SHARE 尾崎泰永 / 尾崎建築事務所による、東京・中野区の「Room E」。都市部で典型の細長い住戸の改修。形状を活かす設計を追求し、角度を微細に調整できる“屏風壁”を考案して施主の価値観に沿った様々な居場所を構築。内部に表と裏を作る事で回遊性と奥行も生み出す
尾崎泰永 / 尾崎建築事務所が設計した、東京・中野区の「Room E」です。
都市部で典型の細長い住戸の改修です。建築家は、その形状を活かす設計を追求し、角度を微細に調整できる“屏風壁”を考案して施主の価値観に沿った様々な居場所を構築しました。また、内部に表と裏を作る事で回遊性と奥行も生み出す事も意図しました。
都市部の中規模マンションは画一的な環境になりがちである。
限られた敷地に、効率的にひとつでも多く戸数を確保したい、どの住戸へも等しく採光は必要だ。結果、細長く区切られた住戸が昔も今も建てられている。今プロジェクトもそういった思想で作られた都市部のマンション1室の改修プロジェクトだった。
細長い空間。まず「長い」ということは2人で住むと距離が取り合えるということだ。自宅で過ごす時間が多いクライアントにとってもそれは重要だろう。一方「細い」空間と既存間取りの組み合わせが問題だった。数珠つなぎにしたリビング―部屋―バルコニーの並びが、閉じたリビングと画一的な住み方を助長していた。
そこで、スケルトンにした住戸に「屏風壁」を挿入した。
各屏風は扉1〜2枚の長さごとに向きを変えられる。部屋単位で立てる通常のパーティションをもう少し短い単位で調整していくようなイメージだ。浴室の浴槽スペースだけを削ったり、廊下を不整形にしたことでむしろ動線がスムーズになったり、壁掛けTVの為だけに壁の向きを変えたり、クライアントの断片的な価値を壁の折り合いに反映させた。
一方、全体では屏風のようにつながってS字を描く。仕上げを木板張で統一し、木に包まれた実感と共に住戸の長さ、のびやかさを感じとれる。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
屏風壁で居場所を仕立てる
都市部の中規模マンションは画一的な環境になりがちである。
限られた敷地に、効率的にひとつでも多く戸数を確保したい、どの住戸へも等しく採光は必要だ。結果、細長く区切られた住戸が昔も今も建てられている。今プロジェクトもそういった思想で作られた都市部のマンション1室の改修プロジェクトだった。
細長い空間。まず「長い」ということは2人で住むと距離が取り合えるということだ。自宅で過ごす時間が多いクライアントにとってもそれは重要だろう。一方「細い」空間と既存間取りの組み合わせが問題だった。数珠つなぎにしたリビング―部屋―バルコニーの並びが、閉じたリビングと画一的な住み方を助長していた。
そこで、スケルトンにした住戸に「屏風壁」を挿入した。
各屏風は扉1〜2枚の長さごとに向きを変えられる。部屋単位で立てる通常のパーティションをもう少し短い単位で調整していくようなイメージだ。浴室の浴槽スペースだけを削ったり、廊下を不整形にしたことでむしろ動線がスムーズになったり、壁掛けTVの為だけに壁の向きを変えたり、クライアントの断片的な価値を壁の折り合いに反映させた。
一方、全体では屏風のようにつながってS字を描く。仕上げを木板張で統一し、木に包まれた実感と共に住戸の長さ、のびやかさを感じとれる。
また、水回りや廊下をコンパクトにした代わりに「裏の部屋」と呼んでいるインナーテラスのようなスペースを新たに計画した。植栽を育てたり、ワークスペース、書斎やクローゼットとしたり、使い方は特に決めなかったが、屏風壁を境に「表の部屋」と「裏の部屋」が重なって、細い空間に回遊性と奥行を作りだす。
このようにしてコンパクトカーをさらにチューニングするように空間を微調整しながら居場所作りを行った。家具もアレンジしていくとよりしっくりくる居場所をつくれるだろう。明るい場所も暗い場所も、狭い場所も広い場所も、全ては居場所になる。そういったポジティブな心持ちをクライアントと共有できたプロジェクトだった。
■建築概要
タイトル:Room E
所在地:東京都中野区
主用途:住宅(マンションリノベ)
設計:尾崎泰永/尾崎建築事務所
施工:一新ホーム
協力:平井工務店(仕上げ木材)、ムローズ(不動産)
構造:SRC+RC造(既存躯体)
階数:2階部分 / 地上9階建
延床面積:50.95㎡
設計:2020年5月~2020年7月
工事:2020年7月~2020年10月
竣工:2020年10月
写真:永井杏奈、松浦範子
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・床 | 表の部屋・部屋床 | |
内装・壁 | 表の部屋・部屋壁 | ホワイトアッシュ羽目板+塗装(プラネットジャパン) |
内装・天井 | 表の部屋・裏の部屋天井 | RC打ち放しの上EP塗装N93 |
内装・床 | 裏の部屋床 | |
内装・床 | 玄関・洗面室・便所床 | 磁器質タイル(Maristo) |
内装・床 | 浴室床 | RC土間勾配+FRP防水の上t=4バスシート |
内装・壁 | キッチン前壁 | ガラスモザイクタイル(Maristo) |
内装・壁 | 浴室壁 | FRP防水トップコート |
内装・天井 | 部屋天井 | 遮音パネルt=12.5+有効ボードt=5.5 |
内装・天井 | 洗面室・便所天井 | 内装用左官(プラネットジャパン) |
内装・天井 | 浴室天井 | FRP防水トップコート |
内装・照明 | 照明 | ライティングレール+スポットライト(DAIKO) |
内装・キッチン | キッチン | オーダー |
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Room renovation by soft folding screen walls
Medium-sized condominiums in Tokyo urban areas tend to have a uniform environment.
