



ツバメアーキテクツのデザイン監修、UG都市建築の設計監理による、東京・港区の「新橋のオフィスビル」です。
住むと働くの間を拓くプロトタイプも模索した計画です。建築家は、“コモンスペース”を散りばめて入居者が建物全体を使用可能とし、執務空間では給湯機能を窓際に配置して交流を促進しました。また、外観は近景と遠景の両方で質感とリズムの感受を意図しました。
新橋に立つオフィスビルのプロジェクト。
長きに渡り家づくりを行ってきたクライアントと、オフィスビルを考えるにあたってラボ業務とデザイン業務を一貫して行なった。「Office as a Home」のコンセプトのもと、住む場所と働く場所の間を拓くようなプロトタイプとしてのビルのデザインを模索することからプロジェクトが始まった。コロナ禍以前のように一律に出社するだけではなく在宅ワークという選択肢も定着した今日において、わざわざ一つの場所に集まって働くことの意味を設計として捉え直そうとしている。
まず、ビル全体の使われ方において、屋上、路面、地下を質の異なるコモンスペースとして位置付けることで、入居者が自身のテナント階だけではなくビル全体を使いこなせるような運用を計画した。
そしてオフィスの要となる執務スペースは、窓周りが最も重要な場所であると考えた。
各階に配された深い奥行きをもつ窓の窓台には空調などが格納され、ブラインドを降ろしても柔らかい光がバウンスして入るように窓の上部には庇状の反射板を設けた。それにより躯体素地の天井が柔らかく照らされる。また、一般的に執務スペースと分離され暗くなりがちな給湯室の機能を、家におけるダイニングキッチンのような場所として捉え直し、執務スペースの中に配置した。さらに大きな出窓やテーブルセットが置ける大きさのバルコニーに近接させることで、自然光が差し込みつつコミュニケーションの起点となるような場所に転換させ、家のようにリラックスできる空間を目指した。
ファサードは、古典的なルールを踏襲しつつ新しいデザインが巧みに融合された20世紀におけるミラノのパラッツォや、足元からも遠景からも陰影が美しく均整の取れたシカゴ派の高層ビルなど数多くの実践を参照し、東京の街並みの一部としてのビルのあり方を検討した。
基部は荒々しい表情のRC削り出し、胴部はRC打放しと左官の揺らぎながら重なる2つのフレーム、頂部は金属製のパネルというそれぞれ異なる質感の素材を積み重ねることで全体にメリハリをつけ、さらにインナーバルコニーがアクセントとして現れる。
躯体は地面から空へ細くしていくことで垂直性を強調し、そこに物質ごとの厚みによる複層性が陰影となって現れる。一般的に単調になりがちな高層ビルのファサードに対し、近景で見ても遠景から見ても質感やファサードのリズムが感じられるような構成とした。
