STA土屋辰之助アトリエが設計した、東京・港区の住宅「House MA」です。
典型的な東京の山の手である「麻布」は起伏に富んだ地形で構成されている。古川の流れによってつくられた台地と谷地、その支流により襞のように入り組んだ地形によりいくつものエリアが多様に存在している。敷地は有栖川記念公園の近く、大使館も多く、インターナショナルな雰囲気と緑豊かな自然に包まれている。
一方で、高台住宅地としてのスケール感を維持しているエリアでもあり、その双方の性質を引き受ける、町と緑に対して開放的かつ連続的な住空間を目指した。
また、クライアントは住宅建材・設備機器メーカーに勤務していることもあり、この住宅もそのメーカーの製品を中心に構成されている。いわゆる「既製品」を使って建築家作品をどこまで追究可能であるかも設計の重要なテーマであった。
新建材と住宅建築の歴史は日本の住宅を語る上で欠かせない。特に戦後、東京オリンピックを契機に発展を遂げたユニット製品、工業製品としての建材は新築=大量生産のフェーズから改修=選択のフェーズへと既に変容している。
この住宅においても建材の付加価値を含めた機能、意匠や質感、施工性を評価しつつ採用可能な製品を取捨選択した。結果、かなりの部分を既製品で構成することができた。更には、メーカーの想定している標準的な納まりや簡易な施工方法の中だけで設えるのではなく、周辺の「手づくり」の部分と組み合わせることでお互いの価値を高められていると考える。