SHARE 内沼晋太郎・グルーヴィジョンズ・田中裕之による、青森県八戸市が運営する書店「八戸ブックセンター」
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内沼晋太郎がクリエイティブディレクションを、グルーヴィジョンズがアートディレクション・グラフィックデザインを、田中裕之が内装ディレクションを手掛けた、青森県八戸市が運営する書店「八戸ブックセンター」です。施設の公式サイトはこちら。
八戸ブックセンターは青森県八戸市営の本屋である。
八戸ブックセンターの開設は、もともと2013年10月の市長選での小林市長の政策公約であり、当選後、市長の公約実現のため八戸市から依頼を受けた内沼晋太郎のディレクションのもと進められた。内装ディレクションの田中裕之、アートディレクションのグルーヴィジョンズはプロジェクトの実現フェーズに従って順次向かえられた。八戸市は「本のまち八戸」としてブックスタート(生後90日~1歳未満)、マイブッククーポン(小学生)など本に親しむための様々な取り組みを行っていたが、ここでは施設運営の基本方針として、(1)本を「読む人」を増やす、(2)本を「書く人」を増やす、(3)本で「まち」を盛り上げる、の3項目を掲げ、「本のまち八戸」を推進する拠点施設との位置付けがされている。
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以下、建築家によるテキストです。
八戸ブックセンターは青森県八戸市営の本屋である。
八戸ブックセンターの開設は、もともと2013年10月の市長選での小林市長の政策公約であり、当選後、市長の公約実現のため八戸市から依頼を受けた内沼晋太郎のディレクションのもと進められた。内装ディレクションの田中裕之、アートディレクションのグルーヴィジョンズはプロジェクトの実現フェーズに従って順次向かえられた。八戸市は「本のまち八戸」としてブックスタート(生後90日~1歳未満)、マイブッククーポン(小学生)など本に親しむための様々な取り組みを行っていたが、ここでは施設運営の基本方針として、(1)本を「読む人」を増やす、(2)本を「書く人」を増やす、(3)本で「まち」を盛り上げる、の3項目を掲げ、「本のまち八戸」を推進する拠点施設との位置付けがされている。
店内では「愛」や「死」というテーマの本棚の脇でゆっくりとハンモックに揺られて読書したり、「人生、生き方」というテーマでは四方を本棚で囲まれた「本の塔」に籠ることもできる、というように読書体験のための空間と選書が注意深く練られ全体を構成している。
売り場は大まかに「本棚」、「読書会スペース」、登録して執筆ができる「カンヅメスペース」、「ギャラリー」、「カウンター」、八戸市出身の芥川賞作家三浦哲郎の書斎や遺品を展示した「三浦哲郎スペース」があり、その合間を縫うようにゆっくりと独りになって読書ができるソファスペースを大小3つの回遊性を持ったプラン内に設けている。店内のBGMは「JAZZの館 南郷」(八戸市の施設)所蔵のCDから大谷能生(八戸市出身)が選曲しており、公共施設の資源の有効活用や循環、連携がBGMレベルでもなされている。
さらに読書をより楽しんでもらうため、店内ではコーヒーやアルコールも販売しており、ドリンクと本で両手がふさがることのないように、立ち読みにも対応できるドリンクホルダーを各所に配置している。ブックセンターは商業施設の雑多な雰囲気の1階にテナントとして入居しているが、面する道路の車のエンジン音や街のざわめき、陽光、隣合うパン屋と花屋、コツコツと響く店内の靴音と心地の良いBGMと淹れたてのコーヒーの薫り、などなど、より居心地のよい落ち着いた場所にするための音と色を、本を中心にした空間に調和させることに力を注いだ。
先例主義になりがちな行政機関において、この「八戸ブックセンター」がこれからの先例になり、小さなまちでも対応可能なスモールプロジェクトとして「八戸モデル」が全国に広がることを期待している。
■建築概要
名称:八戸ブックセンター https://8book.jp/
事業主:青森県八戸市
所在地:青森県八戸市六日町16番地2 Garden Terrace1階
用途地域:商業地域
用途:物販店(本屋)
構造:鉄骨造一部鉄筋コンクリート構造
面積:314.60m2
竣工:2016年11月
ディレクションチーム
クリエイティブディレクション:numabooks 内沼晋太郎
アートディレクション、グラフィックデザイン:groovisions
内装ディレクション/田中裕之建築設計事務所(田中裕之、花塚紘紀)
施設内装監理室:株式会社インタープラン
B工事施工:株式会社福田組
建築:福田組
電気:六興電気株式会社
空調:菱機工業株式会社
C工事実施設計:株式会社オリエンタルコンサルタンツ関東支店一級建築士事務所
C工事監理:有限会社夏堀アシスト設計
C工事施工:株式会社大角建設
建築:株式会社大角建設
電気:株式会社河原木電産
機械(給排水、厨房機器等):西浦水道建設工業株式会社
家具:有限会社斗沢木工所、有限会社苅田工業、CUFS
写真:高橋宗正