宮崎晃吉 / HAGISOが設計した、茨城・笠間市の「ATAGO FOREST HOUSE / あたご天狗の森 / 吾国・愛宕県立自然公園」です。
自然公園にある建物と周辺環境を整備する計画です。建築家は、“地域の憩いの場”で“観光拠点”を目指し、“心も体も切り替わる中継地点”としての建築を志向しました。そして、既存への“円弧状のテラス”などの増築と共にサインまでも見直しました。施設の公式サイトはこちら。
茨城県笠間市に位置する愛宕山、その山頂付近に広がるあたご天狗の森全体のリノベーション計画。
背後に続く山岳エリアと市街地との距離感を踏まえ、計画当初から本公園を「心も体も切り替わる中継地点」と位置付けた。その上で、建築、斜面遊具、工芸品、グラフィックデザインまであらゆる領域を駆使して環境の魅力を引き出し、地域住民の憩いの場と、山岳アクティビティを中心とした観光拠点の2つの役割を両立させることを目指した。
公園全体の拠点となる建築は、既存テラスを共有した木造のA・B棟を改修し、これに連なる形で鉄骨造のC棟と円弧テラスを加えた、3棟構成の計画である。
A棟には山岳案内の情報を集約するスペースと、ハイキングの帰りに汗を流せるシャワーテラスを設えた。B棟は県内外からの会議・研修といったワーケーションや展示などに利用できるワークショップスペースとし、予約利用のない通常時はカフェ客席となる。増築C棟では軽飲食の厨房を設けて休憩所としての機能を拡張した。9席の室内席のほか公園の一部として常時出入りできる円弧状のテラス席を設け、既存テラスとの通り抜け動線を設けている。
増築したC棟は鉄骨造とした。斜面に載る基礎形状を小さくして土壌への負荷を最小限としつつ、上層では最大2間張り出した円弧状のテラスが斜面の上である立地とあいまって浮遊感を与えている。一見不釣り合いに見える形態だが、内外空間の重心の操作によりヤジロベエのような安定した構造となっている。斜面とのバッファとなる下層は良好な空調機環境として活用した。A棟に増設したシャワーテラスも既存基礎から方杖で持ち出し、斜面との接触を避けている。
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以下、建築家によるテキストです。
心も体も切り替わる中継地点としての公園
茨城県笠間市に位置する愛宕山、その山頂付近に広がるあたご天狗の森全体のリノベーション計画。
背後に続く山岳エリアと市街地との距離感を踏まえ、計画当初から本公園を「心も体も切り替わる中継地点」と位置付けた。その上で、建築、斜面遊具、工芸品、グラフィックデザインまであらゆる領域を駆使して環境の魅力を引き出し、地域住民の憩いの場と、山岳アクティビティを中心とした観光拠点の2つの役割を両立させることを目指した。
山岳アクティビティを最大化する3棟の建築
公園全体の拠点となる建築は、既存テラスを共有した木造のA・B棟を改修し、これに連なる形で鉄骨造のC棟と円弧テラスを加えた、3棟構成の計画である。
A棟には山岳案内の情報を集約するスペースと、ハイキングの帰りに汗を流せるシャワーテラスを設えた。B棟は県内外からの会議・研修といったワーケーションや展示などに利用できるワークショップスペースとし、予約利用のない通常時はカフェ客席となる。増築C棟では軽飲食の厨房を設けて休憩所としての機能を拡張した。9席の室内席のほか公園の一部として常時出入りできる円弧状のテラス席を設け、既存テラスとの通り抜け動線を設けている。
斜面における最小限の環境介入
増築したC棟は鉄骨造とした。斜面に載る基礎形状を小さくして土壌への負荷を最小限としつつ、上層では最大2間張り出した円弧状のテラスが斜面の上である立地とあいまって浮遊感を与えている。一見不釣り合いに見える形態だが、内外空間の重心の操作によりヤジロベエのような安定した構造となっている。斜面とのバッファとなる下層は良好な空調機環境として活用した。A棟に増設したシャワーテラスも既存基礎から方杖で持ち出し、斜面との接触を避けている。
斜面という環境を遊具にする
眺望の広がる斜面側では、建築側の円弧テラスと呼応させながら居場所を点在させ、公園全体でのアクティビティの連動・誘発を意図した。従来のように遊び方が定まった公園遊具ではなく、斜面という環境の中で発見的な遊びが生まれることを期待し、ここでも最小限の介入を意識している。
工芸と素材の結節点としての建築
観光振興の一環として、地場産業の製作加工者と協業して素材の新たな可能性を開くことを試みている。食器・雑貨のデザインに定評のある笠間焼は屋根形状を模したオリジナルの陶板タイルやランプシェードとして、重厚な外壁材や墓石として使われることの多い稲田石は薄く軽やかに浮かせた曲面天板として実装している。さらに地場産材である八溝杉、県産ヒノキを屋根やウッドデッキ材として随所に適切に用いた。
グラフィックデザイン
心も体も切り替わる中継地点としての魅力を伝え、より開かれた公園とすべくグラフィックデザインを制作している。ATAGO FOREST HOUSEの施設ロゴは、爽やかな風を受ける3つの屋根形状のほか、愛宕山に連なる難台山、吾国山の3つの山の姿も重ねた。
