SHARE 藤田雄介 / Camp Design inc.による、西日本の「山手の住宅」
藤田雄介 / Camp Design inc.が設計した、西日本の「山手の住宅」です。
マンションや団地などの改修を考える場合、躯体は絶対的な存在として新たに描くプランを規定していく。
躯体に沿わせて設計すれば、収納など隠したい要素は収め易くなる一方で、水回りなどの換気は機械換気に頼らざるを得ない配置になる場合が多い。
そのことに対する疑問は常々あって、躯体との応答関係を問い直すことで、マンションや団地などの改修設計において仕方なく受け入れられている諸問題を解消できるのではないか。と考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
マンションや団地などの改修を考える場合、躯体は絶対的な存在として新たに描くプランを規定していく。
躯体に沿わせて設計すれば、収納など隠したい要素は収め易くなる一方で、水回りなどの換気は機械換気に頼らざるを得ない配置になる場合が多い。
そのことに対する疑問は常々あって、躯体との応答関係を問い直すことで、マンションや団地などの改修設計において仕方なく受け入れられている諸問題を解消できるのではないか。と考えた。
今回改修したのは、メゾネットタイプのマンションの1室で、眼前に山を眺められると同時にバルコニーからは街並みと海辺の景色を眺められる部屋である。山側から海側へと偏西風の吹き抜ける地域のため、風が躯体の中を通り抜け、この地域特有の環境を実感できるプランにすることが重要だと考えた。また、玄関のある上階がキッチン・ダイニングのある主室になり、下階が寝室となる構成は既存の状況から決まっていたが、上下階で異なる世界が並存するような設計を行うため、「通り」と「路地」というメタファーを据えた。
まず、上階は南面の既存サッシを取り払い、木製建具の4枚引きとして最大限の開口幅を取れるものにした。
島状のキッチンとダイニングテーブルを中心に、その他の要素は効率よくコンパクトに納めながら、居場所が点在している目抜き通りのような空間としている。
下階では、風呂・サニタリーの水回りを躯体に寄せて配置するのではなく、中央に2つの島として配置している。
そうすると、階段を下りてすぐの廊下とは別に、躯体と水回りの間の細いスペースが生まれる。ここは、浴室やサニタリーにも自然換気をもたらす風の通り道であり、将来的に南側の部屋を2つの子供部屋に仕切って使う場合の、補助的な通路にもなる。
また島状の水回りの壁面は、各方角ごとに異なる配色を施している。壁の配色によって明暗や空気感の差を与え、行き止まりのない歩き回りたくなる路地のような空間に仕立てている。
躯体との応答関係から問い直すこと、メゾネットであることを活かし上下階で異なる世界を並存させることから、「通り」と「路地」という相反する空間が現れた。そのいずれも、この地域特有の、山から海へ抜ける偏西風と光の抜けを持ち、躯体という絶対的な存在により周辺環境と断ち切られていない場所を生み出している。
■建築概要
設計:藤田雄介 / Camp Design inc.
施工:伊田工務店
竣工:2018年12月
写真:長谷川健太