
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.012 i+i 設計事務所「代沢K邸」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
i+i 設計事務所「代沢K邸」
飯塚豊さんが主宰するi+i設計事務所による都内の住宅を拝見した。
飯塚さんは『新米建築士の教科書』などのベストセラー書籍も執筆していて、お世話になっている若い設計者も多いのではないだろうか。
そんな飯塚さんたちが手掛けた住宅を拝見するのは、今回で二件目。現地で手渡された資料を拝見すると、長期優良住宅、省令準耐火仕様、東京ゼロエミ住宅という記載があり、断熱材の仕様も丁寧に記載されている。
実際に家の中に入ると、じんわりと暖かくて性能の高さを感じる。
隣地側と出来るだけ距離を取るようにと、段々とセットバックさせた外観が面白い。このセットバックは、内部でも効果を発揮していて、2階に上がって開口部側を見てみると、外部との間に複数のレイヤーが生まれていて、距離感が適切にコントロールされると共に視覚的な豊かさも感じた。
内部空間は、間延びしておらず、開放的すぎてもいない、ちょうど良い寸法感。そして、一体感のある空間の中に居場所的な空間が散りばめられている。
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現地で飯塚さんと少し雑談したのだけれど、その内容も興味深かった。「飯塚さんは自身を建築界においてどのように自認してますか?」という質問への飯塚さんの答えは「オールラウンダーじゃないかな」とのこと。
様々な観点で建築を作り上げる姿勢は確かにオールラウンダーだと思った。
そして、「ただ最近は何かに特化している見せ方も必要かなとも考えている」と続けて語ってくれた。
確かにブランディングなどを考えたときに特化することは間違いなく一つの戦略であり、特に東京などの人口ヴォリュームが多い都市で活動するときには特に有効だとも思う。
ただ、建築というパラメーターが多数ある創作分野においては、オールラウンダー的なスタンスで作り上げられる住宅だからこそ住み手に与えられる満足感もあるのではないかと思った。そしてそのような満足感を与える仕事が、建築界にポジティブに寄与していることも多々あるのだろうなと思った。
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建築家という存在をポジティブなものとして社会に認知してもらう為には、色々な手段があると思う。
飯塚さんたちの実践は、目の前のクライアントの満足感を向上させることを積み重ねて、建築家という存在がポジティブに認知される未来を切り開く地道で着実な活動、とも言えると思った。それは、本当に素晴らしいこと。
お施主さん、飯塚さん、i+iの皆さん、ご竣工おめでとうございます!
(訪問日:2026年3月7日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。




