、丁寧に手入れしながら継承していくことによってこそ、私たちの生活空間に時間的な奥行きが生まれて、より豊かなものになるはずだ。

■建築概要

所在地:東京都
主用途:共同住宅
原設計:一ノ宮賢治
改修設計:メグロ建築研究所 担当/平井充、山口紗由
原施工:大明建設
改修施工:佐藤秀 担当/望月雅也
構造設計(耐震補強):清水構造計画 担当/清水靖真
構造:RC造
階数:地下1階、地上3階
敷地面積:710.12㎡
建築面積:403.15㎡
延床面積:803.89㎡
設計:1期工事 / 2022年11月~2023年4月(外部・1階・3階)
   2期工事 / 2024年7月~2024年9月(2階)
工事:1期工事 / 2023年5月~2024年4月(外部・1階・3階)
   2期工事 / 2024年10月~2025年1月(2階)
写真:福田駿

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
外装・屋根屋根

ウレタン防水

外装・床テラス 床

鉄平石乱張り(名古屋モザイク)

外装・床バルコニー 床

ウレタン防水の上タイル張り(TAJIMA)

外装・床屋上 床

ウレタン防水の上ウッドデッキ(TAJIMA)

外装・壁外壁

タイル面外壁防水:クリアウォール(東亜合成)
左官部:高級自然石調進型装飾仕上塗材(エスケー化研)

外装・建具開口部

アルミサッシ(YKK)
スチール建具 [制作]

内装・床主要箇所 床

オーク複層フローリング(オスモ&エーデル)

内装・床ダイニングキッチン 床

オーク複層フローリング(オスモ&エーデル)
塩ビタイル(TAJIMA)

内装・床洗面脱衣室WC、ゲストWC 床

タイル貼り(名古屋モザイク)

内装・壁主要箇所 壁

PB クロス貼り(TOLI)
耐震補強壁RC打ち放し

内装・壁3階階段ホール 壁

AEP塗装

内装・壁洗面脱衣室WC、ゲストWC 壁

タイル貼り(名古屋モザイク)

内装・天井主要箇所 天井

PB クロス貼り(TOLI)

内装・キッチンキッチン

厨房機器(リビングプロダクト)
キッチン天板:ノリータ クォーツサイルストーン(ABC商会)
混合水栓:ミンタJPK61802(グローエ)
ガスコンロ:HG60841X-CG(AEG)
食洗機:G7104C Sciステンレス(ミーレ)
レンジフード:FEDL-952S(アリアフィーナ)

内装・浴室浴室

ユニットバス(タカラスタンダード)
ユニットシャワー(タカラスタンダード)

内装・水廻り洗面脱衣室WC

洗面手洗器(ミラタップ)
三面鏡 [制作]

内装・水廻り便器

ネオレスト(TOTO)

内装・造作家具造作家具

タモ材 CL [制作]

内装・照明照明

LEDダウンライト(パナソニック)
LED間接照明(パナソニック)
ペンダント照明(ハーマンミラー)

※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません

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2026.02.23 Mon 07:30
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    9. スノヘッタによる、サウジアラビアの「カスール・アル・ホクム地下鉄駅」。新たな地下鉄網の主要ハブのひとつ。焦点としての機能に加えて内外を視覚的に繋げる為、鏡面のステンレスパネルで覆われたキャノピーを中央に据える計画を考案。テラゾー仕上げの広場は開かれた公共空間として機能
    10. ドナルド・ジャッドを読み解く「ジャッド|マーファ 展」がワタリウム美術館で開催。入場チケットをプレゼント。空間に対するジャッドの哲学と実践を、初期の絵画作品や60年代から90年代に制作された立体作品を通して紹介。ドローイング・図面・写真なども展示
    11. ファラによる、ポルトガル・ポルトの住宅改修「house of remarks」。線と面で構成されたプロジェクト。既存建物の“別の視点での読み替え”を求め、いったん分解して“異なるシステムでの再構成”を実施。“新たな構造体”は意図的に空間をかく乱して“空間に能動的な参加”する
    12. オンデザインの内装設計による、東京・港区の「LiSH Studio1」。インキュベーション施設の計画。出会いの創出を目指し、人々が常に“移動”と“滞留”をする空間を志向。垂れ壁・腰壁・天井の設えで動線と領域を作り出すと共に公から私へと段階的に連続するエリア構成とする
    13. 生沼広之建築設計事務所による、東京の「中野の住宅」。住宅密集地に建つ設計者の自邸。厳しい条件下で“庭に向けた大きな窓”の実現を目指し、開口と前面道路との間に“空中を迂回する線形テラス”を設ける構成を考案。都市との緩衝帯になると共に風景に煌めきも与える
    14. 松葉邦彦 / TYRANTによる、東京・八王子市の飲食店「LANTANA」。台形を歪ませた様な“不整形な区画”での計画。機能を超えた“新たな価値観”の発見を求め、どの辺とも平行ではない“わずかな歪み”を持つカウンターを中央に配置。床のピンクは店名である中南米の花の色から着想
    15. 下田仁+下田恭子 / 下田設計による、群馬・伊勢崎市の自邸「川のほとりに立つ白い塔の家」
    16. 黒川紀章の“中銀カプセルタワー”をテーマとしたMoMAでの展覧会の会場写真。同建築の50年間の寿命に捧げる展示。タイトルは「中銀カプセルタワーの多様な人生」
    17. ファンションデザイナーのマルタン・マルジェラについてのドキュメンタリー「We Margiela マルジェラと私たち」が無料公開(日本語字幕付)
    18. MADによる、中国の「麗水空港」。谷地を大規模造成して建設。周囲の景観から直接的な着想を得て、地形と一体化して山々の中に佇む“白い鳥”の様な建築を考案。交通拠点であると共に日常と繋がる市民的で心理的な転換の場にもなる空間も志向
    19. 遠藤克彦建築研究所・waiwai共同企業体が、長野の「上伊那総合技術新校(仮称)」プロポで最適候補者に選定。提案書とプレゼン動画も公開。二次審査には、千葉学建築計画事務所、シムサ・キッタン・アンド・ウエストJV、わたしもそうJVが名を連ねる
    20. フォスター+パートナーズによる、ニューヨークの「270パーク・アベニュー」を紹介する動画。ノーマン・フォスターのコメントも収録。公式動画として2026年4月に公開されたもの

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