榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す俯瞰、西側より見下ろす。 photo©小川重雄
榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、居間からキッチン越しに玄関側を見る。 photo©小川重雄
榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、居間からキッチン越しに寝室側を見る。 photo©小川重雄
榊原節子建築研究所が設計した、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」です。
定年を迎える施主がひとりで暮らす住まいの計画です。建築家は、“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案しました。また、角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出しています。
まもなく定年を迎える建主のための、ひとりで暮らす小さな住まいである。
これから先、住まいは単なる生活の器ではなく、長い時間を受け止める場となる。必要なものにすぐ手が届く利便性とともに、現役時代よりも格段に増える家での時間を、いかに豊かに過ごせるか。誰もが思いを巡らせる「後半生の住まい」というテーマに向き合うこととなった。
敷地は、大阪府南部の住宅地。約半世紀前に核家族世帯を想定して開発された地域で、周囲には2、3階建ての住宅が建ち並ぶ。ファミリー向け住宅に囲まれる環境のなかで、あえて平屋の小さな建築としながら、上部に伸びる筒状のヴォリュームを設けることで、静かながらも確かな存在感を与えた。
平面は三間四方、9坪の正方形。
生活に必要な機能をコンパクトに収め、この正方形を敷地に対して角度を振って配置している。これにより、建物の周囲には性格の異なる四つの外部空間が生まれた。前面にはアプローチと駐車スペース、奥には物干し場と小さな庭。建築の向きを振ることで、敷地との関係性に余白と奥行きをもたせている。
建築をかたちづくる要素には、構造や工法、環境などの構築的側面と、機能や気配、周辺との調和といった空間性がある。その両者を融合させるものとして、「木の傘」となる屋根を架け、その頂部を筒状に伸ばして天窓から自然光を導き入れた。
以下の写真はクリックで拡大します

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す俯瞰、西側より見下ろす。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、玄関からキッチン越しに居間側を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、キッチンから居間を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、左奥:居間、右手前:キッチン photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、居間からキッチン越しに玄関側を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、居間から寝室側を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、居間からキッチン越しに寝室側を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出すロフトから居間を見下ろす。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出すロフトから高窓側を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出すロフトから天窓側を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、寝室 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、洗面から居間を見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、洗面 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階、洗面からトイレを見る。 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す外観、南西側の道路より見る。夜景 photo©小川重雄

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す1階平面図 image©榊原節子建築研究所

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出すロフト平面図 image©榊原節子建築研究所

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す屋根伏図 image©榊原節子建築研究所

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す断面図 image©榊原節子建築研究所

榊原節子建築研究所による、大阪・泉大津市の住宅「木の傘」。定年を迎える施主がひとりで暮らす住まい。“長い時間を受け止める場”として、全体を“ひとつの傘”として天窓と高窓から“柔らかな光”が入る建築を考案。角度を振る配置で性格の異なる四つの外部空間も生み出す構造ダイアグラム image©榊原節子建築研究所
以下、建築家によるテキストです。
動的な強さと静的な豊かさを併せもつ「木の傘」
まもなく定年を迎える建主のための、ひとりで暮らす小さな住まいである。
これから先、住まいは単なる生活の器ではなく、長い時間を受け止める場となる。必要なものにすぐ手が届く利便性とともに、現役時代よりも格段に増える家での時間を、いかに豊かに過ごせるか。誰もが思いを巡らせる「後半生の住まい」というテーマに向き合うこととなった。
敷地は、大阪府南部の住宅地。約半世紀前に核家族世帯を想定して開発された地域で、周囲には2、3階建ての住宅が建ち並ぶ。ファミリー向け住宅に囲まれる環境のなかで、あえて平屋の小さな建築としながら、上部に伸びる筒状のヴォリュームを設けることで、静かながらも確かな存在感を与えた。
平面は三間四方、9坪の正方形。
生活に必要な機能をコンパクトに収め、この正方形を敷地に対して角度を振って配置している。これにより、建物の周囲には性格の異なる四つの外部空間が生まれた。前面にはアプローチと駐車スペース、奥には物干し場と小さな庭。建築の向きを振ることで、敷地との関係性に余白と奥行きをもたせている。
建築をかたちづくる要素には、構造や工法、環境などの構築的側面と、機能や気配、周辺との調和といった空間性がある。その両者を融合させるものとして、「木の傘」となる屋根を架け、その頂部を筒状に伸ばして天窓から自然光を導き入れた。
傘の骨となる登り梁には、38×180mmのベイマツ材を採用。小空間にふさわしい繊細な断面の梁を、梁下2,350~3,350mmの間で螺旋状に巻き上げた。始点と終点が重なり合う部分に生じた空隙は高窓となり、柔らかな光をもたらす。
屋根の形態が生み出す上昇感は、内部に動的な力強さを与える一方、光の移ろいがもたらす静かな豊かさを併せ持つ。ロフトに上がれば、屋根の架構を間近に感じることができ、包み込まれるような安心感が広がる。
外装は、壁・屋根・筒を同一のアスファルトシングルで仕上げた。内部の構成がそのまま外観に表出するよう、要素を分節せず、建築全体をひとつの「傘」として表している。
ひとりで歳を重ねる暮らしには、個の充足と社会との緩やかな接続、その双方が求められる。同時に、孤独をやわらかく受け止める包容力も必要である。この小さな住まいは、動的な構造の強さと、静的な空間の豊かさを重ね合わせながら、これからの暮らしの器となることを目指した。
■建築概要
題名:木の傘
所在地:大阪府泉大津市
主要用途:専用住宅
設計:榊原節子建築研究所 担当/榊原節子
施工:笹原建設株式会社
構造:高橋俊也構造建築研究所 担当/高橋俊也
構造:木造在来工法
階数:地上1階(ロフト付き)
敷地面積:71.19㎡
建築面積:29.81㎡
延床面積:29.81㎡
設計期間:2023年2月〜2023年8月
施工期間:2023年9月〜2024年3月
竣工時期:2024年3月
写真:小川重雄