葛島隆之建築設計事務所が設計した、静岡・浜松市の、農業用倉庫「Pergola」です。山々に囲まれた自然豊かな敷地に計画、施主の暮らしに呼応する建築を求めて周囲の木々との関係性と求められる機能性を手掛かりに形態を決定、建てる事で環境を肯定する在り方が目指されました。
浜松市天竜区に建つセカンドハウスの計画。
計画地は都市計画区域外で、起伏の大きな山に周囲を囲まれ、敷地内を渓流が流れる、自然豊かな環境である。敷地内には、梅の木やサルスベリやモミジといった印象的な木々が立ち並ぶ。
建主は、週末をここで過ごし、将来的にはここへ移り住んで農業を営もうと考え購入を決意した。要望は、既存の母屋の軽微な改修と崖沿いに数棟建っていた小屋の解体と新たな小屋(農業用倉庫)の新築であった。打合せや現場調査に足を運ぶと、草抜きをしたり石を集めたり、冬には焚火をしたり、夏には川に入ったりする建主の生活が印象的であった。そんな生活にあった小屋のあり方を考えた。
建主の生活が、その生活を育むための建築が、自然に溶け込む。そんな風景を思い描きながら計画した。建築がダイレクトに自然との関係をもつこと、それは山のような大きな風景の中での佇まいであり、1本1本の木々がつくり出す空間でもある。ここに建築を建てることが、美しい里山や庭の木々の存在を肯定することとなった。
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以下、建築家によるテキストです。
自然に溶け込む生活とかたち
浜松市天竜区に建つセカンドハウスの計画。
計画地は都市計画区域外で、起伏の大きな山に周囲を囲まれ、敷地内を渓流が流れる、自然豊かな環境である。敷地内には、梅の木やサルスベリやモミジといった印象的な木々が立ち並ぶ。
建主は、週末をここで過ごし、将来的にはここへ移り住んで農業を営もうと考え購入を決意した。要望は、既存の母屋の軽微な改修と崖沿いに数棟建っていた小屋の解体と新たな小屋(農業用倉庫)の新築であった。打合せや現場調査に足を運ぶと、草抜きをしたり石を集めたり、冬には焚火をしたり、夏には川に入ったりする建主の生活が印象的であった。そんな生活にあった小屋のあり方を考えた。
新築の小屋の配置は道路面に沿わせることとした。既存小屋群の位置は急峻な崖沿いとなっているため難しく、また、畑としてなるべくまとまった面積を平場に確保する必要があったからである。道路面には多種多様な木々が立ち並んでおり、それらをかわすような平面の形と屋根の高さを検討した。柱は木の根っこをなるべく傷めないよう独立基礎の柱脚で計画し、梁は木の枝張りをかわすような高さで繋いでいった。
垂木は柱梁のフレームから大きく跳ね出し、ルーバー状に連続させた。屋根が高木の下をくぐったり、低木を抱え込んだりしながら、山並みと呼応してふわりと浮かび、木々の中に溶け込んでいく。屋根下空間は、壁で仕切り5種類の空間を並べた。建物へのアプローチ、農機具置き場、木陰の縁側ベンチ、作業スペース、天日干しスペースである。屋根の下を歩くと、5種類の空間の裏側と表側を行き来するような構成である。
屋根の高低は、木々をかわすだけでなく空間の使い方によっても決まっている。たとえば、アプローチは人を迎え入れるよう反り上がり、作業スペースは屋根を高くして大きな空間を確保し、機具置き場は人の手が届くようなサイズとしている。
2次部材の多くは解体した小屋の廃材を再利用し、新築でありながらも風景に馴染むようにと考えた。これらは建主と設計事務所によるDIY施工であり、部材の足し引きが簡単にできるような未来の使われ方に開かれた躯体のつくりである。
建主の生活が、その生活を育むための建築が、自然に溶け込む。そんな風景を思い描きながら計画した。建築がダイレクトに自然との関係をもつこと、それは山のような大きな風景の中での佇まいであり、1本1本の木々がつくり出す空間でもある。ここに建築を建てることが、美しい里山や庭の木々の存在を肯定することとなった。
■建築概要
名称:Pergola
所在地:静岡県浜松市
主要用途:農業用倉庫、住宅
建築主:個人
設計:葛島隆之建築設計事務所 葛島隆之
構造:小松宏年構造設計事務所 小松宏年
施工:分離発注
建築面積:23.24m2
延床面積:9.81㎡
屋根投影面積:78.31㎡
設計期間:2019年12月~2020年12月
工事期間:2021年1月~2021年9月
写真:葛島隆之建築設計事務所、金川晋吾
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・床 | 床1 | コンクリート金ゴテ仕上げ
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外装・床 | 床2 | 瓦再利用
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外装・壁 | 外壁1 | ポリカーボネート小波[クリア]
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外装・壁 | 外壁2 | 廃材再利用
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外装・屋根 | 屋根 | ポリカーボネート平板
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