SHARE 島田陽 / タトアーキテクツによる”比叡平の住居”
photo©Satoshi Shigeta
島田陽 / タトアーキテクツが設計した滋賀県大津市の”比叡平の住居”です。
photo©Satoshi Shigeta
photo©Yousuke Takeda
photo©Yousuke Takeda
以下、建築家によるテキストです。
京都と滋賀の境、比叡山の麓に建つ住宅である。
美術作家である男性のアトリエとその家族の住まい、将来親と同居するためのスペースを求められた。条例で勾配屋根が義務づけられた周辺の住宅地は切妻型の屋根が建ち並び、落ち着いた街並みをつくりだしているように思えたので、僕らもそれに倣いつつ、住宅地と山林の境にある敷地にふさわしい建ち方を探した。
全てのプログラムをまとめると、この住宅地には大きすぎ、アトリエは音や匂いも出るとのことだったので、まず夫妻の住まいとアトリエは分棟とすることとした。アーティストである住人は、ありきたりのものを複製して作品を作っており、そこからインスピレーションを得て、両親のスペースも独立した小屋として扱って相似形の小屋を3つ並べてつくることとした。
予算は極端に少なかったので、アトリエは高圧木毛セメント板を構造/断熱/防火を兼ねて構造体に貼付け、それをポリカーボネイト波板で覆うだけの簡素なつくりとしている。
地中に深夜電力使用の蓄熱体を埋めて基礎から暖める形式を採り、床は基礎コンクリート現しとし、壁/屋根も構造体現しとしてアーティスト自身による更新を行いやすくしている。
住棟はアトリエと同じく基礎蓄熱型床暖房を最大限に活用する為、基礎の上にモルタル仕上げのみの簡素な仕上げ、壁は全てラワン合板貼りとし、一部を施主自身が白く塗り上げた。
また、住棟は窓の位置や大きさをコントロールして慣習的な小屋のプロポーションとすることにより、実際より小さく見え、窓辺に人が立つとスケール感が惑わされる。
住棟の2階の要求面積は少なかったが、ある程度の独立性を求められていた。壁をまっすぐに立ち上げると、窮屈な2階と大きすぎる吹抜けが出来てしまう。傾いた壁により空間を斜めに分割することで、「丘のような床」と「屋根のような天井」が立ち現れ、大きな小屋型の中に更に小さな小屋型を組み合わせるような新しい形式が生まれた。
小屋型は強い形式で、内部と外部が一致していると認識されやすい。通常は完結している小屋型の外に更に小屋型が組み合わされていることにより、結晶のように単純で多様な、どこまでも空間が続いていくような空間をつくり出せないかと考えた。
■建築概要
建物名:比叡平の住居
所在:滋賀県大津市
用途:住居+アトリエ
設計:タトアーキテクツ / 島田陽建築設計事務所(担当/島田陽,白須寛規)
構造設計:株式会社 エス・キューブ・アソシエイツ
施工:株式会社 高橋工務店(担当/内田誠二)
竣工:2010年4月構造
規模:木造
敷地面積:490.00㎡
建築面積:116.01㎡
延床面積:186.14㎡ (1階/116.01㎡ 2階/73.13㎡)