子浦中 / シオ建築設計事務所が設計した、東京・新宿区の集合住宅「Kicka」です。
建物が入れ替わり始めた木密地域に計画されました。建築家は、収益性と威圧感解消の両立を目指し、ヴォリュームの分節と一部セットバックで視覚的な大きさを軽減しました。また、雁行した平面の素材を切り替えて街に対する明るい表情も作る事も意図されました。
たくさんの集合住宅がある東京には、昭和から残る木造密集地がまだあり、古くからの人が住んでいる。これらは道路幅員2m程度の場所に、古い木造住宅と少し傾いた古いブロック塀が建っており薄暗く少し怖い。今回、このような木造密集地でありながら少しずつ建物が入れ替わり始めた環境に、賃貸用の集合住宅を作る計画である。
集合住宅は、収益性から最大ヴォリュームを求められるが木造密集地には大きく、威圧感がある。これらを解消するために外観は、前面道路から建物をセットバックをすること、建物が大きく見えないようにヴォリュームを大きく二つに分節すること、3Fの外壁面をセットバックすることとした。
その上で平面を雁行させることで、ファサード面のタイルと左官の仕上が交互に繰り返し、ブロック塀が道路境界ギリギリまで迫る街に表情と変化を与える。建物がセットバックすることで太陽光が入るようになり、薄暗い街が明るくなる。
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以下、建築家によるテキストです。
街に顔を作る
賃貸の集合住宅は、地方から出てきた大学生が大学の近くに、結婚してすぐの夫婦が家を購入するまで、単身赴任のサラリーマンが一時的に住む、仮住まいのようなものである。そのため住まいを決めるとき、賃貸だからといった妥協が建物にも街にもある。
たくさんの集合住宅がある東京には、昭和から残る木造密集地がまだあり、古くからの人が住んでいる。これらは道路幅員2m程度の場所に、古い木造住宅と少し傾いた古いブロック塀が建っており薄暗く少し怖い。今回、このような木造密集地でありながら少しずつ建物が入れ替わり始めた環境に、賃貸用の集合住宅を作る計画である。
集合住宅は、収益性から最大ヴォリュームを求められるが木造密集地には大きく、威圧感がある。これらを解消するために外観は、前面道路から建物をセットバックをすること、建物が大きく見えないようにヴォリュームを大きく二つに分節すること、3Fの外壁面をセットバックすることとした。
その上で平面を雁行させることで、ファサード面のタイルと左官の仕上が交互に繰り返し、ブロック塀が道路境界ギリギリまで迫る街に表情と変化を与える。建物がセットバックすることで太陽光が入るようになり、薄暗い街が明るくなる。
内装は、集合住宅ではあまり使わない角を丸めた無垢の木の枠や、フローリングなど経年劣化を楽しめる素材を採用した。また、居住性を上げるために折上天井や高い天井、通風や採光のために各住戸二面以上の開口部を作った。これらは、入居者が建物に愛着を持って長く住んでもらえるようにするためである。
木造密集地に新しい建物が建つことで、道路は広くなり植物が植えられ、日が入り、街が新しくなっていく。入居者が新しく生活を始める街で、古くから住んでいる人も含めて街や建物に愛着を持て、長く住みたくなるような建物を目指した。
■建築概要
所在地:東京都新宿区
用途:共同住宅
設計監理:シオ建築設計事務所
構造設計:木村佳央建築構造設計室
照明設計:杉尾篤照明設計事務所
施工:山田建設株式会社
敷地面積:170.56㎡
建築面積:100.66㎡
延床面積:275.47㎡
竣工::2020年8月
設計期間:2018年3月~2019年9月
工事期間:2019年11月~2020年8月
撮影:淺川敏