松本光索が設計し一部施工も手掛けた、東京・港区の「素材、表層、用途なしの空間」です。
港区白金にある元理髪店であった小さな店舗空間のリノベーション。 空間自体はアパレルショップのショールームとして年に数回使われることが決まっているだけで、 施主からの要望は全く何もなかった。 それに加えて、既存空間は壁、天井が石膏ボード、床が長尺シート。この用途も特徴もない空間に何かを見出すべく、現場に滞在しながら設計を進めた。
滞在して気づいたことは、目の前の道路は一見寂れた商店街の一部であるように感じるが、その周辺に大きな企業ビルや大使館があることもあり、昼夜を問わず人通りが常にあること。しかし、 室内はどこか仄暗く、洞窟のような雰囲気を持った空間であるということだった。 完成後の建築は、限られた人が利用する空間であることを考えると、現場で感じた閉じた空間の性質をポジティブに拡張し、洞窟のように自然で、用途のない、ただ空間がある状態を生み出せないかという思いに至った。