


矢橋徹+上野拓美 / 矢橋徹建築設計事務所が設計した、熊本市の、店舗兼住宅「江津ハウス」です。
様々な景色を見渡す場に建つ週末住宅の計画です。建築家は、段階的に移住する施主の為に“変化に適応できる空間”を目指し、多彩な開口を持つ三層の“がらんどう”の建築を考案しました。また、窓の自由度を上げる為に軸組に外皮を巻く二重架構としました。
敷地は湧水公園のほとりに位置し、その湖岸道路沿いにミニ開発された住宅地の一角にある。
敷地は湖岸に沿って段上がりの地形になっているため、敷地からは隣地の庭や住宅の屋根の連なりが見渡せ、遠くにある山々なども望める。様々な距離感にある景色や方位ごとの広がりが散在している環境だ。
計画は1階をカフェとした2階建ての兼用住宅である。
施主は、この住宅を当面ウィークエンドハウスとして使いながら、徐々に暮らしを移していくことを計画していたため、生活を規定せず、変化に適応できる空間が求められた。施主は2つの住まいを持つことになる。一つは日常を守る家、もう一つは開放的なヴィラ、施主はこの二つの住宅を行き来しながら生活を拡張する。
敷地に正方形プランを置き、上階の床を対角線で分節した。床をスキップさせて地面とのパラメータを増やし、螺旋状の縦移動でつなげることで、場所ごとに様々なパースペクティブを持った3層構成とした。各フロアは最小限の機能に抑え、家具や植物で自由に場が作れる「がらんどうの空間」である。
1階の店舗エリアと上階の住居エリアは、対角線上に配置した耐力壁で断片的に仕切るだけにとどめ、2層分の開放的な空間と低い親密な空間、異なるスケールの空間が交互に連続する立体的なワンルームである。さらに、外部の豊かな環境を関係付けするため、耐震要素の軸組に、耐風・断熱・開口のための外皮が巻きついた二重架構とし、開口の自由度を上げている。