長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、群馬の和菓子店「なか又(前橋デザインプロジェクト)」です。前橋デザインプロジェクトのウェブサイトはこちら。
そもそもこの町の将来を考えた時、この縮小社会でかつての「三丁目の夕日」のような時代を懐かしみ、賑わいに満ちた商店街を取り戻そうなどと考えるのは現実的ではなく、新たな時代にふさわしい商店街のあり方を考えなければならないと思った。
その時、シャッター街化の一因である、現在郊外の多くの人が集うショッピングモールを観察し、そこでこの先、どんな不満が生まれるかを考えてみた。
すでにそれは、限りなくネットの世界と同じように予想されるものがわかりやすく存在する世界である。その予定調和なショッピングのあり方は、リアルに商品を確認できる面においては優勢だが、量やスピード、また対象地域の広さにおいてはネットにはとても叶わない。また、車社会のあり方も大きく変わっている。どこにでもナビが迷わず連れて行ってくれる上、空き地も増えているのでどこにでも駐車できる。ある意味個々のインタフェースで体験の再編集が可能な時代に、ショッピングモールの優位性がそこまで高いのかという疑問はある。予定調和な体験では満足しきれない人たちの期待の受け皿になり得る街のあり方を、大げさだが、この小さな建物を計画しながら考えようと思った。