秀田佑美+秀田和則 / 秀田建築設計事務所が設計した、奈良の住宅「田原本の家」です。
この家は都会から農家として農村に移住する夫婦のための住まいである。
田園風景が広がる市街化調整区域の農村で、農家住宅や倉庫がひしめきあう集落に位置し、住宅開発が進む隣町を横目に古い農村風景が今も残っている。敷地の区画は既存農家住宅の一角(使わなくなった蔵と離れを解体)を借地し、調整区域内の貴重な宅地を有効利用する手法を選択した。
東西方向に軸線を持つ配置計画を行い、南側の開けた田畑に長手方向を面することで道路から集落全体を含めたロケーションを意識した。この場所を集落の玄関口と考え、その風景に馴染み、更に新しい世代の始まりを感じさせる住宅を目指した。
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以下、建築家によるテキストです。
この家は都会から農家として農村に移住する夫婦のための住まいである。
田園風景が広がる市街化調整区域の農村で、農家住宅や倉庫がひしめきあう集落に位置し、住宅開発が進む隣町を横目に古い農村風景が今も残っている。敷地の区画は既存農家住宅の一角(使わなくなった蔵と離れを解体)を借地し、調整区域内の貴重な宅地を有効利用する手法を選択した。
東西方向に軸線を持つ配置計画を行い、南側の開けた田畑に長手方向を面することで道路から集落全体を含めたロケーションを意識した。この場所を集落の玄関口と考え、その風景に馴染み、更に新しい世代の始まりを感じさせる住宅を目指した。
周辺の農家住宅は5寸程度の勾配屋根で多数が大屋根と下屋を持ち、それらの遠景ファサードは屋根部分が大きな面積を占める農村特有のプロポーションを群として認識できる。このような風景の中、狭小住宅でありながら、三角形フレームによる急勾配の小屋裏を持つシンプルな空間構成により、最小限の壁面積と最大限の屋根面積でファサードを構成し、周辺と馴染むプロポーションとした。
農村との親和性を高めるため、杉板下見板貼の外壁で上品な陰影をつくり、経年の色調や表情の変化を感じられる素材とした。また田園との一体感を保つために塀や生垣を排除し、田畑との境界を曖昧にした。
室内は平屋に小屋を乗せたシンプルな構造で、奥行きのある小屋裏は三角フレームで力強く連続する構造美を表した。南側から光を集めた明るい1階に対し、奥に連続する小屋裏(2階)には北側にトップライト、ハイサイドライトをちりばめ、空間の質にコントラストを持たせた。光と影による空間の秩序は、かつてここに存在した蔵の天窓から注がれる光が、歴史を刻んだ小屋組みを浮かび上がらせ生まれる空間を引き継いだ。
■建築概要
設計:秀田建築設計事務所
施工:山田工務店
用途:専用住宅(農家住宅)
所在地:奈良県磯城郡田原本町
構造:木造
規模:地上2階
延床面積:80.97㎡
竣工:2018年4月
写真:秀田建築設計事務所