
SHARE 高橋勝と佐野春仁による、京都・右京区の「京北森林組合木造倉庫」。森林施業の為の資材倉庫と車庫。自らが生産した木材を用いた“意味ある”存在を求め、山と木にまつわる“意識や技術の継承”を担う建築を志向。地元工務店と建築専門学校大工チームが協業する体制で造り上げる




高橋勝建築設計事務所が設計と監理、佐野春仁 / 京都建築専門学校が計画監修した、京都・右京区の「京北森林組合木造倉庫」です。
森林施業の為の資材倉庫と車庫の計画です。建築家は、施主が自らが生産した木材を用いた“意味ある”存在を求め、山と木にまつわる“意識や技術の継承”を担う建築を志向しました。そして、地元工務店と建築専門学校大工チームが協業する体制で造り上げました。
京北森林組合の森林施業の為の資材倉庫と車庫の計画である。この計画は、京北地域で生産・製材された木材を媒介とした山の価値の循環促進、また将来京北の木材を使うであろう大工の卵たちへの意識と技術の継承、京北周山地域の修景を目的とした。
京北は平安京の時代から「御杣御料地」として建築用材を送り出す地域として伝統を引き継ぎながら発展してきた。当初計画は、既存の古い軽量鉄骨とスレート葺きの車庫と同様仕様の建替え予定であったものを、林業のまちの森林組合の施設は自らが生産した木材による意味ある建築とすべきとの考えから、組合内で話し合いを重ね今回の計画を進めた。
倉庫づくりの体制としては、施工は地元の大工棟梁の工務店が請負い、大工工事のサポートとして「大工の卵たち」である京都市内の建築専門学校大工チームが木工研修として担当し、手刻みから建て方、造作工事を行っている。
建築行為は,ただ単に最高の品質や性能を求めることだけを価値基準にするのではなく,行為自体が将来の地域づくりや山と木にまつわる意識や技術を継承することに価値を見出してもよいのではないだろうか。
設計においてはチームの編成を考慮し、見つけた在庫の多種寸法に対応でき、学生大工でも比較的簡易な加工で行える「挟み梁工法」を採用している。車庫に必要な有効寸法と木材特性を考慮し主なスパンは2850mm×2000mmとした。多雪地域である事、シンプルで施工しやすい架構とするため片流れ屋根としている。この際、通し柱にできる材の最長寸法が7000mmであった事から全体の高さを決定した。
車庫や資材倉庫の入口がある西側は大きな開口が並ぶため、雨除けの庇を1700mm出している。この庇を支える方杖が間口に印象的に7本並べている。この方杖は強度、対候性も必要な重要部の為、京都ブランド杉の磨き丸太を採用した。さらに高く建ちあがった2階西壁の耐風要素としてトラス構造としている。
水平構面と耐力壁はΦ=10mmの鋼製ブレースを採用した。駐車スペースの内装制限の対応は近隣の美山地区の土を使った中塗り仕上げに,天井は木毛セメント版で仕上げとしている。
一見,伝統と現代の工法がブリコラージュされて見えるが,山の価値の循環と技術の継承という観点からは,いずれも共通して現代の法規的経済的環境に対応した切実な建築行為としての合理性を持っている。
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以下、建築家によるテキストです。
循環と継承を目的とした建築行為の価値を考える
京北森林組合の森林施業の為の資材倉庫と車庫の計画である。この計画は、京北地域で生産・製材された木材を媒介とした山の価値の循環促進、また将来京北の木材を使うであろう大工の卵たちへの意識と技術の継承、京北周山地域の修景を目的とした。
京北は平安京の時代から「御杣御料地」として建築用材を送り出す地域として伝統を引き継ぎながら発展してきた。当初計画は、既存の古い軽量鉄骨とスレート葺きの車庫と同様仕様の建替え予定であったものを、林業のまちの森林組合の施設は自らが生産した木材による意味ある建築とすべきとの考えから、組合内で話し合いを重ね今回の計画を進めた。
倉庫づくりの体制としては、施工は地元の大工棟梁の工務店が請負い、大工工事のサポートとして「大工の卵たち」である京都市内の建築専門学校大工チームが木工研修として担当し、手刻みから建て方、造作工事を行っている。
建築行為は,ただ単に最高の品質や性能を求めることだけを価値基準にするのではなく,行為自体が将来の地域づくりや山と木にまつわる意識や技術を継承することに価値を見出してもよいのではないだろうか。
(高橋勝)
伝統と現在の工法に共通する合理性
木材の供給は原木生産・乾燥・製材・仕上まで一貫生産が可能な京北森林組合が担当した。主な架構材料は組合倉庫に材料を見に行った時に発見した、木材倉庫に長く残る材を有効利用している。そこには6mを超える4寸角以上の立派な杉・ヒノキの平角が山と積み上げられていた。昨今ではプレカット装置に向かないこれらの材は在庫に残る傾向にある。
設計においてはチームの編成を考慮し、見つけた在庫の多種寸法に対応でき、学生大工でも比較的簡易な加工で行える「挟み梁工法」を採用している。車庫に必要な有効寸法と木材特性を考慮し主なスパンは2850mm×2000mmとした。多雪地域である事、シンプルで施工しやすい架構とするため片流れ屋根としている。この際、通し柱にできる材の最長寸法が7000mmであった事から全体の高さを決定した。
