



中村篤史+佐藤ひらり / Kraft Architectsが設計した、岐阜・飛騨市の「神岡オフィス」です。
森林整備などを行う企業の為に既存住宅を転用しました。建築家は、“物質感のある基礎”を設計の起点とし、“大地に近づくにつれて密度を増す”執務空間を中核とする構成を考案しました。また、支障木も建材として用いて“資源循環”にも取組んでいます。
本計画のクライアントは、そうした地域において生活を下支えする担い手として成長してきた会社である。森林整備や支障木伐採を主軸に、特殊伐採、森林調査、蜂の駆除、除雪、土木造園、祭りの担い手に至るまで、分野横断的に地域の要請を引き受けてきた。地域に深く根を張る一方で、組織の拡張や世代交代に伴い、これからの地域や会社のあり方をめぐる思考や議論が、より切実なものとして立ち上がりつつあった。
本社機能の拡充と移転を目的とした本計画は、社長が幼少期を過ごした住宅を事務所に改修することを条件として始まった。
約6名の日常的な執務空間に加え、最大20名程度が一堂に会し、意見を交わす場が求められた。その背景には、変化を志向する意志と、地域や組織が積み重ねてきた価値観を大切に受け継ごうとする姿勢とが併存する、地方に固有の緊張感が存在していた。
敷地は、河岸段丘上に形成された市街地を見下ろす高台に位置する。南側道路から北側へと緩やかに下る地形に対し、既存建物は南側の道路レベルに合わせた水平な床を持つ構成であった。斜面に適応しながら高さを変え、大地と強く結びつく物質感のある基礎に着目し、これを地域の下支えしてきたクライアントの姿勢に重ね合わせ、建築の中心的要素として再解釈することを設計の起点とした。
道路レベルより下部には、大地に近づくにつれて密度を増す執務空間を配置し、外部と視線の切れる静かで落ち着きのある実務の場とした。一方、上部には用途を限定しない余白のある空間を設け、テーブルやキッチン、薪ストーブ、ソファーなどが緩やかに配置され、立場や世代、価値観の違いを超えて人が集い、思考や対話が行き交う場としている。
「大地に根差した物質感のある内部空間」を組織の核として大きな吹抜けにまとめ、その周囲をスキップフロア状の空間が取り囲む構成とすることで、異なる思考や温度感を内包しながらも、関係性が編み直されていく場を目指した。
さらに、光や風、季節や時間によって移ろう環境条件を丹念に読み取り、それらを内部へと引き込むことで、自然要素が各空間を横断する構成とした。森の中で自然に向き合い、その都度最適な距離を選び取ってきたクライアントの姿勢になぞらえ、光や風を、状況に応じて距離感を調整し続けるための媒介として位置づけている。












