SHARE 佐藤伸也+木村慎弥による、大阪の「小阪の保育園」
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佐藤伸也 / 佐藤伸也建築設計事務所+木村慎弥 / kimura shinya architectureが設計した、大阪の「小阪の保育園」です。
大阪府東部の近鉄河内小阪駅から徒歩数分にある保育園である。コンビニや居酒屋、中華料理屋、マンション、住宅などが建ち並び、周辺には大学もあるような、高齢者から大学生、子育て世帯の家族など、多様で多彩なキャラクターの人たちが溢れるまちに建っている。
保育園は管理や運営の観点から、どうしてもまちから閉ざされてしまいやすい。今回のように多種多様な建物が建ち、たくさんの人たちが行き交うまちでは、なおさらその傾向は強くなることが多いだろう。保育園がまちなかに建つことの意味に向き合いながら、こどもを守るために閉じているけれど、まちにはこどもたちが楽しく過ごしている気配をうまく開くことができないだろうか。
そこで、「まちとの関係性」「内部空間」「仕上げ」というスケールの異なる3つの観点で工夫を試みた。
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以下、建築家によるテキストです。
「小阪の保育園」
大阪府東部の近鉄河内小阪駅から徒歩数分にある保育園である。コンビニや居酒屋、中華料理屋、マンション、住宅などが建ち並び、周辺には大学もあるような、高齢者から大学生、子育て世帯の家族など、多様で多彩なキャラクターの人たちが溢れるまちに建っている。
保育園は管理や運営の観点から、どうしてもまちから閉ざされてしまいやすい。今回のように多種多様な建物が建ち、たくさんの人たちが行き交うまちでは、なおさらその傾向は強くなることが多いだろう。保育園がまちなかに建つことの意味に向き合いながら、こどもを守るために閉じているけれど、まちにはこどもたちが楽しく過ごしている気配をうまく開くことができないだろうか。
そこで、「まちとの関係性」「内部空間」「仕上げ」というスケールの異なる3つの観点で工夫を試みた。
□開きつつ閉じる、まちとのインターフェイス
前面道路との関係性に注目し、ふたつの仕掛けを設けた。
ひとつめが、前面道路との距離を利用したアプローチのウッドデッキで、手すりをプランター付きとすることで、保育園にとってもまちにとっても豊かな環境となる緩衝スペースをつくりだした。
ふたつめは、前面道路との高低差を利用したファサード部分を構成する木製建具に透明な部分と半透明な部分をつくることで、レベルの低い道路からは保育園の雰囲気は伺えつつも、園児の姿ははっきりと見えないが、来訪者や保護者がウッドデッキに上がれば、内部から顔を視認できるようにした。
□まちなみのような、内部空間
内部空間は、テナント部分として用意された限られたスペースの中、こどもたちが自由に走り回ったり、遊んだりできるように保育室のスペースを正形で確保した。天井のラインは、既存躯体との干渉を避けつつ、天井高をできる限り確保した勾配天井が連続する形状とした。勾配に変化をつけることでリズミカルかつ濃淡のある空間となっている。さらには、まるで家が建ち並ぶように緩やかに分節され、居心地の良い場所を選びとりながら過ごすことができる空間になった。
□多様で多彩な、仕上げ
天井の勾配に合わせて壁仕上げの色を切り替えたり、フローリングのナラをはじめ、造作家具のタモや枠のツガ、建具のスプルース、シナ、ウッドデッキのセランガンバツなど、様々な色味や表情の木材を各所に用いたりすることで、木のぬくもりを感じることのできる、あたたかみのある空間とすると同時に、多様で多彩なまちの雰囲気との親和性を高めた。
□「まちに馴染む保育園」をめざして
「まちから隔離」するのではなく「まちに馴染む」ように、ほどよく開かれた、安全で魅力的な環境をもつ保育園がある風景が、このまちにとっての日常となる。
これから、少しずつ時間をかけて保育園というひとつの空間を超えた、まちとの関係性が生まれるような場を醸成していくことを期待している。
■建築概要
名称:そらいろ保育園
用途:保育所
所在地:大阪府東大阪市
設計期間:2017年4月-6月
施工期間:2017年6月-8月
竣工:2017年8月
床面積:95.10㎡
設計:佐藤伸也/佐藤伸也建築設計事務所+木村慎弥/kimura shinya architecture
ロゴ・サインデザイン:廣田碧/看太郎
室内サイン製作:曽田朋子/ミミヤマミシン
照明:椋本真由子/むくもと照明設計事務所
施工:リノ
写真:三木由也
WEBSITE:
佐藤伸也建築設計事務所 http://satoshinya.com/
kimura shinya architecture http://kimurashinya.com/