They need to efficiently secure as many units as possible with limited space while being able to receive equal amounts of daylight in each unit. As a result, long and narrow units have been built in the past and are still being built today. This project was also a renovation of such condominiums in urban areas, based on the same concept.
Think long and narrow space. First of all, the concept of “long” means that two people can live together at a distance. This would be important for clients who spend most of their time at home.
On the other hand, the combination of the “narrow” space and existing floor plan was problematic. The lined-up living room-room-balcony arrangement contributed to a closed living room and a monotonous living arrangement.
Therefore, “foldable screen walls” were inserted in the skeletonized units. Each folding screen can be oriented every one or two door lengths. It is like adjusting a regular partition that be erected room by room, but in shorter increments.
The client’s fragmentary values are reflected in the folds of the walls: the bathtub space in the bathroom was cut down, the corridor was made irregularly shaped to facilitate flow, and the wall was reoriented just for the wall-mounted TV. On the other hand, the walls as a whole are connected like a folding screen and form an S-shape. The wood paneling is used to unify the finishes, giving a sense of the length and spaciousness of the dwelling, as well as the feeling of being surrounded by wood.
In addition, instead of downsizing the water area and corridor, a new inner terrace-like space, which we call the “back room,” was planned. The “front room” and the “back room” overlap each other with the foldable wall acting as a border, creating a sense of circulation and depth in the narrow space.
In this way, we renovated the space in a similar way one would fine-tune a compact car. Furniture placement can also be rearranged in order to create a more comfortable place to live.
Whether it is a bright place or dark place, small place or large place, all places can be made into something comfortable and innovative. This project allowed us to share this positive outlook towards living arrangements with the client.
Project data
Project name: Room E
Location: Tokyo
Usage: House(Condominium renovation)
Architect: Yasunori Ozaki/Ozaki architecture office
Construction: Isshin home,Hirai Komuten Co., Ltd.(Finished wood), Murrows Co.Ltd(real estate)
Structure: SRC+RC
Floor area: 50.95㎡
Completion: October 2020
English proofreading: Perfe Llaguno
Photography: anna nagai・noriko matsuura