大城禎人建築設計事務所が設計した、沖縄・中城村の三世帯住宅「400」です。
設計者自身の住まいも含む建築です。建築家は、地域で典型の中層建物を“再構築”したプロトタイプを目指し、“一般的な工法”を用いながらも“最大限に生かす”設計を志向しました。また、柱等の構造体は内装の要素としても役割を果たしています。
本計画は設計者の両親、弟世帯、設計者家族が住む3世帯住宅である。
RC造で1階はピロティ形式の駐車場、フロア毎に世帯を分けた沖縄で多く見られる形式の住宅である。
計画地は沖縄の本島中南部の新興住宅地にあり、敷地周辺にはピロティ形式の中高層の集合住宅が多く建ち並んでいる。車社会である沖縄のピロティ空間は駐車場としての利用が目立ちと街並みとして豊かであるとは言い難い。
また、車両の出入りや駐車スペースの確保を重視したメガストラクチャーがつくるピロティ空間はヒューマンスケールから逸脱しており、人間のため空間からかけ離れていると感じている。
これまで量産されてきた沖縄の中層建築を再構築し、街並みと住空間を豊かにする沖縄における標準的な中層建築を目指した。
これらの課題の解決策を考えた結果、「短スパングリッド」「逆梁」「オーバーハング」というごく一般的な工法を最大限に生かした建築を目指した。
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以下、建築家によるテキストです。
本計画は設計者の両親、弟世帯、設計者家族が住む3世帯住宅である。
RC造で1階はピロティ形式の駐車場、フロア毎に世帯を分けた沖縄で多く見られる形式の住宅である。
計画地は沖縄の本島中南部の新興住宅地にあり、敷地周辺にはピロティ形式の中高層の集合住宅が多く建ち並んでいる。車社会である沖縄のピロティ空間は駐車場としての利用が目立ちと街並みとして豊かであるとは言い難い。
また、車両の出入りや駐車スペースの確保を重視したメガストラクチャーがつくるピロティ空間はヒューマンスケールから逸脱しており、人間のため空間からかけ離れていると感じている。
これまで量産されてきた沖縄の中層建築を再構築し、街並みと住空間を豊かにする沖縄における標準的な中層建築を目指した。
これらの課題の解決策を考えた結果、「短スパングリッド」「逆梁」「オーバーハング」というごく一般的な工法を最大限に生かした建築を目指した。
1つ目は3.2m×3.6mの短スパングリッドとしRC造では細めの400mm角の柱が並ぶ列柱空間とした。短スパングリッドにすることで間口方向に2スパン、奥行方向に3スパンとれるので構造上必要な耐力壁を建物の中央に配置することができ外周部に3面開放しつつも構造バランスのよいピロティ空間となった。住宅部分の耐力壁は水廻りや階段廻りに集約し居住部の可変性に配慮した構造体としている。
400mm角の柱は家具の一部となり、空間を緩やかに分節し、緩やかに視線を遮り構造としての柱だけではなくインテリアの要素としての柱として重要な役割を果たしている。
2つ目は梁を逆梁とし、梁型の無い重厚感のあるコンクリートスラブの連続と列柱の相互作用により視覚的な広がりと奥行きのある構造体となった。
住戸部分はフラットな天井をそのまま活かして天井下地を省略し、逆梁によって生まれた床下空間は設備の配管スペースとして活用し、4階の弟世帯では逆梁の形状を生かした床段差を設け空間に変化を与えた。
3つ目は2~4階のボリュームを1.3m程オーバーハングさせ列柱空間の内側と外側で異なる性質の空間をつくった。
地区計画による1mの外壁後退によってできる敷地の余白を最大限活用するために、柱の位置は外壁後退ラインよりもさらに1.3m程度セットバックすることでゆとりのある空間を確保しその部分を緑化し、無機質な駐車場にならないよう、街に開いた庭のようなピロティ空間を目指した。
住空間ではオーバーハングした部分の要所にベランダを設け日射所得の低減、プライバシー及び窓のメンテナンスに配慮した。
■建築概要
所在地:沖縄県中城村
主要用途:店舗付共同住宅(3世帯住宅)
設計:大城禎人建築設計事務所 担当/大城禎人
構造:Lifetect一級建築士事務所 担当/宮里尚志
施工:株式会社屋島組 担当/屋富祖秀清、松本茂広、野原秀樹
電気・機械設備:有限会社サンユウ設備 担当/大城秀三、比嘉進
植栽:大城禎人建築設計事務所 担当/大城禎人 協力/新垣裕也
構造:鉄筋コンクリート造
階数:地上4階建て
敷地面積:202.61㎡
建築面積:121.28㎡
延床面積:407.59㎡
竣工年月:2020年6月
写真:鳥村鋼一