



原田将史+谷口真依子 / ニジアーキテクツが設計した、千葉・柏市の「登間の家」です。
中央に“崖”があり奥に向かい高低差のある敷地での計画です。建築家は、環境に寄り添い享受する設計思想のもと、地形を活かし高い部分の眺望も取込む建築を志向しました。そして、登窯のようで3つの床レベルのある“多様な居場所”を備えた空間を構築しました。
T字路突き当りの北側前面道路で、敷地奥の南側に向かって地盤レベルが上がっている。南側境界は1.8m程度の幅の隣地を挟んで道路に面しており、道路からは人の背丈ほど敷地が高くなっている。
古家は手前の平場に建物を配置し、奥の斜面を庭としていた。普通に考えるとそうなるだろう。だが、現地に訪れ南側の斜面の最も高いところに立つと、なんとも心地よい風が南北に抜け、視界の抜けと北側の眺望が素晴らしかった。
そこで、登窯のような空間をこの敷地目一杯に配置することで、恵まれた環境を活かせると考えた。
既存の崖を背中で受ける高基礎と両腕を伸ばすような待受け擁壁を⼀体で作り、その肩を蹴り上がるように2段目・3段目の床を作った。南北の風と視界の抜けを享受できるように、両面に大開口を設けた。それぞれの段によって開口部との距離や高さ関係が異なるため、一体空間ではあるが空間の質が異なり、多様な居場所を作り出している。
南側の3段目から振り返るような形で上がる2階は周辺の建物よりも頭一つ上に出ており、北側の眺望を独り占めできるペントハウスのような空間となった。
このプロジェクトは、これまでに設計した二つの住宅から連鎖的に始まった。
「扉の家」を見た方が「段庭の家」を依頼し、「段庭の家」を見た方が「登間の家」を依頼された。いずれも変形敷地で、一般的にはネガティブに捉えられがちな敷地条件であったが、それらを建築によってポジティブな環境へと転換している点に関心が寄せられた。それぞれの計画では、周辺環境との関係性を意識しながら、強引な操作ではなく、さり気ない操作を重ねている。
「登間の家」では、既存の地形を壊すことなく、その場に段々と連なるトンネル状の箱をそっと置くように、ボリューム計画を行った。土地の成り立ちを変えて光や風の環境を操作するのではなく、昔からそこにある環境に寄り添い、それを享受するように空間をつくることこそが、自然な建築であると考えている。








