平井充+山口紗由 / メグロ建築研究所が設計した、東京の、清家清設計の主屋と難波俊作設計の離れをつなぐ渡廊「代々木の渡廊」です。
これは2坪に満たない木造の小さな渡廊である。
街並みを見下ろす閑静な高台に、清家清氏によるRC造の主屋(1970)と、デザインシステムの難波俊作氏によるS造の離れ家(1988)が並んで建っている。主屋は、RC打放しとソリッドな煉瓦積み壁が特徴で、眺望の良い景色を捉えた巨大な嵌め殺しの水平窓と船舶専用の丸窓が穿たれている。それ対して離れ家は、嵌め殺しの水平窓と2階分の壁面を突き抜けた軽快なブレースが印象的だ。それぞれは、構造の特徴を外観の表現としており、壁面のスクリーンに街並みが映り込む内部を含めて極めて質の高いモダニズム建築である。
このプロジェクトは、高齢であるクライアントから主屋と離れ家を繋ぐ渡り廊下を作って欲しいという要望を実現することだった。敷地と道路の高低差は4m、資材の搬入経路は幅80㎝の階段しかなかった。雨風を防げれば良いという話であったので、私たちは職人が2人程度で運べる小さな部材で組み上げられる簡素なものが良いと考えた。
文化的価値のある建築の保存改修の方法には、既存部分と新しい部分の違いを明確にしなければならないという考え方がある。さらに、オーセンティシティやインテグリティといった考え方は、使い続ける建築にとって難しい問題であり、その都度の個別解となる。今回の既存建築のアイデンティティは、全体に纏う構造素材によるデザインの完一性が外観に現れていることが重要であり、これを増築部によって曖昧に延伸させることは避けなければならなかった。そのため、増築部は既存の2棟と異なる構造素材で、透明な木造建築が相応しいと考えた。