



生沼広之建築設計事務所が設計した、東京の「中野の住宅」です。
住宅密集地に建つ設計者の自邸です。建築家は、厳しい条件下で“庭に向けた大きな窓”の実現を目指し、開口と前面道路との間に“空中を迂回する線形テラス”を設ける構成を考案しました。そして、都市との緩衝帯になると共に風景に煌めきも与えます。
庭へ向けて明るく大きな窓のついた家が欲しい。この月並みな想いから自邸の計画は始まった。
しかし敷地は住戸間の見合いが起こる東京の住宅密集地であり、敷地奥に建物を大きく開くことは現実的に難しい。
そのため前面道路に向かって生活空間を開き庭を配置する方針としたが、道路は敷地の北側に位置しており、北向きの窓だけで明るい庭の風景をつくるには限界があった。
そこで2階の北側に大きな窓を開け、そこから日の光を求めるように道路際の空中を迂回する線形テラス「飾り庭」を伸ばしていく。飾り庭はやわらかい曲線を描きながら建物の影を逃れ、ダイニングの北側採光窓からの風景に煌めきを与え、都市と住宅の間に緩衝領域をつくる。
内部は敷地の高低差を利用したスキップフロアとし、道路側の飾り庭と敷地奥の奥庭のふたつの庭への視線の抜けを全体に発生させ、それらの庭を交互に望む一筆書きの螺旋形の動線を計画した。
さらに思い入れのある器、本、写真、植木などをこれまでの自分たちの生活の表象ととらえ、それらを飾りとして設えるための棚によって動線を包み込むことで、住宅に小さな美術館のような程よい緊張感をつくり、これからの生活を肌理細やかなものにするための意欲が醸成されていくと考えた。2階の扉から飾り庭に出て植木に水を撒くと、通りすがりの人びととの会話が発生し、子供たちが喜んでいる姿が見える。
ここでは植物も含めた「飾り」が人、住まい、そして都市の心理的な繋がりを生み、個人住宅が都市に対して開かれた公器としてのふるまいを見せる。

