SHARE 石川素樹建築設計事務所による、秋田・横手市の住宅「十文字町の家」
石川素樹建築設計事務所が設計した、秋田・横手市の住宅「十文字町の家」です。
点在する農家と山並を望むことができる、広大な水田に囲まれた約1,000平米の敷地に建つ十文字町の家は、車庫・日照を確保するサンルーム・住空間を、同じ構成の2間角ユニットで組み合わせている。
ユニット下の基礎は、単純な布基礎を短辺のみに並べて基礎量を軽減すると共に、多湿に対する床下の通気を確保し、さらに屋根から落とした雪に対する雪囲いを基礎間に収納できるようにした。
木造部は部材の種類と量を限定して、土台柱、桁、羽柄材をそれぞれ同寸法材とすることで加工の合理性を高め、この気候に見合う断熱材と透湿防水紙で切れ目なく包める、雪を落とす勾配の大屋根を架けただけの簡素な形状とした。
表面の突板が厚いラワン合板で仕上げた真壁の構成は、地場の大工で容易につくることが可能で、雪による工事の中断も起こるこの場所で、低コスト短工期を実現した。
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©ARCHI HATCH
以下、建築家によるテキストです。
敷地がある秋田県の横手盆地は、冬が長く夏が短い有数の豪雪地帯である。盆地がゆえに夏は高温多湿、冬は低温多雪で、年間を通して曇天率が高い。最大で2mに及ぶ積雪や日照が課題であり、朝日が丘の家・十文字町の家・赤坂の家はそれぞれ異なるアプローチで解決を求めた連作となっている。
点在する農家と山並を望むことができる、広大な水田に囲まれた約1,000平米の敷地に建つ十文字町の家は、車庫・日照を確保するサンルーム・住空間を、同じ構成の2間角ユニットで組み合わせている。
ユニット下の基礎は、単純な布基礎を短辺のみに並べて基礎量を軽減すると共に、多湿に対する床下の通気を確保し、さらに屋根から落とした雪に対する雪囲いを基礎間に収納できるようにした。
木造部は部材の種類と量を限定して、土台柱、桁、羽柄材をそれぞれ同寸法材とすることで加工の合理性を高め、この気候に見合う断熱材と透湿防水紙で切れ目なく包める、雪を落とす勾配の大屋根を架けただけの簡素な形状とした。
表面の突板が厚いラワン合板で仕上げた真壁の構成は、地場の大工で容易につくることが可能で、雪による工事の中断も起こるこの場所で、低コスト短工期を実現した。
各室間には客間や子供の遊び場、夫婦のスペースでもあり、緩衝地帯としての役割も果たすサンルームを挿入している。そこに、水平や垂直パネルと脱着可能な中空ポリカーボネートを入れる位置の操作で室と光の明暗による奥行きをつくり、同じ架構のさまざまな用途の空間を連続させることで、東西に50mと長い敷地を最大限に活かした。
簡素な低コストユニットは増やすことも減らすことも容易なことから将来の対応もしやすい。地方都市特有のゆとりある敷地と限られた予算に対し、地場の材料や職人でつくることができ、地域固有の条件にも将来にも対応できる。厳しい環境や固有の条件から導かれた、削ぎ落とされた建築が持つ普遍性を考えた。
■建築概要
設計:石川素樹建築設計事務所 石川素樹
構造:mono 森永信行
家具:RILNO 田中智也
主要用途:専用住宅
所在地:秋田県横手市
構造・構法:木造
規模:地上1階
竣工:2019年4月
敷地面積:941.71㎡
建築面積:158.99㎡
延床面積:132.49㎡
写真:ARCHI HATCH