大林組が設計した、熊本・上益城郡の「ディスコ九州支店」です。
社屋を市街地から緑あふれる郊外へ移転する計画、豊かな環境を活かした空間を目指して自然の移ろいが感じられるワークプレイスやクリーンルームを考案、先進的な企業理念を発信する役割も担う事が意図されました。施主企業の公式サイトはこちら。
世界トップシェアの精密加工装置メーカー「ディスコ」の九州事業所を、熊本市内から空港近郊の緑豊かな郊外へ移転するプロジェクトである。
国内外へ技術をアピールするショールーム的な空間(製品加工・研究も兼ねる)と社員の感性を刺激するワークプレイスが求められた。
ここで働く人々にとって快適なワークプレイスはどうあるべきか。
それは、彼らの感性を刺激する「多様な環境」や「豊かな体験」を提供できる場であると考えた。
「働きがいのある会社ランキング」で毎年上位に輝き、社員を大切にする先進的な取り組みを行うディスコは、高密度な市街地から、郊外の緑豊かな環境への移転を決断した。そこで、豊かな周辺環境を最大限活かし、働く人々が、光や緑の移ろいを身近に感じられる「多様な環境」の中で「豊かな体験」を享受できるワークプレイスを目指した。
敷地南側に位置する保護林に面して大らかな木造大屋根による開放的な2つのボリュームを雁行配置し、一方は展示加工サービスを行う「魅せるクリーンルーム」、もう一方は自然の移ろいを感じながら働くことができる「木漏れ日のワークプレイス」を配置した。
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以下、建築家によるテキストです。
森と連なる2枚の木造大屋根
世界トップシェアの精密加工装置メーカー「ディスコ」の九州事業所を、熊本市内から空港近郊の緑豊かな郊外へ移転するプロジェクトである。
国内外へ技術をアピールするショールーム的な空間(製品加工・研究も兼ねる)と社員の感性を刺激するワークプレイスが求められた。
敷地南側に位置する保護林に面して大らかな木造大屋根による開放的な2つのボリュームを雁行配置し、一方は展示加工サービスを行う「魅せるクリーンルーム」、もう一方は自然の移ろいを感じながら働くことができる「木漏れ日のワークプレイス」を配置した。
豊かな「体験」を提供するワークプレイス
ここで働く人々にとって快適なワークプレイスはどうあるべきか。
それは、彼らの感性を刺激する「多様な環境」や「豊かな体験」を提供できる場であると考えた。
「働きがいのある会社ランキング」で毎年上位に輝き、社員を大切にする先進的な取り組みを行うディスコは、高密度な市街地から、郊外の緑豊かな環境への移転を決断した。そこで、豊かな周辺環境を最大限活かし、働く人々が、光や緑の移ろいを身近に感じられる「多様な環境」の中で「豊かな体験」を享受できるワークプレイスを目指した。
また、そのような理念を来場者にも発信するため、クリーンルームについても自然の移ろいを身近に感じられるような展示・加工空間を目指した。
木造ロングスパン架構の実現
スケール感の大きな自然環境と呼応するように2枚の大スパン大屋根を配置し、その下に多様な自然環境を感じることができる人々の居場所を設けた。屋根は木造とし、近接する空港の飛行機騒音に配慮して建物下層部はRC造、屋根を支える柱は鉄骨造という混構造を採用した。
「魅せるクリーンルーム」は規格材の75mm厚のLVLを3枚綴り合わせ大断面木大梁を形成する「オメガウッド工法」によって、14.3m無柱の木造屋根による大空間をローコストで実現した。梁は力学的な合理性をシンプルに現した弓状の形状とした。この木造屋根の下部4周は開口部とした。大らかな空間の中に時間の変化と共に、木漏れ日が差し込み、自然の移ろいを感じることができる。
「木漏れ日のワークプレイス」は、開口部から自然の移ろいだけでなく、免震層とバランス型自然換気窓の組み合わせによる「自然換気システム」と保護林に面した窓一面を開放することによって、中間期は室内にいながら森の爽やかな風を感じ、働く人々の感性にうったえかける空間とした。
コミュニケーションを促進するオープンスペース
吹抜けを介したワークプレイス上部(2階)は、クリーンルーム同様の木質大空間とし、ミーティングや食事、リフレッシュなど様々な用途に使えるオープンスペースを設けた。
冬季には暖炉を囲みながら語らうことで、温かみのある空間の中でワーカー同士のインフォーマルな交流を促進している。また、森を身近に感じられるテラスを併設することで豊かな自然環境を感じながらリフレッシュすることもできる。恵まれた自然環境を活かして内外にコミュニケーションを促進するオープンスペースを設けた。
■建築概要
建物名称:ディスコ九州支店
所在地:熊本県上益城郡益城町
建築主:株式会社ディスコ
用途:事務所、寄宿舎
設計・監理:大林組 / 大西宏冶、美坂浩二、武井光(※元所員)
施工:大林組
階数:地上2階
軒高さ:9.547m
最高高さ:9.860m
敷地面積:4,772.31㎡
建築面積:1,1240.40㎡
延床面積:1,381.02㎡
期間
設計期間:2015年6月~2017年2月
施工期間:2017年2月~2018年1月
写真:鳥村鋼一