ニイノ建設一級建築士事務所と麻生征太郎建築設計が設計した、東京・大田区の「大森町の集合住宅」です。
活気のある商店街の中での計画です。建築家は、賑わいを享受しつつも“落ち着ける”住環境”を目指し、四周に回した“コンクリートの帯”の高さを変えて内外の関係を調整する建築を考案しました。そして、上階に行くほど段階的に開放度を上げる設計となっています。
商店街に面する敷地に立つ集合住宅である。
通りは1日を通して活気があり、人や車の往来が多い。施主からは、1階は周囲の建物にならいテナントとし、2~5階は単身者を主とした住戸とするよう求められた。商店街の賑わいを感じつつも、通りからの視線や音を遮り、落ちついた住環境をつくることが主題となった。
私たちは、建物の四周、階ごとにコンクリートの帯を回し、その高さを変化させることで、内外の関係を調整できないかと考えた。
2階は床から1100mmまで、3階は850mm、4階は600mmがコンクリート帯天端レベルである。上階にいくほど開放度があがり、部屋も明るくなっていく。部屋の明るさのみを考えれば下階の窓が大きい方が良いのだが、ここでは、商店街からの視線、音の問題が大きく、それらを遮るために下階のコンクリートの帯の立ち上がりが最も高い。
周辺環境との応答から生まれたコンクリートの帯を、建物の個性とするべく、そのディテールにも注意を払った。
コンクリートの帯の量感がより感じられるよう、バルコニー軒天の水切り目地はなしとしている。コンクリート打設の際に支保工を若干軒先側で下げ勾配を取り、水の侵入を防いでいる。隣地境界側のサッシ下端の水切り金物を無くし、モルタルで成形し、勾配の先端を帯の上端に揃えることによって、余計な線を減らしている。バルコニーに置かれる室外機、給湯器を、白く塗りこんだ耐力壁が目隠しとなり隠すことで、立面は抽象度を増し、すっきりとした外観となった。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
商店街に面する敷地に立つ集合住宅である。
通りは1日を通して活気があり、人や車の往来が多い。施主からは、1階は周囲の建物にならいテナントとし、2~5階は単身者を主とした住戸とするよう求められた。商店街の賑わいを感じつつも、通りからの視線や音を遮り、落ちついた住環境をつくることが主題となった。
私たちは、建物の四周、階ごとにコンクリートの帯を回し、その高さを変化させることで、内外の関係を調整できないかと考えた。
2階は床から1100mmまで、3階は850mm、4階は600mmがコンクリート帯天端レベルである。上階にいくほど開放度があがり、部屋も明るくなっていく。部屋の明るさのみを考えれば下階の窓が大きい方が良いのだが、ここでは、商店街からの視線、音の問題が大きく、それらを遮るために下階のコンクリートの帯の立ち上がりが最も高い。
周辺環境との応答から生まれたコンクリートの帯を、建物の個性とするべく、そのディテールにも注意を払った。
コンクリートの帯の量感がより感じられるよう、バルコニー軒天の水切り目地はなしとしている。コンクリート打設の際に支保工を若干軒先側で下げ勾配を取り、水の侵入を防いでいる。隣地境界側のサッシ下端の水切り金物を無くし、モルタルで成形し、勾配の先端を帯の上端に揃えることによって、余計な線を減らしている。バルコニーに置かれる室外機、給湯器を、白く塗りこんだ耐力壁が目隠しとなり隠すことで、立面は抽象度を増し、すっきりとした外観となった。
コンクリートの帯と帯の間が開口部になり、室内側はシナベニヤで窓を縁取った。通りに面する掃き出しのサッシには、同じくシナベニヤで奥行き400mmの窓枠をつけている。触れたり、もたれ掛かることができるそれらは、商店街と室内の境界に人の居場所をつくる。巾木、木製建具も同材で製作し、既製品のアセンブルのみでつくられる空間から逃れつつ、機能面においても配慮した。いずれも小口を積層面あらわしとし、外観の帯の印象とのささやかなつながりを意図している。
■建築概要
題名:大森町の集合住宅
所在地:東京都大田区大森西
主要用途:集合住宅
設計:ニイノ建設一級建築士事務所 担当:松本有加、麻生征太郎建築設計 担当:麻生征太郎、野口新
施工:岩本組 担当:佐藤昌礼、矢口陽太
構造:寺戸巽海構造計画工房 担当:寺戸巽海
設備:三浦建築設備設計合同会社 担当:三浦亮
構造:RC造
階数:地上5階建
敷地面積:123.47㎡
設計期間:2021年6月~2022年6月
工事期間:2022年7月~2023年5月
竣工:2023年6月
写真:関拓弥、野口新