太田健裕 / 太田設計舎による、宮城・石巻市の週末住宅「山麓堂」。高齢化が進む過疎地域での計画。寄合所の様な“集える場所”との要望に、全体の半分以上を半外部空間の“大きなワンルーム”とする構成を考案。床の仕上げや二層の建具などで“柔軟”な場づくりも可能にする 外観、北東側より見る。 photo©楠瀬友将
太田健裕 / 太田設計舎による、宮城・石巻市の週末住宅「山麓堂」。高齢化が進む過疎地域での計画。寄合所の様な“集える場所”との要望に、全体の半分以上を半外部空間の“大きなワンルーム”とする構成を考案。床の仕上げや二層の建具などで“柔軟”な場づくりも可能にする 外観、東側より見る。 photo©楠瀬友将
太田健裕 / 太田設計舎による、宮城・石巻市の週末住宅「山麓堂」。高齢化が進む過疎地域での計画。寄合所の様な“集える場所”との要望に、全体の半分以上を半外部空間の“大きなワンルーム”とする構成を考案。床の仕上げや二層の建具などで“柔軟”な場づくりも可能にする 左:リビング:右:土間 photo©楠瀬友将
太田健裕 / 太田設計舎による、宮城・石巻市の週末住宅「山麓堂」。高齢化が進む過疎地域での計画。寄合所の様な“集える場所”との要望に、全体の半分以上を半外部空間の“大きなワンルーム”とする構成を考案。床の仕上げや二層の建具などで“柔軟”な場づくりも可能にする 和室からリビングを見る。 photo©楠瀬友将
太田健裕 / 太田設計舎 が設計した、宮城・石巻市の週末住宅「山麓堂」です。
高齢化が進む過疎地域での計画です。建築家は、寄合所の様な“集える場所”との要望に、全体の半分以上を半外部空間の“大きなワンルーム”とする構成を考案しました。そして、床の仕上げや二層の建具などで“柔軟”な場づくりも可能にしました。
仙台平野の水田が広がる宮城県石巻市北西部に、旭山という標高200mにも満たない小さな山があり、その周辺一帯を北村地区と呼ぶ。市街地からは数km圏内でありながらやまびこが鳴り響き、羊が放牧されている長閑な山麓に敷地がある。人口2千人程のうち65歳以上の高齢者が約4割を占め、近年周辺の家屋も空き家となっている。
建主は60代中盤のセミリタイヤした夫妻で、石巻市の中心部にある市街地に住まいをもっているが、夫の実家も空き家状態が長く続いていた。700坪ほどある土地に、母屋、倉庫、蔵、蚕小屋、風呂小屋、井戸小屋のさまざまな建物が点在しており、水捌けが悪いことからどれも土台が傷んだ状態であった。
そのままの状態で子供たちへ相続することは避けたい。農村地で抱える土地の相続問題は、管理の不便さから手放してしまうことが少なくないが、親族で思い入れもありこの先も生きる場に生まれ変わらせたいという切実な思いがあった。
将来は市街地から移住して夫婦で農作業をしながらこの家で住むことが前提だが、寄合所のように親戚や友人、近隣の皆が集える場所にしたいという。
既存利用も含めたさまざまな可能性の検証を繰り返し、最終的には農作業時に利用する井戸小屋のみを残して小さな平屋を建てることにした。屋根下の半分以上を土間や軒下の半外部空間で構成し、大きなワンルームをつくった。
地面と連なる床は、室内側からオーク材、砂色のタイル、粒子の細かい石へ素材が徐々に移り変わり、その領域をガラス引戸と格子ガラス引戸の二層の建具が領域を横断しながら緩やかに場を形成し、農作業や人が集まるときに柔軟に場をつくる。
山の稜線に沿うカーブの屋根は、光沢の天井がアクティビティや周辺環境をぼんやりと映し出し、領域を横断して環境を取り込む。その三次元曲面は、梁の角度を各スパンごとに少しずつ変える些細な操作で構成し、一般的な在来工法でローカルな職人と共につくった。