園内に設けたエリアマップには計画した建築や遊具のほか、斜面から見える景色、周辺施設、山岳案内などを網羅し、眺めと連動するよう円弧状に配した。
■建築概要
作品タイトル:ATAGO FOREST HOUSE / あたご天狗の森 / 吾国・愛宕県立自然公園
所在地:茨城県笠間市
主要用途:公園、休憩所、飲食店
建主:笠間市観光課
設計:HAGISO / 宮崎晃吉、田坂創一、久保田啓斗
建築施工:大枝建設
グラフィックデザイン:HAGISO / 朱則安、末吉祐太
構造:坂田涼太郎構造設計事務所
機械設備:MOCHIDA建築設備設計事務所
電気設備:大瀧設備事務所
ランドスケープ:風景堂プランニング
照明計画:大好照明
公園施工:柴山土建
笠間焼陶板・照明施工:笠間焼協同組合、笹目亮太郎、船串篤司、Kei Condo
稲田石加工製作:稲田石材商工業協同組合、株式会社タカタ
真鍮サイン製作:富士産業
構造:木造(既存)鉄骨造(増築)
建築面:105.39㎡
延床面積:94.10㎡
階数:地上1階建
設計期間:2022年6月~2023年3月
施工期間:2023年8月~2024年3月
写真:楠瀬友将
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外構・床 | 床 | アスファルト保護舗装(水谷ペイント)
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内装・床 | AB棟 床 | 県産杉材圧密フローリング+WP[VATON]
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内装・壁 | AB棟 壁 | PB+クロス貼(ルノン)
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内装・天井 | AB棟 天井 | 既存梁あらわし
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内装・床 | A棟シャワー室 床 | 磁器質タイル[SE-094N、G-4、美濃焼タイル]
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内装・壁 | A棟シャワー室 壁 | フレキシブルボードt6クリア塗装(チヨダウーテ)
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内装・壁 | A棟シャワーテラス 壁 | SUS304 バイブレーション
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内装・床 | C棟 床 | モルタル金ゴテ仕上げカラークリート塗布(ABC商会)
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内装・壁 | C棟客席 壁 | PB+AEP N35
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内装・造作家具 | C棟客席 天板 | 稲田石F仕上げクリア塗装
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内装・造作家具 | C棟カウンター陶板 | 笠間焼特注陶板
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内装・天井 | C棟 天井垂木 | 県産杉45×90@303+WP(キシラデコール)
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内装・壁 | C棟 外壁 | 窯業系サイディングSOLIDO Lap_M錆茶(ケイミュー)
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内装・床 | 増築ウッドデッキ+階段 | 県産ヒノキt30防腐防蟻ガス処理K4の上保護塗装(キシラデコール)
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外装・屋根 | C棟 屋根 | GL鋼板シルバーSELiOS PrimeE819(日鉄鋼板)
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外構・その他 | 公園モルタル滑り台 | 高度造形モルタル調合指定色
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外構・床 | 公園ウッドデッキ 床 | エコロッカ・サンディブラウン(エコウッド)
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外構・その他 | 公園丸太ステップ | 県産杉材皮むき丸太の頂部AEP塗装
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