SHARE 藤田雄介 / Camp Design inc.による、北陸の、既存軽量鉄骨プレハブ住宅を丁寧なプロセスで耐震性の向上と改修を実現した作品「傘と囲い」
藤田雄介 / Camp Design inc.による、北陸の、既存軽量鉄骨プレハブ住宅を丁寧なプロセスで耐震性の向上と改修を実現した作品「傘と囲い」です。本記事では、構造設計を担当した金田泰裕のテキストも掲載します。
軽量鉄骨プレハブ住宅の改修は、法規上・構造上の問題から非常に難しい状況にある。やるとすれば、既存外壁やサッシに手をつけないリフォーム程度の改修か、メーカー自身による高額な費用がかかる改修であれば可能だが、どちらも今回の予算や要望にそぐわないものだった。またクライアント家族が、大量生産の工業化住宅であるこの家にも愛着を持ち、なんとか活かすことを求めていた。家という場所に育まれる記憶や想いの力強さを思い知らされ、それに応えたいと考え建て替えではなく改修することにこだわった。
計画にあたり、既存躯体は劣化が激しい場所が多く、耐震性能を向上させたいという要望もあり、新たな構造を加えていくことを考えた。また敷地は東南面は角地で、北西側は隣地の住宅が迫っているが、コンテクストとは関係のないような窓の配置であった。そのため、開口部の開け方も更新するべきだと考えた。まず外壁はそのままの状態で、既存基礎の外周部に増築扱いで抱き基礎を行い、そこから木造の耐震補強となる壁を建てた。この壁は、既存の2階床と屋根下の大梁に緊結し一体化させている。その後で、錆びが回っている既存外壁を撤去し、結果的に耐震補強壁が新たな外壁の役割を担うことになった。外壁の更新を通常のスキームで行うと主要構造部の大規模修繕にかかったしまうため、行政に相談した上でこのようなスキームで進めることで、確認申請不要な内容での改修方法を見出した。
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以下、建築家と構造家によるテキストです。
藤田雄介 / Camp Design inc.によるテキスト
軽量鉄骨プレハブ住宅の改修である。元々クライアント家族が住んでた家だったが、しばらく空き家になっていたものを、今はバラバラな場所で住んでいる母・息子や娘とその家族が、父の墓参りの際に訪れてみんなで集まれる場所に生まれ変わらせたいという要望から始まった。
軽量鉄骨プレハブ住宅の改修は、法規上・構造上の問題から非常に難しい状況にある。やるとすれば、既存外壁やサッシに手をつけないリフォーム程度の改修か、メーカー自身による高額な費用がかかる改修であれば可能だが、どちらも今回の予算や要望にそぐわないものだった。またクライアント家族が、大量生産の工業化住宅であるこの家にも愛着を持ち、なんとか活かすことを求めていた。家という場所に育まれる記憶や想いの力強さを思い知らされ、それに応えたいと考え建て替えではなく改修することにこだわった。
計画にあたり、既存躯体は劣化が激しい場所が多く、耐震性能を向上させたいという要望もあり、新たな構造を加えていくことを考えた。また敷地は東南面は角地で、北西側は隣地の住宅が迫っているが、コンテクストとは関係のないような窓の配置であった。そのため、開口部の開け方も更新するべきだと考えた。まず外壁はそのままの状態で、既存基礎の外周部に増築扱いで抱き基礎を行い、そこから木造の耐震補強となる壁を建てた。この壁は、既存の2階床と屋根下の大梁に緊結し一体化させている。その後で、錆びが回っている既存外壁を撤去し、結果的に耐震補強壁が新たな外壁の役割を担うことになった。外壁の更新を通常のスキームで行うと主要構造部の大規模修繕にかかったしまうため、行政に相談した上でこのようなスキームで進めることで、確認申請不要な内容での改修方法を見出した。
耐震補強壁は、スパイラル状に巡る帯壁が水平力を補強し、開口部並びの壁が鉛直荷重を足している。後者は木造における壁量計算と同じで、一定距離取れていれば入れる所はどこにでもいい仕組みになっている。そのため、開口部をコンテクストに応答させて開けることが可能になった。
そうして改修した住宅の内部は、外壁分広くなったことと、亜鉛メッキの鉄骨小屋組を表しにしたことで気積が増え、大らかで広がりのある空間が生まれた。また開けた角地側に開口部をあけたことで、外部への水平的な広がりも得ることができた。既存の軽量鉄骨と新たな木造壁を、それぞれ「傘」と「囲い」という建築の原初的なモチーフに還元して等価に扱うことで、改修が困難な存在であるプレハブ住宅だが、改修プロセス次第で活かしていける可能性があることを提示している。
構造家の金田泰裕 / yasuhirokaneda STRUCTUREによるテキスト
『傘と囲い』は、既存構造は鉄骨造2階建てで、型式認定により建てられた建物(1978年竣工、旧耐震設計)であったが、既存柱に腐食も多く見られ、既存構造を再解析し、鉄骨造として耐震補強しなおすには費用的にも情報的にも現実的ではなかった。そこで我々が取った方法は、あくまでも既存の構造体には手をつけず、まず既存躯体の外周部に柱梁と下地により構成された木造の外壁と抱き基礎により、「10㎡以下の増築扱い」となる耐震補強を行った。その後、劣化などが見られる既存構造を撤去し、結果的に新たに増築した構造補強壁がこの建物の新たな「囲い」となり、「傘」を支える計画となっている。行政との協議により、既存躯体がある状態で構造補強を行い、その後に既存を撤去するのであれば、主要構造部の大規模修繕には掛からないというロジックを成立させることができた。
木造に比べて、鉄骨、RC造の構造改修は法的な手続きや制約が生じる場合が多い。当然、時間とコストにも反映されるわけであるが、本計画は、木造的な考えのもと、鉄骨造の耐震改修ができた汎用性のある事例と言えるだろう。
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■建築概要
所在地:北陸
設計:藤田雄介 / Camp Design inc. 担当:辻佳菜子
構造:金田泰裕 / yasuhirokaneda STRUCTURE
施工:栗田工務店
写真:長谷川健太
竣工年月:2018年3月
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・壁 | 帯壁部分 | |
外装・壁 | 開口部並び | フレキシブルボード2重貼り、AEP |
内装・床 | 床 | |
内装・床 | 土間床 | |
内装・壁 | 外壁沿い壁 | 構造用合板 t12 リボス拭き取り、シナ合板 塗装品 t4 |
内装・壁 | 間仕切り壁 | PB クロス張り:PP-4551-1(サンゲツ) |
内装・天井 | 天井 | PB クロス張り PP-4551-1(サンゲツ) |
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