車庫や資材倉庫の入口がある西側は大きな開口が並ぶため、雨除けの庇を1700mm出している。この庇を支える方杖が間口に印象的に7本並べている。この方杖は強度、対候性も必要な重要部の為、京都ブランド杉の磨き丸太を採用した。さらに高く建ちあがった2階西壁の耐風要素としてトラス構造としている。
水平構面と耐力壁はΦ=10mmの鋼製ブレースを採用した。駐車スペースの内装制限の対応は近隣の美山地区の土を使った中塗り仕上げに,天井は木毛セメント版で仕上げとしている。
一見,伝統と現代の工法がブリコラージュされて見えるが,山の価値の循環と技術の継承という観点からは,いずれも共通して現代の法規的経済的環境に対応した切実な建築行為としての合理性を持っている。
2024年の1月に,学生大工による手刻みを終えた材が京北の中心にある敷地に搬入され,地組みが始まった。それから竣工した9月までの半年間,奮闘する学生大工チームや棟梁の姿,京北の木材が建築として組み上がっていく風景は地元住民から注目されるイベントとなっていた。この整然と並ぶ,トラス状の磨き丸太方杖のファサードや,学生たちが刻み組み上げた挟み梁の躯体は,つたなくも非常に力強く,地域に住み山や木にかかわる人びとに訴えかけ,見る者を鼓舞し続ける存在となることを期待している。
(高橋勝)
学生たちと建てる
これまで学校では山で伐採した木を刻んで建物をつくってみたり、伝統の京町家の改修を手がけたりして来た。当初は放課後の自主的な活動であったが、ここ20年ほどは、大工志望の学生たちの卒業制作実習として行っている。この京北森林組合の倉庫は2023年度に骨組みを建て、24年度に仕上げた。木工事のほとんどははじめて道具を手にして2年目の学生たちの手によっている。
規模が大きいことから、伝統の木組みでやっていたのでは間に合わない。ほぼすべての柱を通し柱とし、それを半割の梁で挟み、ボルトで留めるという構法で同じ学校で設計を教えている高橋さんに設計してもらった。正面に深く差し出した軒を支える頬杖は京北の北山杉の丸太にしてもらったために、そこだけは一筋縄ではいかない。学生たちにはどうやって墨を付け、どんな仕口をつくるか、またどうすれば正確に刻めるか、考え、試行してもらった。そんな経験は後々生きるにちがいない。
建て方から骨組みが出来上がり、次の2年生たちが屋根下地や床板を張り、壁を張っていく。単純だけれども手が抜けない作業の中に、丸太に板庇が絡むところや出桁の継ぎ手にちょっとこだわってみる、あるいは階段など、学生たちを喜ばす部分もあって、若者たちの腕も目に見えて上がってくる。大事なことは、ひとつひとつの作業をこなしていくことの達成感を通じて自分に自信を持ち、建築が好きになること。そしてその結果が素晴らしいものに見えてくること。しかもそれが他人にも共感してもらえることだ。ここに設計や指導の責任がある。
授業の日以外にも放課後や週末にひたすら作業に励んでくれた学生たち、彼らを温かく見守ってくれた設計の高橋さん、工務店棟梁、お施主さんに心からの感謝を。
(佐野春仁)
■建築概要
題名:京北森林組合木造倉庫
所在地:京都府京都市右京区
主用途:車庫及び資材倉庫
建築設計:高橋勝建築設計事務所 担当/高橋勝
計画監修:佐野春仁/京都建築専門学校
構造設計:アトリエSUS4 担当/能戸謙介
設備設計:高橋勝建築設計事務所 担当/高橋勝
監理:高橋勝建築設計事務所 担当/高橋勝
建築施工:東工務店 担当/東昇平
木工事:佐野春仁及び学生大工チーム/京都建築専門学校
電気:仲井電気工事商会 担当/仲井亮文
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:489.01㎡
建築面積:157.83㎡
延床面積:247.00㎡
1階:147.50㎡、2階:99.50㎡
設計:2023年2月~2023年8月
工事:2023年10月~2024年9月
竣工:2024年9月
写真:山田圭司郎
| 種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
|---|---|---|
| 外装・壁 | 外壁 | 杉板t-21 目板張り(京北森林組合)の上、キシラデコール やすらぎ塗装(大阪ガスケミカル) |
| 外装・屋根 | 屋根 | ガルバリウム鋼板 小波葺きt-0.35 |
| 外装・屋根 | トップライト部 | ポリカ小波フロストクリア |
| 外装・建具 | 開口部 | 内付型アルミサッシATUシリーズ(リクシル) |
| 内装・床 | 1階車庫 床 | 基礎スラブ金鏝押え |
| 内装・壁 | 1階車庫 壁 | 木ずり下地 土壁中塗り仕上げt-20 |
| 内装・天井 | 1階車庫 天井 | 木毛セメント版t-25、t-15 |
| 内装・床 | 1階資材倉庫 床 | 基礎スラブ金鏝押え |
| 内装・壁 | 1階資材倉庫 壁 | 木ずり 30x10@(京北森林組合) |
| 内装・天井 | 1階資材倉庫 天井 | 杉羽目板 t-30 床板裏側あらわし(京北森林組合) |
| 内装・床 | 2階資材倉庫 床 | 杉羽目板 t-30(京北森林組合) |
| 内装・壁 | 2階資材倉庫 壁 | 杉板t-21 外壁裏側あらわし(京北森林組合) |
| 内装・天井 | 2階資材倉庫 天井 | 杉羽目板 t-30 野地板あらわし(京北森林組合) |
| 内装・その他 | その他 |
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