



OSTR / 太田翔+武井良祐、礒谷哲也が設計した、東京の住戸改修「小茂根の家」です。
数年前にリフォーム済の空間を対象とした計画です。建築家は、既存の“ピカピカ”と創出する“新しい環境”の重なりを意図し、元玄関を約6倍に拡張した“中庭”を中央に据える構成を考案しました。そして、全ての部屋と隣接して多様な役割を担います。
初めて現地を訪れた際、築年数の経ったマンションの一室は、2年ほど前にリフォームされており、まるで新築のようにピカピカで、すぐにでも住める状態だった。
施主は南北の両面に抜けるバルコニーからの眺めを気に入り、ここに新たな住まいをつくることを決意した。しかし改修計画を始めようとすると、内装や設備があまりにも新しく、どこから手を加えるべきか判断に迷った。
できるだけ単純な方法で、この既存の“ピカピカ”とこれから生まれる“新しい環境”とを重ね合わせられないかと考えた。そこで部屋の中央に大きな中庭を設けることにした。中庭といっても、既存玄関のスケールを約6倍に拡張し、土間とも玄関とも中庭ともいえる曖昧な場とした。
この中庭はLDK・個室・水回りのほぼすべてに隣接し、施主は常に住まいの中心である中庭と関わりながら生活する。建具を開け放つと南北のバルコニーが連続して一体となり、空間全体がひとつの大きなバルコニーのようにも感じられる。個室は中庭と既存バルコニーの両側に囲まれ、明るい光の中で目覚め、風呂上がりには風が通り抜ける心地よい休憩の場にもなる。
もう一つの試みは、扉を開けるたびに新しい風景が現れる状態をつくることだ。
中庭に面した部屋、改修前のまま残した部屋、かつて繋がらなかった空間同士が行き来できるようにし、収納扉を開けると働く場が現れる。このように隣室が既存なのか改修された部屋なのかが交錯し、扉を開くたびに異なる世界が次々に現れる風景を描いた。同時に既存の部屋に新たな扉を設けたことで、動線の自由度が増し、空間全体に回遊性が生まれた。全体は仕上げの質感や家具をわずかに補修・追加することでバランスを整えた。部屋の内側だけで完結させると、どうしても「マンションの一室」という閉塞感が残るため、外に広がる風景のスケールや色彩に合わせ、一室を超えた広がりを感じられるしつらえとした。




